十話 奏、ペットを買う
遅ればせながらごゆっくりどうぞ。
今、僕と日菜さんは冒険者ギルドに出てきて話し合っている。あの後、ギルドタグと言われるドッグタグのようなものが支給された。色は黄色で、灰色は15歳未満の未成年者だけなんだそうだ。その後に魔石を買い取って貰ったり、要らない薬草や果実を売ったりしてお金を手に入れたという所だ。
「次は何処に行きますか?」
「うーんそうだねー私はそろそろホテルに戻ろうかな?奏くんも冒険者ギルドで寝るくらいなんだからホテルで私と一緒に寝る?」
「冗談もそこまでで。僕は図書館に行ったりここら辺をすこしぶらぶらしてきます。」
「おっけーじゃあ別行動だね?」
日菜さんの目が少し腫れているみたいだけど、特に追求はしないでおいた。多分僕が寝ている時に何かあったんだろうから。
「じゃあ、またホテルで。」
「おっけー、ホテルでねー。」
僕は日菜さんと別れた後、人に聞きながら図書館に行くことが出来た。時間も少しあるし、少し本を読みに行こっかな?
「たしか、バルトー図書館…だったかな?」
図書館の中は想像した以上に凄かった。大量の本棚に本がぎっしり詰まっていて、多分地震が来たらドミノみたいになるんだろうな。
「図書館なんて何時ぶりかなー?あ、どこに何があるかわかんないな。どこかに書いてあるかなぁ。」
一階部分だけでも読み切るまでに三年以上は掛かる気がする。しかもこの大量の本棚が六階まであるようだ。案内板にはそう書いてある。
「ソファーがあるからあそこで読むとしてと、とりあえずカウンターに行こっかな?」
僕がカウンターに向かっていると、少し前方にいるおばあちゃんが大きい荷物を抱えていた。心做しか、足が震えているように見える。
「おばあちゃん持ってあげるよ。どこまで運んだらいいの?」
「ありがとうねぇ、この荷物が重たくて重たくて、猫の手も借りたい所だったんじゃ。」
ちょうど困ってたみたいだ。やっぱり感謝されると嬉しいな。それはそうと何故かカウンターのスタッフ達が少しざわざわとしている。こっちをチラチラ見てるからこのおばあちゃんの事が気にかかってたのかな?
「それは良かった。『アイテムボックス』はい、これで収納できたから、大丈夫だよ。」
僕がアイテムボックスで亜空間に収納してみせると、おばあちゃんが少し目を見開いて嘆息している。
「ほぉ、その若さでアイテムボックスを扱うとはねぇ。お兄さん、それはあんまり人前で見せびらかすものじゃないから、気をつけるのじゃよ?」
「あ、そうなんですか、忠告ありがとうございます。」
僕は素直に感謝した。そのままおばあちゃんが指定してくれた場所に荷物を出す。アイテムボックスのウィンドウには、魔力結晶と書いてあった、よくこんなに重いものおばあちゃん一人で運ぼうとしたな。運ぶ手段があったんだろうな。
「ここでいい?」
魔力結晶を置いたぐらいの時に、おじさんぐらいの年齢のスタッフさんが飛んで来た。相当焦っているようだ。
「ありがとうね、あら今頃来たのかい、遅いねぇオルガノ。」
オルガノと言われた白髪混じりのおじさんは軽く汗をかいていた。
「来るなら事前に連絡してください、リネ館長。」
リネ館長?どこかで聞いたような?
「あっ、図書館館長のリネ館長?」
「そうじゃよ。」
「いままで館長の仕事ほっぽり出してどこいってたんですか?」
オルガノさんはじっと見つめながらリネさんを問い詰めている。
「なに、魔石が不足しておったのでダンジョンのボスを倒したきただけじゃ、大したことではない。」
全然大した事じゃねえか。
「大したことですよ!?私に報告するなり、護衛をつけるなりしてください。この三日間私は気が気じゃなかったんですよ!」
「わしより強い護衛がいなかったから付けなかった。これじゃ駄目かの?」
「駄目です。魔石回収は私共に任せて館長は仕事をしてください。」
「それは駄目でしょ。館長さん」
「お兄さん、初対面なのに辛辣じゃな。そうじゃ、お兄さん名前はなんじゃ?」
「あ、言ってませんでしたね。僕の名前は鞘森 奏って言います。えっと、館長さんはなんて呼んだらいいですか?」
「わたしゃリネ・スメーヌ、バルトー図書館の館長じゃ。呼び方はなんでも良いからの。ほれ、オルガノも自己紹介するんじゃ。」
「後で聞きますからね……はぁ、私の名前はオルガノ、リネ館長の助手みたいなもんです。奏殿、今回は助けて下さってありがとうございます。」
ピンと伸ばされた背筋に衰えを感じさせないこの人は何歳なんだろう?ステータスで確認してみるか?
「いえいえ、僕は困ってたので助けただけですよ。そんな感謝されても。」
僕は少し照れながら返答する。
「そうじゃ、お礼に何か欲しいものはあるか?ちょっとしたものならあるぞ?」
「えっと、ひとつ聞いてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「リネ館長はこの図書館の本を全て把握していたりしませんか?」
「そうじゃな。把握しておるよ。して、なんじゃ?」
「本を探して欲しいんです。理由は聞かないで欲しいんですけど、大丈夫ですか?」
「そうじゃな、重いものを運んで貰ったお礼じゃ容易い容易い。」
「リネ館長、そんなに安請け合いしていいんですか?」
「わし今仕事しとるんじゃからオルガノは引っ込んどくのじゃ
。」
「分かりましたよ、私は行きますので、何かあったらいつでも呼んでくださいね。くれぐれも!一人でやらないでくださいよ?」
「わかった、わかったからはよ行け……いったな?で、奏や、お主はなんの本を探して欲しいのじゃ?」
「えっと、伝説とか、伝承の本とドラゴンの種族とかの本と、あとは簡単な魔導書みたいなのかな?」
「そうじゃな…これとこれと、あとはこれとかじゃな、本よ『来い』」
リネ館長がぼんやりと光った瞳を虚空に向けながら手招きをすると、至る所から本が飛んで来て僕の手の上に本が乗る。本は少し浮いたあと僕の手の上に重量感を感じさせた。浮力が無くなったからだろう。
「凄いですね!それはリネ館長の能力ですか?」
「能力とはちょっと違うがな。この図書館はそこらじゅうに特殊な魔法陣が刻まれておって魔石とわしの魔力があれば動かずに本を管理することが出来るという魔術の一種じゃ。」
「へぇー、凄い!ありがとうございます!リネ館長。」
「ええんじゃよ。そうじゃ…ひとつ、お願いしても良いかの?」
「なんですか?」
「さっきの台詞をおばあちゃんと言い換えてもっかい言ってくれんかの?」
「は、はは、なかなか恥ずかしいお願いですね。」
「いいじゃろ減るもんじゃなし。」
「それはそうですけど…分かりましたよ。ありがとうねリネおばあちゃん。これでいいですか?」
「おお、こんな見ず知らずのおばあちゃんのわがままを聞いてくれてありがとうの。まるで孫に感謝されたような気分じゃったよ。これであと10年は生きられるのぉ。ほれ、お礼に『速読の片眼鏡』をあげるんじゃ。」
「ええ!悪いですよさすがに。」
「ええんじゃ、どうせ替え時じゃったし部屋の片隅で埃を被ってたままよりはお主に使って貰った方が良いじゃろ。ほら、遠慮せんで!」
多少強引に僕は速読の片眼鏡という魔道具を渡された。有難いんだけどさ。
「じゃあわしは研究があるんでそれじゃあの。」
「また無茶しちゃダメだよ?……リネおばあちゃん。」
「うう、孫の頼みじゃ断れんのう。無茶しないと約束しよう。」
「(僕は孫ではないんだけど、まあいいか?)」
リネ館長が去った後僕はソファに座りながら渡された数冊の本を読むことにした。ちなみに速読の片眼鏡はすごく便利だった。普通に読むと数時間はかかりそうな分厚い本もスラスラと読むことが出来る。僕は本を読んでしばらくだったあと。気になる記述があった。
「ん?『私は、よく聞く初代の勇者は魔王と相打ちになったと言われている伝承があるが私は信じない。それはこの私が見つけた伝承に理由がある。この伝承は何故かは知らないが、妙な説得力がある。次の伝承を読んだものは勇者は魔王と相打ちになったと考えるものを少しは変えることだろう。』」
僕は次のページをめくり、その伝承を読んだ。
東西南北中央の五方向に剣花という場所がある。全ては5体の怪物を封印するための剣の花。
東の花は二本の剣、其れに封印されしは凍爛の魔王、
西の花は百の剣、其れに封印されしは爆裂の魔王、
南の花は十二の剣、其れに封印されしは蘇生の魔王、
北の花は一本の大剣、其れに封印されしは要塞の魔王、
中央の花は封印の剣、其れに封印されしは初代の勇者、
全ての花が枯れし時、時の勇者は解き放たれるだろう。
そして、世界に終わりが訪れる。
「……なんだろうこれ?よくあるゲームみたいなシンプルなやつかな?ボスを倒して行ったらラスボスを復活させちゃったみたいな。」
いや、だとしてもなんで主人公の代名詞の勇者が封印されてるんだ?初代の勇者とか、封印したらダメそうなやつなのに。
「ん?『東の花は二本の剣、其れに封印されしは凍爛の魔王』?二本の剣、フラムのピアスが剣の形してたな…しかも両耳…凍は氷、爛は炎、フラムの二つ名は氷炎…そしてステータスの…」
魔王の権能。
「これは写真を撮っておいてフラムに見せてみるかな。なんかあるかもだし。」
僕はシャッターを鳴らさず写真を撮っておいた。さて、次の本はー。
「何なに?『馬鹿でも出来る基礎魔法集』ねぇ。」
僕はその後もパラパラと読み解いた。龍のことについても分かったし。写真も撮っておいたし。あとはーどうしよっかな。本の位置が高くて取りづらいのが何冊かある。
「あ、そうだ。身体強化して、面白そうな本でも探すか。ふむふむ、イメージをする、体が軽く、目が良く見え、足は羽のようなイメージ。こうかな?『強化魔法』」
『強化魔法Lv1を入手しました。』
イメージ通り、僕の体は人間の体じゃ無理なほど高く飛ぶことが出来た。ちょっと慣れなくて本棚に当たって痛い…室内ではあまり使わないようにしよう。
「あ、そうだ、ついでに加護も発動しておこっかな、便利だし。発動しろ発動しろー。」
『デウス・エクス・マキナの加護が発動しました。』
『シェーンの加護が発動しました。』
『グランディールの加護が発動しました。』
『主人公の加護が発動しました。』
「あとは戦術はもう発動してるから大丈夫かな?よーし本探そっと、あ、これ面白そう、後これと、『悲しい龍のお話』?なんかよくわかんないけど借りよっと。」
僕はそこらじゅうを飛び回ってカウンターで本を借りた。
「難しいなこれ。あと飛び回ってたら人がすごい目でこっちみてくる。そりゃ室内で立体機動してる人がいたら恐いか。」
結論を言うとこのスキルは加護とかスキルの戦術と組み合わせないと使いづらいスキルだった。なんだろ?自分の体が思った以上に動くと結構手とか足とかぶつけるんだよね。さっき小指ぶつかって死ぬかと思ったし。なんか意図してない痛みって凄い痛いよね。
「よし、本も借りたし、あとは広場でもぶらぶらしてよかなぁ?」
延滞料金を支払いたくないからこれは二日位で読み切ることにしよっと。僕は王都の広場までゆっくりと向かった。すごく時間が経ったような気がしたがこの片眼鏡が便利だ。読む速度が上昇したおかげでこの世界の言葉を読むことが出来た。
「まあ読めても書けないけどねー。」
僕は首に下げているギルドタグをひっくり返すと、日本語で名前が書かれていた。異国語だけどいけるのか、驚きだ。もしかしたら異世界ノベルみたいに東の国みたいなのがあるのか?
「まあこんな時に深く考えるのはやめよっと。……空が綺麗だな。」
空にはいくつの惑星が浮かんでいた、赤い星、青い星、緑の星、土色の星。こんなに近くて衝突はしないのだろうかという思考はもう僕の中にはなかった、ここは異世界だ、地球とは違う物理法則があってもおかしくはない。既に写真はいっぱい撮っていたので、僕は暫く惑星鑑賞を堪能した。
「いらっしゃい!こっちに可愛い動物、犬や猫、鳥やスライムまで揃ってるよ!」
「……ん?魔獣屋ってなんだろ。」
僕が声の方に近寄るとペットショップがあった。可愛いものは好きだったから、僕は吸い込まれるように入店する。
「へぇー、猟犬みたいなカッコイイのもいるし、猫ちゃんもいるし、うげ、このケット・シー最高に高い。これ手持ちじゃきついなぁ。」
僕には交渉スキルはあまりない。ので、僕は他にどんな動物がいるのかと、奥へ奥へと行く。僕の直感が奥へ行けと言ってるかのようだ。
「なーんて、ね……ってあれ?雷狼、だいたい金貨2枚、位かな。なんでこんな奥に?店員さーん。」
僕は店員さんを呼ぶ。
「なんでこんな奥にいるんですか?こんなに綺麗な毛並みだったらかなり高い値段で売れるでしょう?」
「いや、確かに最初は売れたんですよ、ですが問題がありまして。」
「問題?」
「噛むんですよ、しかも電撃付き。どれだけ調教しても一向に懐かないし殺すのも忍びないのでこの奥に押し込んでるんですよ。今は寝てますがいつもはもっと警戒心が凄くて凄くて。」
「この首輪は何ですか?腕輪も、鉄枷のようですけど。」
「さぁ?私は渡された魔獣や動物、魔物を売るだけの商人なんでね。それ以上の情報はあまり要らんのですよ。」
この商人は使えないな。よし、こいつなら使ってもいいだろう。男だからワンチャン効かないかもだが。まあ、最初の一回で何となくコツは掴んだ。男も惚れるような男、つまりモテ仕草をすれば少しは騙される…はず。既に加護は発動させている。
『魅了LvMAXを発動しました。』
「あの、この檻に僕を入れてくれませんか?」
「え!?何を仰いますか!私共がお客様にそんなことを!」
「僕が今からこの檻の中に入ってこの狼さんに認められたら、少しまけてくれませんか?認められなかったら…」
「認められなかったら?」
「笑って誤魔化すさぁ!…てのは置いといて、割増で払いますので。それでどうでしょう?」
「ううむ、それは、お客様が不公平ではありませんか?今まで懐いたことが無いと言われている雷狼を手懐けると言っているのですよ?」
「そんなもの百も承知です。ですが賭けはリスキーな程楽しいじゃありませんか?どうです?ひとつ、私と勝負しましょうよ?」
「……怪我をしても私は責任を負いかねませんが、よろしいので?」
「うん、勝手に入って勝手に怪我をしたって処理でいいよ。」
「はい…では。解錠します。」
「(このスキルは強すぎるな、男性なのに僕の魅了が罹りつつある。)」
僕はゆっくりと解錠された檻の中へ足を踏み入れる。床は冷たく、これではこの狼が凍えてしまうんじゃないか?やはりここの店員さん達は魅了を使ってもいい奴だったか。動物は等しく接しないと。僕の足音に反応したのか、狼はのそりと起き上がり僕を見つめる。反抗する気力はないのか?
「おはよう。起こしてごめんね、僕は君の次の主人、って感じかな?まだだけど。」
僕は敬意を持って狼に接する。狼は犬程人懐っこい動物ではない。そしてこの狼は知性を感じる。身体強化して、目が良く見えるからか、微かにそんな感じがする。僕の直感は合っていたという訳だ。
「撫でさせては…くれないよね。」
僕が手を近づけると、狼は唸り、今にも噛みつきそうだ、僕はその場で手を止め、店員に話しかける。
「性別はなんですか?」
「えっと、性別は雌ですね。」
「あ、そうなんだ。君は女の子だったのか、それは嫌か、知らない男の人に撫でられるなんてね?ごめんね、気が付かなくて。」
「グルルゥ…」
「うーん、拘束具が邪魔だな。外してもいいですか?」
「え!それは、お客様の安全が最優先ですのd「貴方には聞いていないので、『黙っててください』」
僕は店員さんの目を見つめて魅了を全力でかける。全力といっても気分的にだ。だが見事に店員さんは白目を向いて倒れた。
僕はそのまま身体強化とゴブリンの腕輪の力を使って手脚の拘束具を破壊した。首はちょっと取りにくいから、お風呂で石鹸でも使って取る事にしよう。
「よし、これで君を縛るものはこの檻と僕だけだ。ここはお店のちょっと奥の方だし、君が暴れても直ぐには人は来ないよ。どうする?僕を噛む?それとも僕を主人と認めてくれる?」
「ガルァ!」
僕に襲いかかってきた。まあそりゃそうするよな。弱そうだし僕。でも今回は身体強化も使ってるし、加護も使っている。疲弊している狼程度に負けはしない…けど、僕は素直に腕を噛まれることにした。腕は身体強化してあるから少しめり込む程度だけど、ピリピリと薄い痛みが走る。まあ雷だからね。
「グウウウウ!!」
「ちょっとだけ痛いなぁ。」
僕は狼の頭を撫でる。暫くお風呂を入っていないのか、獣臭が割とする。だけどもっふもふで、さわり心地が良い。
「ギャウ!?」
「ちょっと離してくれない?」
「グゥルルル!」
「離してくれないなら、こっちもこうだ、撫でまくり攻撃!」
「ギャワ!?キャン!キャン!」
「よーしよしよし、よーーしよしよし。」
5分後
「グウウ…」
狼はだいぶぐったりしていた。相手がどれだけ強く噛んでも気にもとめずに撫で続けたからな。お腹も減ってるようだし、ちょうどいいかな。店員さんはまだ白目を向いているみたいだから勝手にご飯あげてもいいでしょ。
「ほら、僕の食べようと思ってたおやつ食べる?」
「ガウッ!」
相当お腹がすいていたのだろう。僕が出した串焼き肉にかぶりついている。さっきお腹を撫でた時に痩せているのは確認済みだ。どうせ僕が買うのだから、ご飯なんて今でも後でも変わらんだろう。暫く経ったあと。狼は落ち着いていた。
「あ、僕念話持ってたんだった。スキル『念話』これでいいかな?あー、あー、聴こえる?」
『おお!ご主人様の声が脳内に!ご主人様は念話を持っていたのですね!』
「そうだよ、…ところで、ご主人様ってことは僕は認められたのかな?」
『はい!私の攻撃をいとも簡単に受け止め、あまつさえ私を撫でるのを止めないという胆力!そしてご飯をお腹いっぱい食べさせてくださいました。この恩、頑張って返させていただきます!』
「はは、そんなのでいいんだ。」
『それに…あんなに暴れてもご主人様は受け止めて、撫でてくれるのでしょう?今までの人は暴れた私を無理やり押さえつけるような方々でしたので…』
んー?この狼、知能が高過ぎない?ただの狼では無さそうだけど…
『ご主人様、それは、私が雷狼の中でも上位の方だったからでしょう。』
「あれ、これは心の声も筒抜けなんだね。いやー恥ずかしいね。」
『大丈夫です!聴こえていても聴かなかったことにしますので!』
「そっか、ありがとうね…あーえっと、名前をまずは付けようか。」
『はい、私の名前は捕まった時に既に捨てましたので、ご主人様が名付けてください。』
う、うーんちょっと重い話だな。それにしても名前か、名前名前…
「えーと名前の候補としては、サンダー、雷、ナルカ、雷光とかなんだけど。やっぱり女の子だし、ナルカかな?狼っぽくないのは許して欲しいけど。」
『はい!私の名前は今日から『ナルカ』です!よろしくお願いします、ご主人様!』
僕はその瞬間、手元にスマホが出現し、ナルカのステータスが見れるようになっていた。
『称号 テイマーを入手しました』
ナルカ(57)Lv29
体力 750
気力 800
スタミナ 1200
魔力 850
天力 200
闘力 900
運 450
称号
雷狼王の娘
精霊の友達
装備品
隷属の首輪
バフ
雷狼王の加護
風の精霊の加護
スキル
雷狼魔法Lv9
雷魔法Lv7
風魔法Lv4
魔力操作Lv3
人狼化Lv1
念話Lv1
「うーん、強い…ね、うん。」
『ありがとうございます!』
僕は自分のステータスを一度見る。
鞘森 奏(15)Lv5
体力 250
気力 250
スタミナ 300
魔力 1300
天力 1200
運 2000
その後にもう一度ナルカのを確認する。
ナルカ(57)Lv29
体力 750
気力 800
スタミナ 1200
魔力 850
天力 200
闘力 900
運 450
「うーん、これ僕の弱さが一層際立ちそうだよね。レベルが低いのもあるけど、僕主人公なのに周りの方が強いし。」
『あ、ご主人様、言い忘れてました。』
「ん?何を?」
『我が一族の掟で、「一度主人と認めたものには忠義を尽くせ、だが主人が己より弱い時は殺せ、雷狼族は弱き者には従わぬ種族、それを忘れるべからず」だ、そうなのでご主人様が私より弱くなったりしたら一族の掟で殺しますので、よろしくお願いしますね、ご・主・人・様?』
「………まじでか。」
どうやら、僕は命を対価にこの子を手にしたみたいだ。辛い。
テストで遅れてしまいました。今回はおばあちゃんのリネ館長、世話焼きのオルガノ、そして可愛い狼、ナルカちゃんが登場しました。