39 レールガン
連投2話目です。
セリアンスロゥプ全体にリヴァイアサンの動向を伝え、魔獣の群れが近づいていることを周知した。多少の動揺も見られたが、マリアやルーシーを中心として今後の予定や、やるべき事の確認を行っていくうちに落ち着きを取り戻していった。
一先ず皆には魔獣が来た場合の迎撃体制の準備をしてもらうが、無理をせずに自分たちが敵わないと感じれば即座に撤退するようにお願いしている。
魔獣の予想最接近時刻は翌朝8時頃としたが、移動速度の変化も想定されるので、常に監視モニターを2人体制で見ているように頼んだ。
するとその監視にはユーリとジョシュが名乗り出てくれた。
全体に周知した後に2人を監視部屋に案内すると、目を丸くされて驚かれ、「これは何ですか?」「どうなってるのですか?」と何度も聞かれたが、とにかく魔獣達を見てその動きに変化があれば知らせて欲しいと伝えた。
そのまま監視部屋にて喫緊の問題である、リヴァイアサンにミサイルが効かない事に対してその原因を探る。
Σ(シグマ)の映像分析の結果では、リヴァイアサンの鱗表面に未知のエネルギーが滞留しているようで、着弾した際にその表面をナメるような動きで炎と衝撃が逸れているようだ。
(現代科学で未知となれば魔法的なバリアか何かか・・・。ミサイルだと爆発のエネルギーが着弾点から拡散していくから、魔法的なバリアを突破出来なかったのか・・・)
もし考察通りならリヴァイアサンに対しては一点突破型の兵器が必要になる。エネルギーが拡散せず、それでいてミサイルの破壊力以上の威力が求められる。
「そうなると・・・この世界ではレールガンが実用化出来るかもしれないな。」
レールガンは物体を電磁誘導により加速して撃ち出す装置である。ただ現代においてまだ実用に色々と制約があり、実用的な兵器とは言えなかったものだ。しかし、この世界であれば上手くすれば実戦に耐えれるものが作れる可能性がある。
「短時間に大電力の供給が必要だが、それはあの遺物を使えばいい。レールの摩擦・電気抵抗・耐熱限界などの物理的・技術的制約については私の封印の力を応用して、砲身を部分的に封印することで熱やプラズマ化に伴う膨張圧を制御できれば・・・。」
技術的・物理的問題点などを口に出すことで考えを整理していき、解決方法を考察していく。
実現できれば、目標から10km離れていても15kgの重量の砲弾をマッハ7で撃ち出せる。それは秒速にして2380m、10キロ先の標的までの着弾が4.2秒と、距離を考えればまさに発射直後には着弾するようなイメージだ。
「今は午後4時だから、想定ではあと16時間後がリミットになる。設置場所の選定、作り出してからの調整、失敗した際の予備プラン・・・やることはいくらでもあるのに時間が無さ過ぎだな。」
そんな事をぼやいているとユーリ達と共に居るシエラが近づいてきた。
「戦略の構築に地図は必要ですか?あの魔具の様なものに映し出されている景色を地図として書く程度ならお手伝い出来ますが?」
「本当ですか?出来れば周辺に村や町がないかも知りたいのですが。」
モニターで見ることも戦況の確認に必要だが、戦略を練る上で皆が広域を俯瞰的に認識できる大きな地図も必要だった。その為巨大プリンターを作るべきと思っていたが、その時間を他に割けるのならありがたい申し出だった。
さらに被害が拡大しないよう周辺の村などを一つずつ確認しては時間がかかってしまう。
「大丈夫です。メイドとして働きながらエレノアにはいろいろ勉強させられましたから。」
苦笑いを浮かべながら話すシエラの表情から、相当勉強させられたのだろうと感じた。
「ではお願いします。完璧は求めませんので、可能な限り急いで頂けますか?」
「お任せ下さい。こんなところで息子達の居場所を無くす訳にはいきません。2時間で仕上げてみせます!」
力強い言葉に彼女の決意を感じ、2メートル四方の大きな画用紙を作り出し、地図の製作を任せた。
こちらは2時間のうちに予備プランの構想と必要な道具についての作成とレールガンの構造を詰めていく。
・・・・・・・・・・・・・。
作業をして1時間を少し過ぎたところでシエラから声を掛けられた。
なんと想定より1時間近くも早く地図が出来たのだという。
見ると帝国で見た地図のように地理状況が分かりやすく、頼んだ通り彼女の知っている町や村の記載もあった。
「ありがとう。かなり分かり易いね。運河の流れ、高低差、距離から考えると・・・ここだな。」
スマホにはΣ(シグマ)が収集した地形データから標高などを表示し、彼女が作った地図にある村や町などにレールガンで被害が及ばない射線が取れる最適な場所を見つけ出す。
設置場所に選んだのは、運河の流れから8キロほど離れた小高い丘でセリアンスロゥプからは10キロほど離れている。魔獣が来る運河までは射線を遮るものが無く見通しが良い。加えて周辺の村や町に対して対象から砲弾が逸れた場合でも被害が出ないようなラインを取ることが出来る場所だった。
「すまないシエラ、至急マリア達を呼んできてくれるか?」
「分かりました。すぐに呼んで参ります。」
そう言うと足早に部屋を出て行った。
マリア達が来るまで、地図が出来上がる間に作っておいた6つのスマホにソフトをダウンロードしておき、前回作っておいた電波塔で通話が出来るように調整する。
その設定が完了するタイミングでちょうどシエラがマリア達を連れて来てくれた。
「お呼び立てして申し訳ない。作戦と準備について伝えますので少し時間をください。」
「火乃宮様が謝ることは何もございません。私たちは今ほとんどを火乃宮様に依存している状況です。どうぞ何なりとおっしゃってください。」
マリアが皆を代表して私を気遣う言葉を伝えてくれたので、それにあやかる形で必要事項と戦略を地図を指し示しながら告げていく。
「ではまず作戦についてなのですがーーー
今回の魔獣討伐については、リヴァイアサンを消滅もしくは撃退することに主眼を置き、先制攻撃にリヴァイアサン一体を目標とした攻撃を行う。成功すれば続いて無人偵察機を用いた広域殲滅に移行し、大量のミサイルを魔獣に撃ち込んでいく。最終的には少数の撃ち漏らした魔獣は各個撃破するため獣人達の手を借りることを伝えた。
作戦が全て順調にいけば最後の掃討戦まで獣人達の出番はない。しかし、先制攻撃を外した場合にリバイアサンの反撃が予想される。情報では口から吐く水流は地形を変えるほどの威力があるというので、兵器を守る盾を準備しておきそれを相手の反撃に合わせて展開する。
ここまでの作戦はあくまでリバイアサンの力が対処できる範囲内のものであった時だ。
想定外の事態としてレールガンが効かない、相手の反撃によって兵器が破壊されてしまった等の場合は即時撤退で、最悪セリアンスロゥプを放棄する場合もあることを言い聞かせておく。
「---という作戦だ。最優先事項は全員が生きている事だ。ここセリアンスロゥプを放棄したとしても住む場所は私が用意する。生きていれば必ず希望があることを忘れるな。」
言い終わり皆を見渡すと、真剣な眼差しを私に向けてくれていた。
「色々ありがとうございます。そこまで考えて下さるなんて・・・本当に感謝のしようもございません。」
「あんまり自分一人で背負わないでね~。」
「そうにゃ!私達が一緒にゃ!」
「出来ることがあれば何でもおっしゃって下さい。」
マリアを皮切りにルーシー、ミリアム、そして見た目は犬の獣人ジェンナが口々に感謝と手伝いを申し出てくれた。
背中に翼が生えているワイバーンの獣人ラリサは微笑みながらこちらを見ていた。
作戦の概要を伝え、次に兵器設置の準備のために腕力に自信のある者に手伝って欲しい旨を伝えると、ミノタウルスの獣人達が良いだろうと言うことで、カレンを含めて5人に手伝ってもらうことになった。
30分後に外の広場にあるオスプレイの所まで集まって欲しい事を伝えてもらうようにして、最後に今後連絡が取りやすいように皆にスマホを渡した。
「表示されている名前を押すとその相手と遠くに離れていても会話ができるから、緊急の用件があればこれを使ってくれ。」
簡単に操作方法も教え、実際にミリアムのスマホからルーシーのスマホに掛けてもらうと、みんな声がスマホから聞こえてくることに驚いていた。
「凄いにゃ、これで何かあってもすぐに話せるにゃ!」
一際驚いていたミリアムは感嘆の声をあげて喜んでいた。他のみんなは恐る恐るといった感じにスマホを見ていた。
「よし、じゃあ時間がないからみんな、よろしく頼むよ!」
スマホに興味深々でみんなの動きが止まっていたので、大きめの掛け声で行動を促す。
『はっ、はいっ!!』
続きます。




