32 準備と楽しみ
今回は3話の連投です。
お時間があれば覗いてください。
ギルクローネ帝国へ行く前にこのセリアンスロゥプ遺跡の防衛準備を行っておく。私が離れているうちにこの場所を制圧されてしまうのは困るというわけではないが、私の力を低く見ているという事でもある。
報復のために一々反撃していては本当に恐怖で世界征服が出来てしまう気もする。
魔法と直接的武力への対抗手段を確立しつつあるので正直今の状況での不確定要素は悪魔のみになっていると言ってもいい。
(魔法への対抗手段が発見できたのは僥倖だった。と言ってもまだかなり発動は限定された環境下になってしまうから、今後改良が必要だな。)
あの時聖騎士達の動きを止めていたのは彼らの服に封印能力を掛けていたからだ。これは私自身で動けなくなることは確認済みだった。魔法については既に現象として発動してしまうと早過ぎて、認識したときには着弾してしまっているので封印はできなかった。そこで発動前に封印するしかないと考えた。
まず魔法の原理については、自身の内包する魔力を媒介として、自然界に漂う魔力を自らの魔力特性に変化させることで発動するらしい。ここで自然界の魔力を一時的に封印が出来ればと考える。が、当然魔力が何か良く分からないので封印できなかったのだ。
この現状を打破したのが成分分析機だ。ただ活用方法は分析機を使って魔力を見つけるのではなく、酸素や窒素などの既知のものを消していって最後まで残った分析できない成分が魔力なのではないかと仮定して検証を重ねたということだ。
その結果未知の成分が残り、それを私の中で魔力と定義し封印の能力を使ってみると魔法が発動しなくなることが分かった。
ちなみに実験に協力してくれたうさ耳娘のルーシーは魔法封印に成功してもいつものおっとりした口調で「あらー。」というだけだったが、私はテンションが上がって抱き着いてしまい、その胸の柔らかさに更にテンションが上がっていたのはここだけの話だ。
ただこの魔力封印はなんの仕切りもない外では上手く発動が出来なかった。おそらく現段階の能力ではそれほど大きな範囲は封印できないからだろう。外ではどうしても空間把握が難しく、空間がどこまでも繋がっているという認識になってしまい、発動範囲を上手く認識できなかったのだ。
そこで会談の際には、天幕で周りをぐるっと囲み、空間の仕切りを明確に認識できるようにしてようやく発動が出来たのだった。
この封印の能力をもっと強化していくと、この世界中の魔法を使用不能にすることもできそうで、魔力を人質にとった各国との交渉も可能なように思えていた。しかしーー
(と言っても抑圧して上に立っても私の目の届かないところでは反乱が起こってもおかしくない。会社の運営と同じだ、信頼できる上司、尊敬に値する経営者ならこの人物の役に立ちたいと下の社員はおのずとついてくる。・・・まずは獣人から信頼されるように手を打つ。)
武器については聖騎士達と戦った物をそのまま貸与する。次に防衛設備として遺跡周りの監視網の構築を行う。基本的には先に作った無人偵察機を常時3機遺跡を中心に100キロ四方の監視だ。遺跡内の一室をそのまま監視部屋にしてモニターとアラートを作る。
それらの操作を行うのはスパコンを作り、ソフトに∑《シグマ》をコピーして無人でもいいようにしておく。一応保安上の処置として、私のみの認証にしておく。さらに、セリアンスロゥプに居る全獣人と従魔のデータを入力して、それ以外が監視網に入るとアラートが鳴るので、ここには管理人としてただ座っていればいいだけだ。
3日かけてようやく形にし、監視員への教育もできた。監視と言ってもアラートが鳴ったらみんなに知らせるだけなので問題ないだろう。電力に例の遺物を使っているので、新しい遺物を用意する必要がある。
「よし、これでセリアンスロゥプは一先ず形になった。帝国へは2日後に出発しよう。その為に明日は移動手段の準備だな。うーん・・・オスプレイにするか。」
オスプレイは、飛行中でも固定翼機とヘリコプターの特性を切り替え可能な垂直離着陸機である。従来方式のヘリコプターに比べ、高速かつ航続距離に勝る特性がある。乗員数は30人ほどで最大速度は時速565キロ、航続距離は3590キロに及ぶ。
作業が一段落し、明日以降の行動指針を決めていると後ろから声を掛けられた。
「あっ、見つけたにゃ!も~、蓮様は働きすぎにゃ。そろそろ休まないと、この3日ほとんど休んでないから倒れちゃうにゃ。」
「そうだよ~、皆心配してるから~早くお部屋に戻りましょ~。」
ミリアムとルーシーが私を探しに来た。どうやら作業に夢中になって時間の感覚がなくなっていたらしい。スマホを見てみると時刻は21時で、もう遅い時間になっていたことに驚く。
「ああ、もうこんな時間か。ちょうど作業も終わったし今日はもう休むよ。」
そう言って歩こうとするとふらついてしまい、膝に手をつく。そこで今日は何も食べてないことに気付くと、空腹を認識してしまったためか、物凄い倦怠感が襲ってきてしまった。
「大丈夫かにゃ?!気分が悪いのかにゃ?」
「いや、そういえば何も食べてなくて・・・なにか食べ物ってある?」
「なんだビックリしたにゃ。じゃあ食べ物持ってくるから、ルーシーは蓮様を部屋に連れて行って欲しいにゃ。」
「分かったわ~、行きますよ蓮ちゃん~。」
そう言うとルーシーは私をお姫様抱っこして移動し始める。さすがにこの体勢は恥ずかしいので下すようにお願いしたのだが――
「大丈夫よ~だって連ちゃんフラフラなんだもの~、お姉さんに任せなさい~。」
有無を言わせずスタスタと連れていかれる。女性に対して思う感情ではないが、身体を力強く支えられていると妙な安心感があり、身を任せてしまいたくなってしまう。
さらに、歩くとその振動で頬にその豊満な胸がぷるんぷるん触れる感触は、疲れた体に過剰な反応を起こしてしまいそうだった。
しばらくすると部屋に着き、ベットに座らされる。ルーシーは部屋から出て行くのか扉の方へ向かい、ニッコリとした笑顔を向けて来た。
「ちょっと飲み物持ってくるから~ 良い子にしててね~。」
なぜか私を子ども扱いしているルーシーは一体何歳だというのだろうか。
(しかし、女性に年齢を聞くのは失礼だ。嫌ではないが気恥ずかしいものがあるな。)
直ぐに部屋に戻って来たルーシーはその手にコップを持って戻って来た。
「は~いお待たせ~、栄養満点の牛乳よ~。」
渡されたコップを覗いてみると、まさに牛乳だったのでそのまま喉を潤した。
元の世界の牛乳と比べると濃厚な深みのある味で少しトロっとしていてとても美味しかった。これほど濃厚な味なのだから栄養があるというのも頷ける。ただ、生暖かかったのでホットミルクにしようとして温めが足りなかったのかと思ってしまう。
「ありがとうございます、とても美味しい牛乳ですね。ただまだ温かったので、そんなに急いで持ってこなくても、ちゃんと温めて来てくれれば良かったですよ。」
「?あ~、温かくしたほうが良かったのね~。ごめんなさいね~、そのまま搾ってきちゃったから~。」
「??この中で牛を飼っているのですか?」
「ちょっと~、飼っているって言い方は酷いわよ~。皆一緒の仲間なんだから~。蓮ちゃんだって農場を見に行った時に会って話してたのに~。お姉さん怒っちゃうわよ~、ぷんぷん~。」
頬を膨らませながら怒ったとしても、そのおっとり口調がすべて台無しにしており、ただ可愛いとしか見えなかった。しかしーーー
(あー、これは完全にあの爆乳牛娘さんの生搾り牛乳ってことだな。たしかに味は美味い・・・けど母乳プレイみたいで抵抗が・・・しかしこれが普通なら私の対応はかなり失礼だ・・・。)
心の葛藤を表情にはなるべく出さないように常識と羞恥心に折り合いをつけてルーシーに詫びる。
「すみません、私の世界では牛乳は家畜から採るのが常識だったので、まさかあの可愛らしいお嬢さんのものとは想像できなくて・・・。」
「そうなの~?ここではこれが普通なんだけど~。やっぱり世界が違うのね~。もっと飲みたいなら連れてくるけど~どうする~?」
「ありがとうございます。もう大丈夫です。」
さすがに連れてこられても搾るところを見るわけにはいかないし、新しい扉を開けてしまうかもしれないので、丁重にお断りをした。
「そお~、美味しいって言ったらあの娘も喜ぶわよ~。もしかしたら直飲みまでさせてくれるかも~。」
彼女の言い方では、直飲みさせるのは特別な相手だけの様に思われる。
さらにルーシーは自分の胸の下で腕組みしながら、その豊満な胸を強調するようにこちらを煽るように近付いてくる。
「ははっ、からかわないでください。」
「からかってないわよ~。皆の為に頑張っている蓮ちゃんの姿を知っているから~、何かしてあげたくなっちゃうのよ~。だから今日は添い寝してあげるね~。獣人の体温は人間より高いから~すごくリラックスして眠れるらしいよ~。」
「いや、それは・・・逆に眠れなくなりそうですね。」
「ふふ~っ、私はそれでも良いのよ~。」
この口調のせいなのか、年上の余裕の様なものを感じさせる。先程の柔らかな胸の感触のことも相まって、このまま身を委ねたいと本能が叫んでいる。・・・叫んでいるんです。
そんな自身の葛藤中にドアがノックされミリアムがカートで食事を運んできてくれた。
「お待たせにゃん。沢山持ってきたからお腹いっぱい食べるにゃん。」
いい意味で場の空気を読んでいないミリアムの言葉に一先ず空腹だったことを思い出し、性欲よりも食欲の方が優先された。
ちなみに食事と一緒に持って来てくれた牛乳を私が飲み干す姿をルーシーに妖しい笑顔で見られていたので、さっきの言葉を思い出してしまっていた。
そして食事も済み、今日はもう休むという事でベットに行くと、なぜか2人とも付いてきた。
「あの、もしかして一緒に寝るつもりなの?」
『そうだよ。』
さも当然と言ったように2人は同時に肯定した。
「いや、逆に寝れないでしょ。」
「まったく、蓮様はムッツリにゃ!ルーシーに抱っこされている時に下半身膨らましていたにゃ。」
「我慢は体に毒よ~。お姉さんに任せて心も体もスッキリしちゃいましょう~。」
2人は半ば強引に私をベットに押し倒し、私を間に挟むような状況になってしまった。
(ルーシーの胸が柔らかい・・・ミリアムは残念だな・・・しかし本当に温かくて気持ちいい。)
こんな状況に久しぶりに羽目を外そうかと考えていたが、あまりの心地よさに睡魔が音速で現れ、私をノックアウトしてしまった。
・・・・・・・・・・・
翌朝、目を覚まし右側に眠るわがままボディのうさ耳ルーシーと、左側に眠るスタイルの良いスベスベ素肌を覗かせるねこ耳ミリアムの美女達を眺めながら私はこぶしを握り決意する。
「今日からはちゃんと休息取ろう。」
続きます。




