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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ひめさまの唄

作者: かるぴすそーだ
掲載日:2017/06/28

「新生エルドラ王国の誕生を示す!」


壇上に立つ一人の女性。その女性は、ユリウス・アンデルセンといった。





断罪の時は訪れた。

王が主催する舞踏会の最後に、第二王子との婚約破棄が言い渡された。


「公爵家令嬢ユリウス・アンデルセンとの婚約を破棄する。理由は、商家の娘のメイラに数々の嫌がらせを働いたことである」


との理由だ。

ユリウスにはいじめていたという記憶はない。むしろ、関わらずにいたのだ。無関係を貫き通していたはずの自分が、なぜ断罪されるのかがわからなかった。


必死に抵抗してみる。


「待ってくださいまし。わたくしは何もしておりませんわ」

「嘘をつけ。証言と証拠は上がっているんだ。貴様の弟も、快く証言してくれたぞ?」


と、隣にいる弟は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


ああ、なんであなたがそちらにいるのか私は不思議でならないわ。なんであなたは王子側にいるの……?私には味方してくれないの……?


ユリウスが嘆くも、その心の声は聞こえない。


「よって、ユリウスとの婚約を破棄。そして、ユリウスの身分を剥奪とする」



というのは昔の話。およそ、三年ぐらい前の話だ。

ユリウスは、身分を剥奪されたあと、家から出て行かされた。父も母も心配そうな目で見ていたが、ユリウスは笑顔を取り繕い「大丈夫」だと答えた。


そして、今は子供向けの絵本を描いている。

運があったのか、ユリウスが描いた絵本は瞬く間に売れていた。絵本作家として巷で名を馳せていた。


「おお、アンデルセンさん。また飲みにきたの?」

「ええ。一番安い酒を貰えるかしら」

「相変わらず金ないのかい?困った人だな」


そう言いつつも酒場の店主は座るよう促す。

ユリウスは座り、店主が出してくれた酒を少しずつちょびちょび飲んでいた。


「あんたが描く絵本。あれうちの子も好きなんだよ。絵も綺麗だしストーリーもいい。あんな作品売れるはずだ。なのになぜ金がないんだい?売れるなら金が入るはずだろう」

「ええ。私の元には入るはずなのです。ですが、第二王子が慰謝料といって、私が手に入れるお金を奪ってしまうのです」


慰謝料は確かに払ってはいない。ユリウスは謂れのない罪で咎められたために、謝ることもなにもしていない。それが、気にくわないらしかったのだ。


「ひどいな。第二王子が跡を継いだらこの国は終わるんじゃないか」


国民の間では第二王子が国王を継ぐということを望んではいない。だが、第一王子はどこかへいったっきりで戻ってくる気配がないために、このままでは第二王子が皇位を継承する羽目になる。


そうしたら、この国は終わりを迎えるだろう。


「そんなあんたに免じて酒代は免除してやるよ。その代わり、面白い絵本をまた頼むぜ」

「ええ。期待に添えられるよう頑張るわ」


酒を飲み干して、酒場から出て行く。

彼女が向かうのは自分の家だった。自分の家で絵を描こうとする。酒場で案を思いついたため、それを描こうとしていた。


だが、それは叶わなかった。


家に帰ると荒らされていた。

そして、僅かな金もなくなって、絵を描くための筆やインクも全てなくなっていた。


「……そんなに私が嫌いなのか」


唇を噛みしめる。唇からは血が垂れていた。

荒らされている部屋の中に入る。紙が破られており、パレットも変な形になっていた。


彼女はその場で崩れ落ちてしまった。


「なんで……まだ、私をいじめるの。私は何もしてないじゃない……」


彼女の目からは涙が伝った。


扉が開かれる音が聞こえる。


「姉上」


弟のマベラスの声だった。

悲壮な眼差しを弟に向ける。

姉の絶望しきった顔をみた弟は、うっと言葉が詰まっていた。

そして、弟の第一声がこれだった。


「すみません。姉上。俺が止められず……」


ユリウスを抱きしめ、必死に謝っていた。

マベラスは肩に血がついていることに気づく。彼女の唇の血が肩に付着していたのだった。


その血を見たマベラスの堪忍袋は、とうとう切れてしまった。


「姉上。わかりました。不肖マベラスが、姉上の仇をとってまいります」

「や…めて」


ユリウスは必死に止める。マベラスの袖を掴んだ。

彼女は弟が何をするかを想像できていた。だから、弟には自分みたいな悲劇を送ってほしくないと、引き止めたのだった。


「ですが姉上。俺は限界です。あの王子様の側近として働いてはおりますが、姉上を謂れのない罪で断じたときから私はもう忠誠心はありません。俺は姉上に詫びたいのです。あのとき、助けられなかった。その時の詫びとして」

「いい。私は怒ってない。だからやめて。私みたいにならないで」


マベラスは、力を緩める。

姉の優しさに微笑んだ。


「わかりました。なら、この俺の怒りはどうしたらいいのでしょうか」

「…………」

「まあいいです。とりあえず、俺の方からまた筆とインクと机とかその他もろもろ寄贈します。ですが、バレると厄介なので買ったという体にしておきますね」


マベラスも、ユリウスと同様に優しかった。


「ありが、とう。あなたには感謝しきれないわね」

「これは私の贖罪でもあります。なので、感謝なんてものは無用です」

「いいえ。もうあなたは償っているわ。だから、私もあなたに何か返さないといけない」

「そうですか。なら、おひとつよろしいですか?」

「ええ。なんでもいいわ」

「俺の息子のためだけに、童話を描いてください」

「あなた、結婚していたのね」


ユリウスには初耳だった。マベラスが結婚しているという話を聞いたこともなかった。

自分はしたことがない結婚。そんな弟を少し羨ましいと感じていた。


「はい。報告が遅れましたが、俺は結婚しました。相手は侯爵家のリリー様です」

「あら、あそこの家はなかなかいいわね。いい人と結婚したじゃない」

「はい。ありがとうございます」

「これからも結婚頑張るのよ。私のぶんも幸せになってちょうだいね」

「姉上……!」


もう、ユリウスは幸せにはなれないことを悟っていた。ユリウスが生きていることで、不幸も付きまとってくる事がわかっていた。


マベラスは取り繕ったように笑う姉をみて、泣きそうになっていた。

姉はまだ自分を応援してくれている。自分が不幸でも人の幸せを願っている。つくづく自分は幸福者だとマベラスは思った。





マベラスが帰り、ユリウスはマベラスと片付けた部屋をみる。誰も住んでいないかのように何もなくなっていた。

布団もなく、食料はパンとチーズのみ。マベラスが置いていったお金しかこの場にはなかった。マベラスも普段はあまりお金を持ち歩かないためか、金もあまりない。


「……よし」


ユリウスはこれからのことを考えた。

この世界には魔物がいて、それを狩る冒険者もいる。だが、ユリウスには魔法は打つ事ができるものの戦うことはしたくなかった。


だけれど、この際仕方がなかった。


三年前に取った古い冒険者カードも掃除中に見つけていた。

それを持って冒険者ギルドへ向かう。


絵本を書く事ができない今は、冒険者という死と隣り合わせの仕事をしなければならなかった。


だが、それでも一日暮らせるかは危うい。


彼女はどこのパーティーにも属していないため、受けられるクエストには制限がある。

受けられるクエストはどうも低い依頼料しかなかった。討伐クエは基本的にパーティーのほうに回されるため、薬草採取などの簡単なものしかない。なので、そのぶん達成料も低いのだ。


「これとこれとこれとこれと……これかな」


だから、複数の依頼を同時に受ける。

採取系の依頼なら何件受けても構わない。これらは幾らあっても困ることはないからだ。


「すいません。このクエストうけたいのですが」

「はい。あ、アンデルセンさん。珍しいですね。取得してから一回も来てないんじゃないですか?」

「ええ。私あまり魔物とは戦いたくなくて」

「そうなのですか。まあ、あなたは絵本で稼いでますし、それも当たり前なのかもしれませんね。そんなあなたがなぜ?」

「お金がなくなったので稼ごうかと」

「ギャンブルに費やしたのですか?」

「国に取られました」


受付嬢は冗談交じりで質問したものの、返ってきた答えは予想外の答えで、なんて反応していいかがわからなかった。


「そ、そうですか。ちなみに今の所持金は……?」

「数千アルスにも満たないですね」

「…お金、貸しましょうか?」

「いえ、いいですよ。私に貸してもいつ返ってくるかわかりませんから」


先が見えないために、返すのは困難を極めるからだ。


「いえ、返してもらわなくてもいいですよ。その代わりと言ってはなんですが、新刊楽しみにしてますよ。私の甥っ子。楽しみに待ってるんです。アンデルセンさんの新作でないのかと。いい歳して読んでるんですよ。笑えますよね」

「はは。私の作品は子供向けに描いてるつもりなんですがその人も子供なんですかね」


少し、嬉しくなったユリウスは冗談を言った。


「そうかもしれませんね。はい。では、健闘をお祈りしています」


クエストを受注した。



薬草採取が終わったのは夕方だった。

昼も何も食わず、ただひたすら薬草を採取していた。おかげでユリウスの腹が鳴る。

だが、食料はあまりないために、食わないことにした。


「今日は我慢。今日は我慢」


二日に一回食べればいいと考えた。

だから、今日は何も食べないでいようと決意した。だが、空腹には逆らうことはできず、冒険者ギルドの机から動こうとはしなかった。


お腹の音が鳴る。


お腹を抱えてうずくまった。


「水だけもらおうかな。これは大丈夫なはず。すいません、お水ください」


お水を注文すると、すぐにくる。

お水を飲み干し、また、その場にうずくまると、何かを隣に置く音が聞こえた。


隣を見てみると、誰のかわからない焼いた肉が置いてあった。


焼かれた肉の香りが鼻腔をくすぐる。

口の中が食べてもいないのによだれに塗れていた。


「そういえば、もう何年も肉を食べてないわね」


ユリウスはさらにお腹が減った。

目線は肉から外れない。肉に視線が固定され、動かせないでいた。


ちょっとだけ。ちょっとだけならバレないだろう。

手を伸ばす。でも、その手を自分で叩き止めた。


(これは人の……。とったらダメ。国みたく泥棒になる)


涙ながらも我慢する。


「食えよ。俺らからの依頼料だよアンデルセンさん」


と、隣から声が聞こえる。

冒険者のみなさんだった。


「……い、いいんですか?」

「ああ。もともとあんたのために買ったんだし、食えよ」

「あ、ありがとう…ございます」


と、肉を自分の元へ手繰り寄せ、ナイフで小さく切って口に運ぶ。


……おいしい。


美味しいと思ったのは三年ぶりだ。

肉なんて食べれなくなり、食べる機会はなくなった。懐かしい味をゆっくりと噛み締めながら、味わって食べる。


「おい…しい……」


彼女の目からは再び、涙が溢れた。


「おおう。泣くほど嬉しかったんだな!」

「ありが……どう……ございまず……」


一口、また一口と口に運ぶ。

涙を流しながらも食べる手は止めなかった。不恰好に鼻水が垂れ、涙声になり、ひたすら「ありがとう」と述べながら肉を完食した。


「ありがとう…ございました」


改めて礼をする。


「良いってことよ」

「この借りは、いずれ返します」

「気にすんな。それは俺たちの情けだからさ」

「なさ…け?」

「俺たちはあんたに同情してんだ。受付嬢から話を聞いて、俺たちがなんとかしねえといけねえって思った。国に金をもぎ取られたなんて、可哀想としかいえねえよ」


冒険者たちは同情の視線を向けていた。


「そしてその肉は、あんたの未来投資だよ」

「……?」


なにかわからないユリウスは首をかしげた。


「この国は腐ってる。あの第二王子が皇位を継承間近だ。たちまち、この国は廃れていき、国民もいずれかは君みたいになる。俺らはあんたならそれを止めてくれると信じてるんだ」

「……そんなの、私には無理です。私は、身分もなにもありません」

「身分とかそういう問題もある。だが、こっちには王に対しての切り札がある。それを、今使ってこの国を終わらせる」

「終わらせるって……」

「終わらせたら、新しい王にはあんたがなってくれ」


と言い残して冒険者のみなさんは去っていった。





王宮では、退屈そうにメイラが退屈そうに寛いでいた。


「ねえねえ、カディス。私いいこと思いついた」

「なんだ?」

「あの女をいっそ処刑しちゃおうよ。もう、何もかも奪ったんだしいいじゃん」

「そうだな。メイラをいじめたやつは全て排除しないとな。マベラス。こい」


カディス殿下はマベラスを読んだ。

マベラスは、嫌そうにかけていく。


「マベラス。あんたの姉のユリウスを処刑しろ。これは命令だ」

「……はい」


逆らえなかった。はい。としか頷くことしか出来ず、また外に出ると爪を思いっきり噛んだ。

マベラスには逆らう勇気はない。だけど、姉の処刑なぞする勇気はもっとない。


マベラスは悩んだ。悩んだ末に取った行動は。


「マベラス。どうした?」

「……死ね。カディス」


マベラスは剣を構える。

主人に剣を向けた。カディスは動揺し、ベッドの後ろに隠れる。

マベラスは、カディスよりも剣は上手い。カディスが練習してないというのもあるが。


「ど、どうしたのマベラス。憎いんじゃないの?あの姉が」

「うるさい。俺はお前らの味方だった。だが、あの断罪の時目が覚めた。やっぱ、お前らはクズだ。だから殺す。俺も処刑される覚悟の上だ」


もう二度と姉の絶望した顔を見たくない。


それだけが理由だった。


「て、敵襲ーーー!」


カディスが叫び、兵士が部屋に集まる。

そして、数人がかりでマベラスを抑え、マベラスは投獄された。




牢獄にいるマベラス。もちろん、死刑となった。暗殺未遂であと数日後には死刑となる。

その猶予を寒い牢獄で待っていた。


「姉上。すみません。俺が不甲斐ないばかり」


誰もいない牢獄で姉に対して謝る。

その時、足音が聞こえた。カツンカツンと誰かが歩いてくる。夜遅い時間だが、誰なのだろうか。


「マベラス・アンデルセンだな」

「は、はい。そうですが。あなたは?」

「私か?私は…マグルだ」


マグルと名乗る男は、年老いた感じでもなく、若いという感じもしなかった。


「マグルさん。マグルさんは俺に何の用ですか?」

「いや、君にも伝えておこうかとおもってね」

「なにを?」

「この国を終わらせるってことを、ね」






夜が明けた。

ユリウスは朝早く目覚め、川で自分の身を清める。そして、家に戻ると手紙が届いていた。

内容はというと、王城へ来い。とのことだった。

王家からの手紙であり、強制力がある。重い腰を上げて、正装に着替えた。

正装といっても、薄汚れたドレスだが。


「行きたくないわね」


そうこぼして、王家の馬車に乗る。


王城につくと、なにやら慌ただしかった。

ユリウスは群衆をかき分け中に入る。謁見の間の前につく。


「ユリウス・アンデルセンです。失礼します」


名乗って中に入ると、そこには昨日の冒険者がいた。

冒険者の隣には、縄で縛られたメイナと第二王子のカディス様の姿がある。王も縛られ、王妃も縛られていた。


「な、何事!?」

「よくきたユリウス!この縄を解け!」


ユリウスを見つけたカディスは叫ぶ。だが、なにが起きているかわからないユリウスはカディスに近寄ることはなかった。

そして、全員が揃ったとわかった冒険者は大きな声で言い放つ。


「本日集まってもらったのは他でもない。大事な話があるからだ」


謁見の間の外にも聞こえるように拡声魔法を使って冒険者は言う。

それはもう、この国を揺るがすようなことをいった。


「この国、エルドラ王国は、本日をもって終わる!国王であるランティース・エルドラ、第二王子のカディス・エルドラ、王太妃メイナ・シュヴァルセンの身分を剥奪する!」


とのことだった。

そして、まだまだ続く。


「そして、新生エルドラ王国の新たな王は既に私が決めた。そこにいる、身分を剥奪された公爵家令嬢、ユリウス・アンデルセンだ!ユリウス・アンデルセン。前へ」


何が何だかわからないユリウスは前に出る。

そして、壇上に上がると冒険者から王冠を頭に乗せられた。

王冠の重さに思わずぐらついてしまう。


「おっと。重すぎたかな?」

「い、いえ。と、戸惑ったるだけよ」

「すごい戸惑いっぷりだな」


冒険者は笑う。


「今ここに、新生エルドラ王国の誕生を示す!」


と、言うと、拍手が舞った。


「じゃ、そういうことで、こいつらの処分はあんたに任せるよ。あと、あんたの弟さんの処分もな」

「なにかしたの?マベラスが?」

「カディスに剣を向けたそうだ」


冒険者は説明をして、去っていってしまう。

みんなの注目が集まりユリウスは緊張しながらも前を向く。そして、拡声魔法を使用する。


「えー、私が国王として……選ばれて……とても驚いています。私で本当にいいのかという不安があります。なので、私が間違っていたら皆様は私を正してください。逆に私も皆様が間違えていたら正します。私はこの王国を任された身として……」

「かったい挨拶はなしにしろー!」

「早くそいつらの処分を!俺たちはあんたの王に賛成だからさ」

「前置き長えよ!あくしろよ!」


ヤジが飛んでくる。

ヤジにため息をついた。


「わかりました。では、処分を言います」


ユリウスがそういってカディスとメイナの方を向く。

カディスとメイナは分かっているだろうなと言いたげな視線でユリウスを見ていた。


「えー、まずはカディスとメイナの処分から。カディス、及びメイナ。あなた方の希望はありますか?」

「ある!文句もあるぞこの野郎が!」

「そうよ!なんであんたみたいなブサイクなやつが王になるの!なら美しい私が王になるべきじゃない!」


喚く二人。

呆れてものがいえなかった。その二人にため息をついて、静かにしろと一喝を入れる。


「二人の処分を決めた。私は鬼ではなく人である。私も冒険者の皆様や数々の人に情けを頂いた。だから、私は処刑はしないと誓おう」


処刑はしないというと、二人の顔色は少しよくなった。だけれど、次の言葉でまた、顔色は悪くなってしまう。


「二人は、はるか北部の国、パルフィード帝国に追放とする。この国に足を踏み入れることを禁じ、踏み入れた瞬間に罰する」


処分を下すと周りから歓声が起きた。


「そして、ランティース王。あなたは身分を剥奪し、奉仕活動を命ずる」


ランティース王はいい政治を敷いていた。悪いのは全てカディス様にある。横暴さが、この悲劇を呼んだのだ。


「その程度で済むとは……。ありがたき幸せ」


あとはマベラスだけとなった。

マベラスは兵士に捕らえられ、座らされている。縄で縛られているため身動きが取れていなかった。


「そしてカディスに剣を向けたマベラス。あなたは身分剥奪し、奴隷とします」


マベラスは絶望の顔に染まる。

さらに、ユリウスは続けた。


「奴隷とし、私に仕えなさい」


というと、マベラスは涙を流していた。

そして、大きな声をあげ、喜んでいたのだった。


こうして、エルドラ王国は幕を閉じ、新生エルドラ王国は旗をあげた。









あれからのこと。

カディスとメイナはパルフィード帝国でひっそりと暮らしているらしい。商会を立ち上げるも数日で潰れたという話がある。


そして、ランティース王は庶民として無償の学校を開いて学べない子供たちに勉学を教えているらしい「


マベラスはユリウスの右手となり、必死に国を守るため奔走しているとのことだ。


そして、ユリウスはというと。


「また絵本を描いておられるのですか?」

「ええ。趣味になったのよ。さ、新作ができたわ。これを発売よ!」


絵本を掲げる。


「題名、なににするんですか?」

「うーん。なにがいいかしら」


絵本を眺めて、悩んでいた。

そして、思いついたように顔を明るくする。


「そうだ。決めたわ」

「はい。なんでしょう」




「この絵本は、ひめさまの唄よ」






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