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始め
電車に乗っていることに気付いていた。向かい合わせの席に座っていた。少し前から乗っていた気がする…、気がするなんて自分のしていることが分からない。先程までは暖かったのに、目が覚めてからは寒い感じがして私は外套の前合わせをぎゅっと締めた。周りを見ても誰も居ない。人の気配は無かった。
私は窓の外を見遣った。車窓の景色は畑や住宅地やビル街とか、常識的な何かではなかった。私の目前に広がっていたのはとても広い宇宙だった。どこまでも遠い、遠い果てしない闇と無数の光を見た。闇なのに怖くなかった。圧倒されたからかもしれない。銀河が輝いている。幾つかの星の輝きは本当に眩しくて、見つめ続けた私の目は痛くなった。