40 その一撃は・・・
連投3話目です。
時刻は午後6時、辺りはだんだんと薄暗くなり夜の帳が下りてくる。
レールガンの設置場所に到着し準備を始める。
その周りには5人のミノタウルス獣人娘が緊張した面持ちで指示を待ち、横一列に整列していた。
オスプレイに乗り込む際にそれぞれ左端のカレンから順にパメラ、ポリー、メローラ、リジーとオドオドした口ぶりで自己紹介された。
みんな同じミノタウルスの獣人だというが体格はそれぞれ差があり、並んで見るとカレンが一番小柄で、パメラにいたっては2メートルはありそうなほど身長は高く、がっしりとした体格だった。ちなみに胸のサイズは若干ばらつきはあれど、巨乳か爆乳くらいの違いなだけだった。
まずは試作としてΣ(シグマ)のデータ通りに創造したレールガンは砲身が5メートルあり、砲弾の装填部分、砲身の冷却装置も大きく、全体的に巨大になってしまっている。
原理上は出力と伝導レールの長さに比例して速度が増すので、これくらいの砲身の長さは必要だが、本来は大型の発電機が必要な電源部分は遺物により相当小さく出来るので、かなりの小型化が可能だ。
とりあえず30分ほどで試作機が発射できるまでに調整できたので、接続した光学照準器で適当な目標物に向けて試射を行う。
砲弾には重さ15キロ、絶縁体で出来たライフルの弾の様な形状をしている。1.8メートルもの長さがあるので2人がかりで運ぶような大きさだが、カレンたちにとっては造作もないのか、一人で楽々装填してくれていた。
砲弾を3つ準備して、砲身の保護の為部分的な封印が出来ないかと試す。しかし、細かい指定が上手く出来なかったのか、レールガンごと封印してしまい、その結果システムも動かず発射することが出来なかった。
(不味いな、これでは短いサイクルで連発すると砲身の冷却が間に合わない・・・下手をすればプラズマ化に伴う膨張で砲身が破損する可能性もある。・・・とにかく撃ってデータを収集するか。)
試作機は封印中のため試射できないので、少し離れた場所にもう一つのレールガンを作り出す。試作機と同じ作業のためスムーズに準備でき、10分ほどで完了した。
目標は5キロ先の平野にある巨大な岩にして、∑(シグマ)のシステムと連動させて照準を付ける。
「よし、みんな離れて耳を塞ぐんだ!」
レールガンから50メートルほど離れみんなが耳を塞いでいることを確認してスマホに表示された発射スイッチを押す。
次の瞬間眩い光と轟音が辺りを包みしばらく動くことが出来なかった。
設置場所に戻り光学照準器で目標の状況を確認すると、スマホに映し出された岩は健在でその手前100メートル位の地点に着弾していた。着弾場所は地面が抉れてはいたが、想定していた破壊力ではなく飛来した重量物が落ちたような状況だった。
また、映像解析を確認すると速度は本来の1000分の1ほどしか出ていないことが分かった。
∑(シグマ)の解析では気密性に問題ないが、砲身と砲弾に若干の隙間があり、そこから流体としての性質を持つプラズマが弾体を追い越してしまい、砲弾を押し出す力が弱まってしまったようだ。
ただありがたいことに砲身を確認しても目立った歪みや損傷は見られない。やはり現代技術と違って溶接しているわけではなく、初めからそういう形だったという一つの完成された物質を作り出しているので砲身としては完璧だった。ただ、現在進行形で冷却しているのも関わらずまだかなりの熱を持っている。
(連射は難しそうだな。あとは砲弾と砲身の隙間をどうするかだが、あまりピッタリのサイズで作ると砲身内部に傷がついて次の発射の際にやっぱり隙間が出来てしまう。・・・何か柔軟性の高いもので砲弾を覆って隙間を埋めるか、いや絶縁体でないといけないし・・・そうだ!)
砲身の冷却が済んだのを確認し、今度は砲弾の方を封印してしまう。その際のイメージとして硬度と柔軟性を持ち合わせた膜で覆い、カレンに装填してもらう。先程同様レールガンから距離を取り発射する。すると、眩い閃光は先ほどと同じだが、音はさっきよりも鋭いような甲高いような轟音だった。
急いで結果を確認すると、今度は照準した通り着弾したと思われた。思われたというのは、着弾した場所が巨大なクレーターの様になっており、そこにあったはずの巨大な岩は欠片さえも存在せず、その威力を思い知らされるような惨状となっていた。
(想定以上の威力になっているな・・・おそらく砲弾を封印した結果だな。)
当初の∑(シグマ)による想定威力を超える結果に封印の力が関係しているのだろうと考えていると、後ろから獣人娘たちが近づき跪いて、祈りのような仕草をしてきた。
「救世主様、その一撃はまさしく神の御業。どうか我らをお救い下さい。」
一番体格の良いパメラを始めとして、まるで神を崇めるような扱いを受けてしまった。
あまりこの状況に乗っかってしまうと新しい宗教が誕生しかねないので、無難な言葉を探して答えた。
「そ、そうだね。とにかく皆が幸せになれるように最善を尽くすよ。」
『はい!恐悦至極に存じます!』
4人からは目に危ない光でも宿っているのではと思えるほどの眼差しと返答が来た。その隣には何故かカレンが自分の物を自慢するような得意げな顔をしていた。
「これで試射は十分だから一旦戻ろう。」
『はっ!仰せのままに!』
レールガンとして一応の形になったので、明日の為に一度帰還する。電源部分の遺物を取り外し兵器自体はその場に布を被せて置いていく。万一別の魔獣なりが壊したとしても、既に一度作って手順は把握しているので再度創造するのに手間はかからない。
唯一気になってしまう事といえば、彼女たちの信仰対象へ向けるかのような言動だった。
・・・・・・・・・・・・・・・
時刻は午後9時。
遺跡に戻り魔獣たちの動きは今だ想定した速度で移動していることを確認してから食事を摂り、遺跡の屋上からセリアンスロゥプを眺めていた。15メートルほどの高さから見下ろすその景色には獣人達が作った集落が月明かりと疎らに点在する光の魔具で照らされ、改めて守るものを認識させられる光景だった。
そんな思いを抱いていると、頭上からワイバーン獣人のラリサが降り立った。
「こんばんわ救世主様。」
「こんばんはラリサさん。見回りですか?」
「ええ、悪魔の魔獣達は監視されていますが、この近くに魔獣はいくらでも居ますし、今はみんな悪魔の方に気が取られてしまっていますが、、いつもの周辺警戒は私の仕事ですから。」
彼女のいう事はもっともだった。私も悪魔やリヴァイアサンの対策で頭が一杯で、通常の魔獣に対しては無防備だったと言わざるを得ない。一応偵察機を常時飛ばしているとはいえ、監視網の隙間もあるので不意に魔獣が襲って来ることも十分考えられるはずだった。
「ありがとう。私も悪魔が引き連れている魔獣に掛かり切りだったので助かります。」
「いえ、救世主様の本分はそちらでしょうからお気になさらず。それにしても救世主様のお力は凄まじいですね。」
「ああ、試射を行った現場を見たのですか?」
「遠くからですが、光とともに大きな音が聞こえたので。一体何が起こればあんな風になるのか想像できませんね。」
ラリサからは驚いている声音が聞こえるのだが、彼女の目はワイバーンの特徴なのか、白目の部分が黒く瞳は金色で、人間とは違うその目に何となく感情が読み取り難いものがあった。
「簡単に言うと物をとっても速く飛ばしているんですよ。」
「へー、それであんな破壊力になるなんて知りませんでした。じゃあ銃弾を沢山飛ばせれば敵を一網打尽にできて安心ですね!」
「そうですね、それが出来れば簡単なんですが。沢山用意しても電源の問題がありますし、連射性能はあまり高くないので。」
「うーん、よく分かりませんが、今準備しているもので頑張るしかないということですかね?」
「ははっ、まぁそんな感じです。とにかく出来ることで最善を尽くすしかないですね。」
「仰る通りですね。明日はよろしくお願いいたします。」
頭を下げた彼女の口はにんまりとした笑みを浮かべ、身を翻し中に入っていった。
(・・・そう言えば彼女とはあまり話したことはなかったが、銃弾なんて言葉を話したっけ・・・?)
先程の会話に多少の違和感を覚えるが、明日への準備を済ませた後に眠りについた。
次回更新は2月29日の予定です。




