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転移者は異世界で笑う  作者: 黒蓮
31/61

30 本性

3連投の2話目です。

 クロスティーナの小さな呟きの後に辺りは眩い光に包まれた。

それと同時に示し合わせたかのように天幕がひるがえり少数の純白の軽鎧を着込んだ聖騎士が入り込みこちらを取り囲んだ。


(事前の申し合わせではお互いに会談に参加する6人以外は遠ざける事だったが、《《やはり》》守るつもりはないか・・・)


「おや、アスタルト教国の使者の話では会談の人数は6人で、武装解除の状態でのぞむのではなかったのですか?」


 眩しさが晴れた天幕内で視界が戻ると、クロスティーナを含む10人ほどに囲まれていた。皆手には私が作った武器を所持しており、その先端をこちらに向けている。

事ここに至っても、私を含めた獣人側は皆椅子に腰かけたままである。

そんな状況でクロスティーナがいつのも微笑みで手を広げながら一歩前に踏み出てくる。


「最後に聞きます、火乃宮様のご意志でアスタルト教会と手を取り合いこの世界を平和にしていく気はございませんか?」


「そこに私の安らぎが無いのが残念ですね。」


「ええ残念です、考え過ぎなのですよ火乃宮様は。この世界の事は全て私たちに任せて、言われるままに動いてくれれば良かったのに・・・【女神の癒し】」


 クロスティーナが広げていた手をこちらに向けながら魔法を唱える。それと同時に待機させていた創造の能力を発動させ、テーザーガンを作り出し引き金を引く。

しかし、こちらがわずかに動いたその瞬間にはクロスティーナの背後に控えていた聖騎士が前に出て自らを犠牲に私の攻撃を防いでしまった。


 それと同時に私達を取り囲んでいた聖騎士が一斉に攻撃を加えようとその剣に炎をまとわせながら獣人達に襲い掛かっていた。


 私は焦ったような表情を浮かべながら周囲を見渡した。私の表情に勝ち誇った笑みを浮かべたクロスティーナだったが、次の瞬間にはその表情は怪訝けげんなものへと変った。


「なに?」


聖騎士達が炎を纏った剣を上段に構え襲いかかろうとしたその姿のまま固まっていたのだ。


『う、動けない!』


『どうなってる!何だこれは!?』


 口々にこの理解できない状況に混乱してどうしたらいいのか分からず、自身の状態をただ口にするしかできなくなっていた。掲げている剣の炎もいつの間にか消えていた。


こちらをキッと睨みながらクロスティーナが座ったままでいる私に問い詰める。


「何をしたの!?何故動けないの?何故あなたに魔法が発動しないの!?」


「クロスティーナさん、私は聞かれれば何でも答える愚か者ではありません。手の内を相手に明かすなんてすると思いますか?」


「くっ!」


私は悠然ゆうぜんと立ち上がりながら彼女に近づき顔を覗き込んだ。


「では話し合いをしましょうか。その姿勢からは動けないと思いますのでそのままで結構ですよ。」


「話し合いなど・・・」


「クロスティーナさん私はね、この世界の状況、各国のバランス、アスタルト教国の立位置からある程度の仮説を立ててみたんですよ。」


「何を言って・・・」


「アスタルト教会は悪魔と結託しているのではありませんか?」


 確信めいた表情でクロスティーナを見つめて話す。

彼女は哀れみを込めた瞳でこちらを見つめ返してきた。


「獣人に言いくるめられたのですね、可哀想に。」


「正直私には悪魔の目的は分かりません。ですが、教皇の説明からは違和感を覚えていたので、オーラスト王国などの書物も見ながら情報を集めていたんです。そこからの仮説てすが・・・」


私は今まで見聞きした事についてまとめたこと、そこから導き出せる可能性を伝えていった。


 受肉をしようがしまいが、現在でも憑依という手段で干渉できるなら、そこに執着する必要が無いのではないか。

宗教は救いを求めるからこそ広まるものであり、悪魔が居るというこの状況は教会にとっては勢力が拡大するのに都合がいいのではないか。


「そしてそもそも悪魔は消滅できるのか、ということですね。」


「・・・・。」


 確認した情報では悪魔は精神生命体で実態がない、憑依していてもそれは分身体が乗り移っているということで、その憑依体を倒して悪魔にダメージが有るかは疑問があった。

この世界の理から離れているなんて曖昧な基準では倒せるとは考えにくい。

ただ受肉すれば実態を持つようになるので、少なくとも物理的には倒せる可能性が考えられる。しかしわざわざ弱点を自分で作るのもありえないものだった。


「こうなってくると獣人が言っていたこの世界の最上位者が箱庭を眺め、つまらなくなれば自分で変化を起こしていると言うのがしっくりきますね。」


「・・・。」


クロスティーナは先程から何を考えているのか黙ったままこちらをうかがうように見ているだけだった。


「そんな存在に対してとる手段は、諦めるか恭順きょうじゅんするかですかね。まぁ足掻くという選択肢もありますが、その結果人類が滅亡するくらいなら箱庭で飼われている家畜を演じた方が利口でしょう。」


 そう思うからこそ、教国の対応は間違っているとは思っていなかった。

とはいえ、その事実を人々が知ってしまうと大混乱が起きてしまう。そこで、召喚された者は悪魔を倒しうるという希望を抱かせ、事実を隠しつつ人々を指導していく存在として教国はあるのではないだろうか。

ただ、その状況に巻き込まれる転移者はたまったものではない。


「・・・それで、火乃宮様はこれからどうするおつもりですか?」


私の仮説に対して、肯定も否定もすることなく彼女は問いかけて来た。


「元の世界に帰れるならそれが一番なんですか・・・」


言いながらクロスティーナにそれが出来るのか無言で問いかける。


「・・・それは難しいですね。送還については前例がなく、出来たとしても別の世界にお返ししてしまう可能性もあります。」


「ということであれば、この世界に自分で居場所を作るつもりです。」


「国をおこすということですか?」


「面白そうでしょう?良かったら協力頂けませんか?」


「何を馬鹿な!そんな事出来るわけないじゃないですか!!国を興すなんて土地も国民も何もない、経済活動も無い!まさかそこの獣人達と国を作るおつもりですか?アスタルト教会の教義に反している以上世界中から必ず反発がありますよ!」


 興奮して顔を真っ赤にしながら激しい口調で問い詰めてくる。体は動かないのでそのことが余計に彼女をイラつかせているのだろう。


「そこは色々と考えがありますので大丈夫ですよ。ただそうですね、これだけはお願いしたいのですが・・・」


赤ら顔でこちらを睨んでいるクロスティーナの耳元に顔を近づけ、囁きかけるように聞かせる。


「生きて教国に帰りたかったら大人しくしろ。部隊は帰投させろ。あんたは人質だ。下手なことをすれば消すし、教国自体も消してやる。」


耳元から顔を離すと、驚愕の表情でこちらを見つめ何を言えばいいか分からないように口をパクパクさせていた。

その表情を見ながらニッコリと問いかける。


「お分かりいただけましたか?」


「・・・・・はい。」


 自身が理解できない存在が目の前に居る。なぜそこまでの凶行に走ろうとしているのかクロスティーナは彼を理解できなかった。教会の教えを忠実に守ること、教えを世界に広めることを人生としてきた彼女にとっては火乃宮 蓮の言動は彼女の理解の外にいた。


「では行動に移っていただきましょうか。クロスティーナさん、聖騎士の皆さんに今後の行動の指示をお願いします。」


チラッとスマホの時間を見ながらそう彼女に告げた。


「・・・討伐隊はこれよりアスタルト教国に即時帰投しなさい。私は火乃宮様の命によりここに残ります。今回の顛末を教皇様に報告し、しばらく様子を見るよう進言なさい。以降は副団長に指揮権を委譲します。よろしいですね?」


おそらくは副団長なのだろう壮年の鋭い目つきの男性聖騎士が異論を唱えた。


「しかしクロスティーナ様それでは今回の使命に反します。どうかご再考を!私たちは使命の為ならば命など惜しくはありません!」


「なりません!この決定は私たちの命ではなく、アスタルト教国そのものを存続させるための決定です!今は引きなさい。」


「・・・一体彼は何者だというのです。それほどの力を持った人物だというのですか?」


「ええ、あなた達が考えている以上の力を彼は持っているでしょう。それは今この状況を見ても理解できるでしょう?」


「・・・分かりました。ご命令承りました!これより我々はアスタルト教国へ帰投いたします!つきましては火乃宮様、あなた方に危害は加えないことは騎士の誇りにかけて約束させていただくので体を動くようにしていただけないか?」


未だ剣を振り上げた状態で固まっている副団長と思われる彼がこちらに顔を向けて願ってきた。私はもう一度スマホへ目線を落とし少し間を空けて返答した。


「・・・いいでしょう。くれぐれも私や獣人達に何もしないように。その時にはクロスティーナさんの首は胴体とお別れしなければなりません。こんな美しい方を手に掛けるのはできればしたくありませんので。」


 言い終わった次の瞬間、こちらを取り囲んでいた聖騎士達が一斉に動きを取り戻した。皆自身の剣を鞘に納め、手や足を動かし自分の状態を確認していた。

そんな中副団長らしき人物がこちらに近付き話し掛けて来た。


「火乃宮様、今回のことは誠に失礼しました。しかしクロスティーナ様もご自身の意志ではなく、あくまでもアスタルト教国の命令によってされた行為でもあります。出来ればクロスティーナ様に危害を加えないようにお願いしたい。気に入らなければ私の首を貴殿に差し上げる。」


そう言いながら自らの頭を下げ無防備な首をさらけ出す様にしてきた。


「大丈夫ですよ。私は恩には恩、仇には仇で返そうと思っています。なにもしなければ私は何もしませんよ。」


「・・・その言葉信用いたしますので、どうかクロスティーナ様をお願いします。」


「ええ、私としてもアスタルト教国とは良い関係を築きたいと思っています。今回のことは不幸なすれ違いだったという事です。」


「かしこまりました。教国に連絡があれば各国の教会に申し出ていただければよろしいでしょう。ではこれにて失礼いたします。」


 何とか今回は私が考えていた中でも上々な結果になったが、教国に対してある意味宣戦布告をした状況になっている。


(これから一手でも間違えると、この世界の全てを敵に回すことになってしまう。これからは気を抜くことは許されないな。)


するとミリアムが後ろから問いかけて来た。


「本当にこれで良かったのかにゃ?」


「良かったさ。これから忙しくなるからしっかりついて来てくれよ。」


「もちろんにゃ!私たちは火乃宮様と共に行くと決めたのにゃ!」


そんな私たちのやり取りにクロスティーナは無言で冷たい視線を投げていた。

続きます。

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