三話 初戦闘はボス戦
初心者です。よろしくお願いします
「日菜さん、警戒しといてください。この森には何が出るか分からないんで。」
「了解したよー。」
「呑気な…」
今僕は日菜さんと一緒に湖の後ろにあった森に来ている。あまり深いとこまで行かないから大丈夫だと思うけど、なんか不安だ、気を引き締めとかないと。
「それはそうと食料もちゃんと探さないと。」
「そうだね。あ!奏くん、これは食べられるかな?」
「どれですか?あ〜それはどうなんでしょう?」
日菜さんが持ってきた物は青色の雑草みたいなものだった。RPGだとだいたい薬草とかにカテゴライズされていそうだ。
「取り敢えず調べましょう。」
「ん?どうやって調べるの?」
あ、日菜さんはアイテムのステータスが見られることを知らないのか。
「日菜さんも覚えといてください。これ割と便利なんで、『ステータス』」
僕は日菜さんの持っている雑草のステータスを調べた。
魔力草◁
+10MP回復
僕は魔力草の詳細を確認した。
魔力草…魔力の濃度が高い場所に生える草。MPを回復させる効果がある。直接食べるより、ポーションにした方が効果がある。
「おお〜流石ファンタジー。」
「なんて書いてあったの?」
「日菜さん、この草に向かってステータスを発動してみてください。」
「わかった、『ステータス』」
その時、日菜さんはビックリした顔で僕の顔と手に抱えてる魔力草を何度も交互に見ている。よく見たら日菜さんってかなりの美人さんだなぁ。茶色寄りの黒髪に黒色の目、まつ毛は長くて、鼻も綺麗に整ってるし。眉目秀麗って言葉が一番似合いそうだなぁ。
「奏くん魔力草だって!ザ異世界って感じがしてこない?」
「え?ああ、そうですね。」
おっとっと全然関係ないこと考えてた。僕は魔力草の見た目を覚えたあと、周りを少し見渡して見ると、結構な数の魔力草があることに気づいた。
「日菜さん、ここら辺にかなり魔力草があるみたいなんで食料を探すついでに片っ端から回収していきましょう。」
「いぇーい、賛成。じゃあ早速。」
「待ってください。」
「?、どうしたの。」
「あの、できればでいいんですけど、魔力草を引っこ抜く時に根っこごと抜いてきてくれませんか?」
「いいけどなんで?」
うーん、なんて答えたらいいのかな?小説だと根っこもあると価値が上がるとかって見たから根っこごと抜いて来て欲しいんだけど。
「えーと、根っこもあると色々と便利なんです。だから根っこごと抜いてきて貰えるとありがたいんですけど。」
「うーん、わかった!じゃあ手分けして魔力草を回収しながら食料探しだね。」
「はい。あと、はぐれないように二人とも目に見える距離にいときましょう、あんまり離れると危ないので。」
「了解ー。」
僕は暫く食料になりそうなものと、魔力草を回収して行った。
30分後
「日菜さーん!」
そう僕が大声で呼びかけると少し遠い所から日菜さんの返事が聞こえた。
「なにー?」
「そろそろ集合して何が集まったか見ませんかー!」
「おっけー!」
僕は日菜さんと合流してどれだけ集まったか集計した。ちなみに、日菜さんはアイテムボックスの収納能力にかなり驚いていた。
「いやーこのアイテムボックスってスキル、どれだけ入るのか不思議だねー。流石異世界、なんでもありだねぇ。」
「そうですね。」
僕と日菜さんが集めたものを一度全部僕のアイテムボックスに入れて、一種類づつ確認することにした。どうやらアイテムの数が2個以上だと名前の横に数が表示されるみたいだ。
魔力草◁(30)
上薬草◁(10)
薬草◁(24)
麻痺草◁(15)
塩草◁(12)
アマイ実◁(15)
カライ実◁(6)
スパイ実◁(8)
僕はアイテムの詳細を全て開いた
薬草…+10HP回復。何処にでも生えている草。HPを回復させる効果がある。直接食べるより、ポーションにした方が効果がある。
上薬草…+15HP回復。+5MP回復。薬草に魔力が溜まるとたまにできる草。HPとMPを回復させる効果がある。直接食べるよりポーションにした方が効果がある。
麻痺草…食べると一定時間麻痺する。武器に塗ると効果的。
塩草…食べるとまるで塩のような味がする。これを見つけるとこの森は食べ物があることが分かる。
アマイ実…食べると甘味を感じる。美味しい。
カライ実…食べると辛味を感じる。辛い。
スパイ実…食べると酸味を感じる。酸っぱい。
「うん。なかなかいい感じの物が入手出来たぞ。」
僕は日菜さんにスマホを見せながら呟いた。
「そうだねー。これだけあれば今日一日くらいなら大丈夫そうかな?」
それはそうと塩草に書いてあるこれを見つけると食べ物がある事が分かるっていうのはなんなんだ?もしかしたらモンスターがいたらこの草は真っ先に無くなるものなのかもしれないな。塩草の見た目を覚えておこう。
「日菜さん、このアマイ実っていうの一緒に食べませんか?」
アマイ実は地球でいうりんごの形をしていた。
「うーん、そうだね。一応本当に甘いのか確かめないとだし。」
僕はアマイ実を二個取り出して日菜さんに渡した。
「じゃあ。」
「「いただきます。」」
僕は確かめるようにアマイ実の皮を持っていたナイフで少し剥いて噛んでみた。
「「甘っ!!」」
アマイ実は結論からいうとびっくりするぐらい甘いりんごだった。
「これは甘くて美味しいですね!」
「そうだね。それには同意するよ。」
僕は甘いものが好きだからいくらでもいけそうだ。
「あっ、日菜さん皮はどうしたんですか?」
「え?皮ごと噛んだけど。」
「なかなかワイルドですね。」
「君しかナイフを持っていないからね。」
僕はじっと見てくる日菜さんの視線から顔を逸らしながら。木に印を付けた。
「ん?奏くんなにしてるの?」
「木に印を付けてます。森で迷ったらダメなので。」
「へーちゃんと分かってるんだ。」
僕は無人島で生活をしたりする漫画やテレビを見ているから少しは知識があった。忘れてなくてよかった。
「そういえばこのナイフってどうしたら火が使えるんでしょうか。」
「なんか適当に試してみればいいんじゃない?」
僕は試しに魔力的な何かで火が点るイメージをしてみた。
ボッ
「「おお!?」」
僕と日菜さんの声が被った。それほどナイフの先から火が出てくるのは衝撃的だった。僕はまだまだ異世界というものに慣れそうにないな。
「いやぁ、それはかなり便利なナイフだね。奏くんが最初から持ってたの?」
「いや、マキナから餞別として貰いました。」
「マキナ?ああ、あの自分のことをデウス・エクス・マキナって言ってた子のことか。あの短時間でよく仲良くなったね。」
「いえ?それほど短時間でもなかった気がしますが。」
なんせ僕は一日ほどあそこで眠ってたからね。あそこで寝ると凄く心地がよかったなぁ。またあそこでマキナに膝枕してもらいたい。どうしたらいいんだろう?ああ、そうか。
「アイテムボックスを使えばいいのか。」
「何か言ったかい?」
僕が小声で呟いたのに反応して日菜さんが聞いてきた。
「いえ、このアマイ実って本当に美味しいなーって。」
「ふふ、それさっきも言ってたよ。それほど美味しかった?」
「はい!」
「じゃあ見つけたら回収していこうか。」
甘味が多いのは良いに越したことはない。
「やったー!」
「ふふ、子どもだねー。」
「子どもじゃありません。僕は15歳の高校一年生ですよ?」
「いやぁ、ごめんごめん。」
「ーーーーー。」
「ん?」
「どうしたの奏くん?」
「いや、何か声が聞こえたような。」
僕は手を耳に近づけて音に集中した。
「ーーーーー!!」
「なんの音だ?」
まるで誰かが叫んでるような?
「キャーー助けてー!!」
「!」
「どうしたの?」
「何か助けを求めてるような声がしました!」
「助けに行くかい?」
「それは…」
助けに行った方がいいのか?ここは助ける場面なんだろうけど僕も日菜さんもかなり弱いしもし遭遇しても助けられる気がしない。それなら僕は何も聞かなかったことにして湖に戻りたいところだけど。
「こっちに近づいて来てるね。」
女声にしては幼い叫び声と共にドスンドスンと地面が揺れているような地響きを感じながら僕は考えた。
「日菜さん!スキルを使って近くにある木を片っ端から倒していってください。」
「なんでかは知らないけど了解した!」
日菜さんがスキルを使用したエフェクトが出た後、日菜さんがパンチした木が半ばから折れて地面に倒れた。そんなことをしてる間にも、音は少しづつ近づいて来ている。僕は近くにある手頃な枯れた枝を見つけるとさっきのナイフで枝に火を付けた。
「落ち着け、僕。これはゲームで言うところのチュートリアル戦だ。僕が負けることはない。攻撃が当たっても死ぬよりはまし。僕は負けない。負けない。負けたくない!」
僕はパンと強めに頬を叩いた。
「いてて、やっぱり痛いのは苦手だ。」
そう愚痴りながら僕は次の行動に移る。
「日菜さん!木はもう倒さなくていいです!多分このあと戦闘しますので隠れて居てください!」
「了解!負けんなよ奏くん!」
日菜さんが拳を突き出しているので僕もそれを真似て拳を突き出した。
「最悪走って逃げます!」
かなりダサいセリフを吐きながら。僕達がそんなやり取りをしてるうちに音の正体が判明した。日菜さんが周りの木を倒してくれていたおかげで見晴らしが良くなっていた。
「キャー!助けてー!」
そう叫ぶのは二人の少女。少女の後ろを見てみると。
「「キキキキキキキ!!!」」
二体の魔物っぽい奴と。
「グオオオオオオオオオオ!!!!」
一体の大っきい魔物だ。多分5m位かな?ここで僕は冷静に自分のステータスと相手のステータスを見ようとした。
「『ステータス』」
目の前にスマホが現れ僕はそれを覗き込む。
鞘森 奏(15)Lv1
体力 100◁
気力 100◁
スタミナ 150◁
魔力 1000◁
称号 なし
装備品
白のパーカー
黒のズボン
灰色の靴
バフ
デウス・エクス・マキナの加護◁
スキル
アイテムボックス(改造)Lvmax◁
花火Lv1◁
今度は相手のステータスを。
「『ステータス』」
何か弾かれた感覚がした。多分ステータスを見ることは出来ないか、レジストされたか。色々可能性はあるけど長く考えてもいられない。敵はすぐそこなのだから。
「おい!こっちだ!」
僕は少女達を呼ぶついでに、後ろにいる魔物にも
聞こえる位の大声で叫んだ。
「君達は隠れて!僕がこの魔物を倒す!」
少女達が僕を通り過ぎた時、僕は聞いた。
「ありがとう。」
小さい声だけど確かに聞こえた。僕はそれを聞いただけで力が湧くような錯覚をした。たぶん気のせいだろうけど。
『デウス・エクス・マキナの加護が発動しました。それに伴い、戦闘時における身体能力、思考能力、精神力に補正が入ります。』
気のせいじゃなかったみたい。
「まあいいや。戦闘に有利なら。」
「グオオオオオオ!!」
敵は僕以外は見失っているみたいだ。火のついた枝を持っている僕はさぞかし見つけやすいだろう。
「これで僕以外を見失ってくれたら上々。見失わなかったら。」
敵は僕をほっといて後ろにいる少女達に行こうとした。
「この森に火を付ければいい。」
僕は手短に近くの木に火を近づけて燃やしていった。幸い、少し燃えるのに時間がかかるけど、煙は結構出てきた。その煙は上に上がり大っきい魔物に直撃した。
「グオオオ!?!?」
よく見ると大っきい魔物も小さい魔物もゴブリンといえばこんな感じ、みたいな見た目をしている。
「ま、ゴブリンだとしてもこの大きさは油断出来ないけどね。」
「キキ?!」
「キキキ!!」
大っきいゴブリンの近くにいる。取り巻きゴブリン(奏命名)達は僕が火をつけた犯人だと分かってるみたいだな。賢い。
「よーしこっちこい!」
僕は少女達が隠れている場所と向かうために大っきいゴブリンの股下を通るように全力で走った。股下を通っている最中にふくらはぎを火を灯した状態のナイフで切りつけた。切り方が悪いのだろう。少ししか切れなかったけど。敵が怒るには十分だったみたいだ。相手の肉を切る感触がかなり気持ち悪かったけど。
「よし、これくらい離れられればいいかな?」
僕と魔物の距離は約25mは離れている。もう少し離れたかったけどこれ以上は木が多くてダメだ。
「グオオオ!!」
「キキ!」
「キ!」
大っきいゴブリンはまださっきの煙のせいであまり目が見えないんだろう。自分の手を振り回しながら僕の方にゆっくり向かっている。相当怒ってるな。取り巻きゴブリンはそれを見て僕を睨みながらこっちに向かってきている。ゴブリンは小さいながらもなかなかの機動力はあるみたいだね。
「なんで僕はこんな冷静なんだ?」
相手が殺意の篭った目で睨んでいるのに。これは加護のおかげ?それとも…。そんなことを考えてるうちにゴブリン達が二体迫ってきていた。片方のゴブリンは、そこら辺にあるような棍棒を上から振りかぶってる。もう片方は棍棒を僕に当てようと横に振りかぶっていた。これは先に横の棍棒が当たる。なら!
「腕で防御する!」
バキ!
「え?」
僕は確かに防御をした、が!防御をした左腕は折れるまでにはいかないにしろ、ヒビがはいったみたいだ。
僕は上から振りかぶっている棍棒をギリギリで避けようとしたら、つまづいてしまった。ギリギリだけど、僕のつま先のすぐ先ぐらいに棍棒が振り下ろされた。
「やばい。」
僕は今、尻餅を着いている。それに対してゴブリン二体はもう、次の攻撃に移ろうとしている。奥を見るとそろそろ大っきいゴブリンも動き出しそうだ。
「こんな序盤で死ぬなんて、嫌に決まってるだろ!」
僕がそういうのもお構い無しにゴブリンは武器を振ろうとした、多分これが当たったら良くて気絶、悪くて死亡といったところだろう。その時、横にあった木が倒れてきた。僕はゴブリンよりも先にそれに気づくと、素早く後転をして木を避けた。左腕が痛いけど、まだ耐えられそうだ。そんなことより。
「日菜さん!」
木が急に倒れた、僕の近くで、そんな偶然はありえないし、折れる前に日菜さんの声が聞こえたから、僕は回避することが出来た。取り巻きゴブリン二体は僕を殺すのに夢中でその合図に気づかなかったんだろう。ゴブリンは木に潰されてぺったんこになっている。血は赤色のようだ。、
「馬鹿かい君は!逃げるって言ったのになんで怪我なんかしてるの!見てられないから私も援護する!拒否権はないから!」
「ありがとうございます!」
感謝は口にしたいと伝わらない。それに今のは本当に助かった。やっぱり小説の人達みたいに急に動きが良くなったりはないのか。もっと頑張らないと。
「グオオオオオオ!!!」
「やっとこさ、大っきいゴブリンのお出ましか。」
大っきいゴブリンは武器を持ってないように見えたが、大っきいゴブリンが近くの木を掴んで引き抜くと、大っきいゴブリンはそれを振り回した、棍棒の代わりだろうか?
「僕はこのスキルにかける!スキル『花火』発動!」
僕がこのスキルを発動すると、頭の中にこのスキルの使い方が情報として流れてきた。
「砲台作成、通常花火弾作成、座標指定、通常花火弾!構え!」
もう相手との距離は10m以下にまで差し迫ってきている。僕は引きつける。
「まだ。」
大っきいゴブリンは即席の棍棒が届く範囲まで近づいてくる。
「まだ!!」
大っきいゴブリンが棍棒を振り上げた、どうやら上から僕に当てるみたいだ。
「まだだ!!」
「奏くん!!!」
日菜さんの声と同時、振り上げた棍棒がこっちに向かってくる。
「今!」
僕は未だ無事な右腕を振り下ろそうとしてる棍棒に向ける。そして、
「発射!」
右腕を向けた先、すなわちゴブリンの棍棒に向かい合うように突如出現した大砲から、花火弾と思わしき玉が発射される。棍棒と僕が発射した玉が激突する。このままだと僕の弾の方が負けるだろう。だかしかし。
「起爆!」
僕がそう言いながら右手を握ると、急に花火弾が発光し、ゴブリンが持っている武器ならず、大っきいゴブリンや僕を巻き込んで爆発した、それは傍から見れば綺麗なのだろうが、それを間近で食らっている僕には目の前の光でよく分からなかった。
「奏くん!?」
ああ、どうやら日菜さんの所までは花火の爆発は届かなかったみたいだ。よかった。巻き込まなくて。と考えながら僕は周りがゆっくりに見えている世界で、自分のスキルの爆発に呑み込まれた。
誤字脱字は気にしないでください。