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 馬車が目的の町、アニリアについたのは、翌朝のことだった。

御者は夜通し馬車を走らせた疲れを取るために宿屋のベッドで寝ている。俺とまだ寝ぼけ眼のモーリャは、「黄色」を探すために、情報収集をしていた。

「この世に存在していない概念を持ってる人間を、人づてで探すのもなかなか骨が折れるな」

全くと言っていいほど、情報は集まらない。そもそも色がどのような形で「黄色」にあらわれるのかすらわからないため、難航するのも当然ではある。が、こうも収穫がないと心が折れそうになる。

「骨を折って見つかるのなら、折りましょう。何百本でも、何千本でも。現状、他に打つ手もありませんし……」

「そうだな。虱潰しに当たって……なるべく早くたどり着けるのを祈るしかない、か」

この世界で色を見たことがあるのは俺だけだ。俺が見つけなければ、おそらくモーリャにも見つけられないだろう。

それから数時間をかけ、あちらこちらで──最終的には裏路地の違法な賭場にまで足を運んで得たのは、たった一つの胡散臭い情報。ルーレットで大負けしていた前歯の無い男に金を掴ませて得たそれは「街の東の露天に、得体のしれない魔法を使う女が居る」というものだった。

男曰く、普段はその魔法を使わないが、一度だけ彼女が砂を操りスリの犯人を捕まえたのを見たという。

信じるに値するかはさておき、あてもなく彷徨うよりはいくらかマシだろう。

街の東はあまり治安が良くない。モーリャにそれを伝え、宿まで送り届けた。彼女は不満げだったが、仕方あるまい。

街の東地区に入って数歩。案の定、ガラの悪い男が数人通りから現れ道を塞いだ。あまり若くも見えないが、いかにもチンピラといった風体だ。

「この先に行くのか?なら安全のためにも通行料を払ったほうが見のためだぜ?」

男の一人が言う。潰れたカボチャのような顔だ。

無言で男の鼻っ柱を拳で叩き折る。

「がっ……うあああ!?」

予想もしていなかったであろう一撃に、男はよろめき尻餅をつく。地面に鼻血がボタボタとしたたり、汚らしい地溜まりを作った。

「釣りはいらん」

呆然とする男たちを尻目に、目的地へと歩を進める。

露天のある通りまで数歩ごとにこういう手合いがあらわれるのであればとても面倒だ。

と、思っていたが意外にもそれ以降チンピラの類は現れなかった。

俺の運がいいのか、はたまた向こうが怖気づいたか。

予想していたよりもあっさりと、俺は目的地に到着した。

このくらいならモーリャを連れてきても問題なかったかもしれない。罪滅ぼしに何かしら土産でも買っていこう。




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