ステップ・スカイ
意欲作!
暑く寝苦しい季節、ネトゲーを終えて夜中の2時を回ったあたりに、俺は腹が減ってきたからコンビニに行こうと、財布とスマホを持ってアパートの玄関を開けた。一階の駐輪所に行き自転車にまたがると、俺は猛スピードで自転車をこいだ。
角を曲がったとき目の前に少女がいたので急ブレーキをかけ、不審に思って自転車からおり少女に声をかけた。少女はしばし無言で立っていた。
少女は見た感じ10歳前後だった。おかっぱ頭で白いワンピースを着て、肌は色白く眼はクリッとしていて、かわいい出で立ちだった・
こんな夜中に子供が一人でいるのは危険と思った、俺はすぐさま警察に通報しようとスマホの画面をタップした途端電源が落ちた。充電は満タンのはずだったのに、だ。
「……それ使えないよ」
「お嬢ちゃん、パパとママはどこにいるのかな?」
「……」
少女はまた硬く口を閉ざして無言で俺をもの悲しそうに見つめていた。とりあえず俺は交番に少女を連れていくことにしたが、少女は動こうとしない。
「……あたし動けないの。ずっとこの場所に隔離されているの」
意味が分からなかった。彼女は外にいるのに隔離されていると言い出したからだ。ますます不審に思った俺はもう一度スマホで警察に通報しようとしたけど何回も電源ボタンを押すも起動しなかった。
「……あたしね、幽霊なの」
「はっ?」
俺はにわかには信じがたいが、次の瞬間信じるしかなかった。
「君、誰と話してるのかね?」
巡回中の警察がきて俺に職務質問をしてくる。俺は手をあたふたさせながら慌てて身の潔白を証明しようと口走った。
「いや、この子が一人でいたもんだから警察に通報しようとしていただけなんです」
「……どこに誰がいるのかね、君一人しかいないんだが?」
「え、だってここに……」
「……ほかの人にはみえないよ」
俺は息をのんだ。そして冷や汗がどっぷりにじみ出てきた。幽霊を見ているんだと実感したからだ。警察には適当なことを言ってその場をごまかした。
「えー、あーその……コンビニに行く途中でした。すいません」
「一応ね、住所年齢とか聞くけどいい?」
「はい。名前は天海タイト、年齢は27歳……」
俺は警察の職質に淡々と答えていく。警察は一言注意してパトカーに乗り行ってしまった。俺はとにかく恐怖のあまりその場から逃げ出したかった。
「スカイ、それがあたしの名前。隔離されているの、助けて」
「隔離ってなんだよ?」
「呪縛みたいなもの。あたしはこの場所から動けないの、あのバーストによって」
少女が指さす方向にスゲー化け物がいた。頭には角がはえていて全身がどす黒く、目がらんらんとしており、牙がはえていて獣のような出で立ちだった。
「あれと戦って。倒せたら私はここから解放されるから」
「唐突だな、オイ! そんなん無理だわ。ゼッテー殺されちまうよ。あれか少年漫画みたいに俺は特異点か?」
「そう。あたしが見えるんだから」
「俺は知らねーよ」
とっさに自転車にまたがりその場を離れようとしたが、ペダルをこげども一向に前に進まない。
「あなたもあのバーストによって隔離しはじめたのよ。あいつを倒さない限りここから動けずしだいに霊体になっていくわ。戦うか、それともこのまま死ぬかよ?」
鋭い目つきでスカイは俺にピストルみたいなのを渡してきた。このままじゃ本当にバーストという化け物に霊体にされかねなかったので戦う決心をした。
「それは、唯一バーストを倒せる武器“スピリットガン”よ」
渋々そのピストルでバーストと戦うこととなった俺は乱射しまくる。バーストはダメージをくらうたびに、その部分が消えていった。まんざら戦えないわけではないらしい。そして最後の顔面を狙い撃ちしようとしたとき、バーストはイタチの最後屁をかましてきやがった。
その攻撃に俺は右腕を骨折されちまったが、どうにかバーストを倒すことに成功した。そして肝心のスカイはというと隔離状態から動けるようになったらしく、今までとは打って変わって子供らしい天真爛漫な笑みを浮かべて天へと昇っていった。
「そうだ、あたしのように隔離されている霊体はまだいるの。その人たちも助けてあげてね。ありがとうお兄ちゃん」
俺はそのあともバーストと戦い続ける運命を背負わされた。まあ、そのほうが刺激的で楽しい毎日になるか。そうそう俺はニートだ。
読了感謝!