27 幕間 アスタルト教国
連投4話目です。
帝国に向かっていたクロスティーナだったが、レジスタンスの襲撃を受け肝心の転移者である火乃宮を拐われてしまい、帝国にはその旨の伝令を飛ばし、自身は翌日には教国に戻っていた。
それと言うのも教皇に報告し、今後の対応を練る為であるが、基本的にはほぼ決まっているのでその確認と人員・物資の準備のために戻ったとも言える。
「それで、お前の認識では獣人どもに拐われたと言うことで間違いないな?」
教皇の私室にて恭しく頭を下げているクロスティーナに若干不機嫌さを滲ませた声で教皇は問いかけた。
「はい、相手はワイバーンに騎乗しておりましたので、まず間違いありません。」
「では討伐隊を編成し獣人どもを駆逐する。彼を拐われた失点は今回の陣頭指揮をとって結果で挽回せよ!」
「はっ!」
「ただそれにあたって1つ確認せねばならんことがある。獣人どもはあの事を知っておるとみて間違いないか?」
「まず間違いございません。」
「彼はその話を信じると思うか?」
「可能性はあります。彼の獣人に対する態度は、我々とは異なって忌避感が見られなかったと報告を受けています。」
彼はオーラスト王国の獣人地区では特に獣人に対して、自分と違う存在に対しての拒絶感というものが無かった。彼の世界には獣人は存在しないと言っていたので、クロスティーナとしては自らと異なる存在を目の当たりにし、強い拒否反応が出るはずだと考えていた。自分達が感じたように。
しかし思惑とは裏腹にルナの報告では彼の獣人に向ける視線は憐みの感情が伺えたという。この世界の人間にとって獣人は物に等しい。人間とは違う、膂力で言えば自分たちを容易く殺しうる気味の悪い存在。だから排斥する。殺したとしても、自分たちが害される前に手を打っただけ、そうやって人々は納得し、やがて何も感じなくなっていった。それが当然となるまで。
「彼が敵に回った場合はどう対処を考えているのだね?」
「教皇猊下もご存じの通り彼は《《建前上》》この世界に必要な人物ですが、絶対的に必要というわけではありません。教会の勢力を広げるに彼は最適かと考えておりましたが、説得しても敵になるのであれば必要ありません。」
「そうか。お前の見立てでは彼を処分するには聖女たる力の代名詞の光魔法が必要不可欠だったな。」
「はい、過剰回復でなければ彼を殺すに至らないでしょう。その他の攻撃手段では光魔石で回復できますが、過剰回復はあくまで回復です、光魔石を使っても意味はありません。」
クロスティーナの立てた作戦は、火乃宮 蓮を奪還するという大義名分のもとに獣人達を根絶やしにする。最良なのは、彼が獣人と敵対する状況になっていること。時点として、疑っていたがこちらの説得によって教国に取り込めること。最悪なのは彼が獣人側に着くと決意してしまっていることだ。
「分かった。それでいつ出立するのかね?」
「聖騎士の招集と武装、物資の準備に1日見ておりますので、出立は明後日に。」
「そうだな。分かっていると思うが今回はアスタルト教国の失点でもある。早急に今回の件を解決せねば各国の目もあるのだからな。」
「理解しております。何としても目的は遂行いたします。」
「頼んだぞ。」
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私室に戻ったクロスティーナはテーブルに用意された紅茶を一口含み溜息を吐く。
「ルナ、カイ、明後日の獣人討伐においてあなたたちは最前線に投入します。意味は分かりますね?」
鋭い視線で問いかけられた2人訳知り顔で頷き、ルナが代表して答えた。
「はい、獣人どもを駆逐しつつ、敵陣営深部に居ると思われる彼を確保いたします。」
「よろしい。彼が抵抗した場合は対話の用意があると告げなさい。」
「それでしたら、レンの心証を悪くしないように獣人どもはなるべく殺さず、捕えた方がよろしいですか?」
カイは彼が獣人に同情して協力しているような場合は、殺してしまうと心証が悪くなることを懸念してクロスティーナに質問した。
「その必要はないわ、こちらは彼を奪還するという大義の元、彼を害した元凶である獣人を処分して助け出したという事にします。」
「かしこまりました。では出立の準備をしておきます。」
「各国の目もあります、今度は失態の無いように。」
『はっ!』




