四話 少女達の安否
誤字脱字は気にしないで下さい
「奏くん!?」
僕が自分のスキルに巻き込まれていると、僕はある事に気づいた。
「ダメージを食らってない?なんで?」
僕は自分のスキル『花火』で創った花火に巻き込まれながら呑気に考え事をしていた。
「(なんで?なんで僕は自分のスキルに巻き込まれたのに無事なんだ?もしかして自分のスキルだからダメージが無いのか。仮にそうだとして、敵はどうなった?直撃したわけではないけどこの火力なら多分武器はバラバラになってるかな?現状確認。僕は左腕の骨にひびが入ってる、現時点で敵の方が有利だけど、この爆発が晴れたあとに敵の武器、それと目が使えないと思う。なら、この爆発を食らっても無事な僕の方が形勢有利になる!)」
加速した思考の中で僕は考える。身体はついてこれないみたいだけど特に問題は無い。
「答え合わせ、合っててください。」
僕は祈るような気持ちで花火が晴れるのを待つ。
「グオオオオオオ?!?!」
「よしっ!合ってた!」
僕は花火の爆発が晴れたあと考えていた通り、大っきいゴブリンの持っていた武器は破壊されていた、唯一の誤算といえば、思った以上に威力が高く、ゴブリンの武器を持っていた右手が吹き飛んでいた。
「グアアアアア!!」
ゴブリンは痛みに加え、目が見えないからか、辺りを片っ端から破壊していた。そうは言っても、周りは倒れた木しかないんだけど。僕は左腕を守りながら木に当たらないように十分に離れる。
「ここでいいかな。スキル『花火』発動。」
僕は敵の目が見えるようになるギリギリまで花火弾を作成し続けた。どうやら一秒に一個位の割合で花火弾が作られるみたい。
「ついでに砲台も作成して、これで十分かな。」
敵のゴブリンはもう少しで目が見えるようになりそうだ。少しづつだけど、こっちに来ている。でもこれで。
「終わると思う。座標指定、指定、指定!花火弾。撃て!」
僕が右腕を上げて、敵に向ける。そうすると、僕の背後に大量の砲台が出現した。砲台は僕の背後の空中で静止しながら、ただひたすらに敵を倒す為に弾を発射する。
ドドドドドドッッッッ!!!!!
花火弾を撃ったあと、大っきいゴブリンの体の至る所に弾がめり込んでいる。これだけでも強いけど。僕はさっきの動きをなぞるように右手を握った。
「起爆!」
ゴブリンの身体中にめり込んでいる、花火が爆発した。それはまるで、色とりどりの花が満開に咲いた様な、そんな幻想的なことを思わせられる。巻き込まれてるゴブリンはそんなこと考えられないと思うけど。
少なくとも僕は綺麗だと思った。そうだ!こういう時に言いたい台詞を思いついた。僕は最後の爆発と同時にぽつりと呟いた。
「汚ぇ花火だ。」
本当は綺麗だけどね。爆発が晴れたあとはぐちゃぐちゃになった大っきいゴブリンがいた。僕はそれを見ないように目を逸らしながら口を開けてぽかんとしている日菜さんの元に向かう。
「日菜さーん!勝ちましたよ!」
僕の言葉が聞こえて、気づいたのか、日菜さんもこっちに向かってきている。なんか少し顔が怖い様な…。
「ひ、日菜さん?」
「なんで君はそんな無茶をしたの?」
「え、だってこっちに敵が来たから倒さないとって。無茶でしたか?」
僕は無茶をしたとあまり思わないんだけどな?と思ったら、日菜さんがひびが入っている方の腕を掴んだ。
「こんな怪我をしてるってことは無茶してるってことなの!」
「痛い痛い痛い!!」
「これからは無茶するの禁止!分かった?」
「え?」
「へ、ん、じ、は!?」
日菜さんが握っている手に力を込める、いたたたた!
「わ、分かりました!これからは。無茶しません。……少ししか。」
「はぁ、もう無茶しちゃダメだよ?子どもは大人に頼っていいんだから。」
「あの、日菜さんはさっきの怖くなかったんですか?」
「さっき?ああ、あの戦闘なら始まってすぐになんか頭の中で加護が発動しましたーって言われたあと怖くなくなったよ。」
「そうですか。」
そういえば日菜さんも加護を持ってるのか。忘れてた。
「まあそんなことより、さっきの少女達の安否を確認しに行きませんか?」
「大丈夫だよ、連れて来たから。ほら、もう大丈夫だよ!こっち来ても。」
「へ!?」
日菜さんの声に反応して後ろから二人の少女が来た。
「あの、ありがとうございます!」
元気に喋っている子の第一印象はこの耳!まさか獣人って奴!?赤色の瞳はこの子の猛々しさを感じさせる。ロングの髪の毛は所々外ハネしていて、髪の毛?体毛?の色は黒と白と黄色を混ぜた虎のような、とゆうか虎の擬人化の様な見た目をしていた。尻尾はふわふわしていて撫でるのを堪えるのに必死だった。
「ありがと。」
無表情で感謝を口にするこの子を見て思ったのはその羽、いや、翼の方が正しいのか?紅い炎の様な色に氷のような透き通った色をしている。二つの異なる色は誇張抜きで完璧に調和していた。目は黒よりの赤色にアリスブルーの目、いわゆるオッドアイだ、所々に鱗が見えていて、多分この子はドラゴニュートなんだろう。尻尾は滑らかさが凄くて、一度撫でてみたい。両方150cmくらいかな。
「綺麗だなぁ。」
僕はこれ以外の言葉を咄嗟に出すことが出来なかった。これ程かっこいいと可愛いを両立した存在がいたのか。マキナはどちらかと言うと可愛さを極めた様な感じだったがこれはこれで好きだ。
「それは思った。」
僕の言葉に日菜さんは同意していた。どうやら日菜さんも同じことを思っていたようだ。同士よー。
「あ、ありがとうございます。あの、お礼がしたいのですが、私に出来ることはないですか?」
うーん、お礼がしたいと言われても、何かあるかなぁ?
「あ、何個か質問したいことがあるんだけど、いい?」
「はい、大丈夫です!」
元気な子は可愛いなぁ、いや別に、元気じゃないから嫌いという訳じゃなくて、質問がしやすいという意味で好きなだけだから!
「質問、君達の名前は?」
僕はまず無難な質問をしてみた。
「え、えと、私の名前はフーカ、見てのおり獣人です。あとこっちは。」
「フラム、そう、呼ばれてる。ドラゴ…ニュート。」
ふむ、フーカちゃんにフラムちゃん、取り敢えず僕よりは年下のはずだ。異世界だから見た目だけの可能性が普通にあるけど。
「えーと、フーカちゃん?次の質問なんだけど、なんでこの大っきいゴブリンから逃げてたの?こんな人気のなさそうなところで。まあ人気がないと言っても僕達がいたわけだけど。」
もし僕達がいなかったらこの子達は危なかったかもしれないのに。
「それは…まずこのゴブリンは大っきいゴブリンではなく、ゴブリンキングと言います。あと…このゴブリンキング倒しきれてませんけどいいんですか?」
「えっ!?」
僕はゴブリンキングを倒しきれなかった?そんなはずはない。あそこまでボロボロにしたんだ。人だったら死んでもおかしくない!僕は、そんな固定概念をいとも容易く破壊された気がした。戦闘は終わったと勝手に勘違いしていたのは僕だったみたいだ。
「グオォ…グ…グオアア」
ゴブリンキングは僕が開けた穴を少しづつ再生させながらこっちに這いずって来ていた。こんなになってまで僕を殺そうとしてくるのか。少し面倒くさい。今度はちゃんと、倒さないと。
「僕は君に用なんて無いです。済まないけど早く経験値になってください。スキル『花火』発動。花火弾作成、砲台作成、座標指定、構え、撃て。」
僕は花火弾を一発撃った、それだけで相手は瀕死になってるみたい。僕は苦しまないように。
「起爆。」
頭に当てた弾を爆発させた。その時に空いた左手でフーカちゃんの目を隠しておく、フラムちゃんはどうやら日菜さんが目を隠しておいてくれてるみたいだから。幸い爆発させた距離が遠かったので血はこっちにまで飛んでこなかった。僕は目を逸らしてたからもしかしたら少しは飛んできてたかもしれないけど。
『経験値を取得しました。肉体のLvが5Lvに到達したことに伴い、ステータス上昇、ステータスの鑑定の精度を上昇。タブレット型端末の機能性上昇。お気に入り登録を取得。スキルのLvが2Lvに上昇しました。』
やったー!レベルがあがった。ステータスが上がったから次からは簡単に敵を倒せるだろう。やっぱりレベルアップをすると楽しいな。僕がゲーム好きだからかな。僕はレベルアップして、相手が完全に死んだかを確認しようとした。そしたら。
「おお!死体が消えた。良かったー。残ったらどうしよかと。」
「あ、あの。」
「ん?ああ!ごめんね、咄嗟に目を隠して、びっくりしたでしょ。」
僕はそう言いながらそっと左手をフーカちゃんの目から離した。
「いえ、それはいいんですけど、お強いんですね。まさかゴブリンキングを一人で倒すとは。」
「いやいや、僕だけじゃないさ、日菜さんも協力してくれたし、何より、君達が居てくれたってのもあるかもしれないね。」
「何故です?」
「いや、ほら、なんか守るべきものがある方がやる気が漲るような気がするんだ。」
少なくとも僕はそう思う。それが弱点になる時があったとしても、ね。
「お強いんですね、あなたは。」
「はは、そんなことないよ。ああそうだ。僕の名前を紹介してなかったね。」
フーカちゃん達が名乗ったから僕も名乗らないと。
「僕の名前は鞘森奏どの呼び方でもいいよ。」
「私は白石日菜だよ。私もなんて呼んでもいいよ。」
「まあ軽い自己紹介が住んだところで次の質問、王都とか、この近くに都市はあるの?僕達は出来ればそこに行きたいんだけど。」
「都市はありますがどうして行きたいんですか?」
「こんな森よりは街にいた方が何かと安心だからね。服も替えが欲しいし。」
やっぱり異世界の都市ってどんな所なんだろう。やっぱりオーソドックスな城塞都市なんだろうか。
「分かりました!私で良ければ案内しますよ。」
「じゃあ案内されようかな。やっぱりそういう街まで遠いのかな。」
僕はあんまり野宿はしたくないかな。
「そこもお任せ下さい!私とフラムがいれば直ぐに近くの王都に着くことが出来ますよ。ね?フラム。」
「うん、転移すれば、すぐ。」
「ですので私達にお任せ下さい!」
胸を張りながらドヤ顔をしている。可愛い。
「ん?転移?」
日菜さんが何か違和感に気づいたみたいだ。
「ちょっと質問なんだけどいいかな?」
「はい、日菜さん!」
「なんかこそばゆいね。まあいいや、フーカちゃんが今言った転移って何?」
「うーん、転移とは、ですか。フラムー。」
「転移とは、正式名称は転移魔術と言って、空間魔法の最上位魔法の一つに位置する。使えるものは人間には余りいない。」
おお、フラムちゃん急に饒舌に、検索エンジンで検索した時みたいな解答の仕方をしている。無機質に喋っているようで声に抑揚がない。
「だ、そうです。」
「そっか、なんでフーカちゃんや、フラムちゃんはその空間魔法が使えるの?」
「えっへん!私達は幼いながらも頑張ってこの魔法を習得しました。フラムの方が今のとこ上手いんですけど。いつかはフラムを超えるような空間魔法を使えるようになってやりますよ!」
「フーカ、大雑把。構築に、1分も、いらない。今は、5秒もあれば十分。」
「えー。あの術式複雑なんだもん。仕方なく無い?」
「そう?簡単だけど。」
「むっ、簡単そうにいって!本当は難しいんですからね。」
あんな事が起こったあとなのに随分この子達は冷静だな。肝が据わってるように感じる。
「まあまあ。じゃあフーカちゃん、最後の質問。なんで倒せるのにゴブリンキングをわざと倒さなかったの?。」
「わ、私達は逃げてたのに倒せるわけないじゃないですか!何言ってんですかもう。冗談はほどほどにして下さい。」
僕は二人の目が鋭くなったのを見逃さなかった。
「奏くん!幼い二人が倒せるわけないでしょ。倒せるならわざわざこっちに来る必要性がないし。」
「うーん、そっか、僕の『ステータス』がレジストされたような感じがしたんだけど、勘違いしていたのは僕の方だったか。ごめんね?変に勘ぐっちゃって。」
僕はLv1の時とLvが5になった時に二人のステータスを鑑定した、そしたら弾かれた。まあ今言及したところで意味がない。倒せる感じもしないし、したくもない。この問題は保留だな。
「いえ、謝ってくれるのならそれでいいです。あ!そうだ!奏さん!」
手をポンと叩きながらフーカちゃんが話してきた。
「なに?」
「ゴブリンキングがどうやら戦利品を落としてるみたいですけど拾いに行きませんか?」
「あ、それ私も気になってたんだよねぇ。奏くん。どうかな?」
「そうですね。そうしましょうか。」
僕達四人はゴブリンキングが居たと思われる場所まで近づくと、アイテムらしきものが落ちていた。
「取り敢えず、『ステータス』」
僕は落ちている全てのアイテムのステータスを見た。
ゴブリンキングの魔石…ゴブリンキングからでてきた魔石。純度がそれなりに高く、価値が高い。
ゴブリンキングの腕輪…これを装着すると、魔力を消費して、一時的に力を増加させる。
ゴブリンキングの王冠…これを装着すると、ゴブリンを理解し、クリティカルを出しやすくする。
「おお便利、序盤にありがたいアイテムですね。」
「そうだねぇ。」
日菜さんもステータスを鑑定してたみたいだ。せっかくだから僕はこの黄金の腕輪を選ぶぜ!
「僕は非力なんで出来れば腕輪が欲しいところなんですけど。」
「じゃあ私は王冠かな、魔石はよく分からないからあげるよ。私はゴブリンの魔石があるし。」
「ありがとうございます。じゃあこの腕輪を貰いますね。」
僕はこのシンプルな黄金の腕輪を拾い、腕につけた。想像以上に重いけど、もしかして本物かな?換金したら何円するんだろ。
「あ、そうだフーカちゃん言いたいことがあるんだけど。」
「なかなか唐突ですね。どうしました?」
「敬語使わなくてもいいよ。僕達そんなので怒らないし。」
「私からもお願いしたいところだね。なんだかむず痒くて。」
「そうですか?いやー少し敬語は疲れたね、ねえ?フラム?」
「いや、私関係ない。」
「またまた、ちょっと緊張してたじゃないのー。」
「フーカ、そんなことより転移。」
「はいはい。忘れずちゃんと構築してましたよ。」
そう言いながらフーカちゃんがつま先で地面を蹴ると下から丸いオーソドックスな魔法陣が出てきた。青白い光が辺りを照らしている。夕方の空にはなかなか不釣り合いな光の色だ。
「じゃあ、これからこの魔法陣で王都に転移しますから待っててください。あと少しで出来るので。」
「フーカ、いつも思ってるけど、魔法陣出す必要、ある?あとここ、魔力配分おかしい。」
「いいじゃん、これも気分ってやつ。はいはい分かってましたよ。」
「フーカ、ここの文字、こう、だと、王都、少し離れた座標に着くけど。」
「王都のど真ん中に転移したら見た人みんなびっくりしちゃうでしょうが。」
「そっか。」
そんな軽口を叩きながらも、魔法陣は輝きを増している。
「ちょっとだけ気分が悪くなるかもしれないので目を閉じといて下さいよー。それじゃー行きます。」
僕は目をぐっと強めに瞑った。
「さん!に!いち!ぜろ!いち!に!さん!さん!さん!」
「いや、いつ始めるの!」
「あはは!いいツッコミ。じゃあ気を取り直してー。さん!ぜろ!はい!最上位空間魔法『転移』」
「うおっ!」
「きゃっ!」
一瞬の浮遊感に戸惑いながら地面に脚が着いたのを確認した後、ゆっくりと目を開ける。
「つ、着いた?」
「これは怖かったね奏くん。大丈夫?」
「は、はい何とか。」
「奏!日菜!こっち向いてみて。」
「ん、こっちか…な?」
声のした方向に目を向けると、大きな城塞都市が見えた。はは、まじかよ。転移すげー。
「今日はここで寝泊まりするよ。おっけー?」
「ま、待って。」
「ん?」
「僕達お金なんて無いけど。どうしたら。」
僕が困惑していると、フーカちゃんは笑いながら。
「あはは!そんなの分かってますよ。私が奢ってあげましょう!助けて頂いたんだし。」
「うーん。有難いけど、少し恥ずかしいね。」
どうやら日菜さんも同じことを思ってたみたいだ。
「そうですね。僕も少し恥ずかしいです。」
多分年下の少女に奢ってもらう時が来るとは。恥ずかしいな。
「まあまあ恥ずかしがらずに、助けてもらったんですからこれくらいはしないと!さあ、行きますよ!いざ王都!えい、えい、おー!」
「おー。」
「お、おー…」
僕達四人は王都の門に向かって歩いた。ああ、異世界って、何でありなんだな。
主人公はかわいいもの好きです。