~耳に~
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ざわざわと、胸が騒いだ。
ゆっくりと、執務室の方に歩いていきながら、再度、食堂の方を振り替えった。
「・・・。・・・。・・・」
食堂の近くには、訓練場が見えた。
あ、そう言えば、副隊長結局食事してないよね・・・?
何か持って行った方がいいのかな?
そう思いもう一度、食堂の方に歩き出した。
マリエーロの事だから忙しいからと言って再度、食堂まで来て食事をしようとは思わないかもしれない。
食事を抜いている事が多々あるようだし。
そんなことばかりじゃ、身体を崩してしまう。
そう考え、なにか手軽に食べれるものを貰ってこようと来た道を戻る。
べっ、別に食堂が気になった訳じゃないからね!
あのまま、放置してきたから、備品が気になった訳じゃないからね!
さすがに、さすがに、皆が皆・・・脳筋ばかりじゃないはずだ。
扉を開けるとそこは・・・。
嬉々とした乱闘世界でした。
窓のガラスは割れて・・・。
『ふざけるな!グイル!』
『はっ!弱虫がっ!』
食堂の椅子は壊れ・・・。
『おっしゃ!やれ!』
『お前むかつくんだよ!』
『俺の筋肉本盗みやがって!』
花瓶は床に落ち・・・。
『イリヤは俺と付き合ってたんだ!』
『隊長をなんだと思っている!!』
『お前は生意気なんだよ!』
『おっしゃ!今日の賭けは俺の勝ちだー!!』
ミチ先輩と小物騎士を筆頭に、乱闘が繰り広げられいた。
おーい、おいおいおい?待てよ?
少しずつ少しずつ、頭に蓄積されたように血管が沸騰していく。
飛び散る血飛沫と食品。
拳を振り上げる生々しい音。
椅子や備品が投げられ飛び交い。
破損が少しずつ増えていく。
ふふふふふ?
額に浮かんだ血管が今にもぶち切れそうだ。
自分落ち着こう!
自分は見た目子供だけと、中身は一応は大人だ。
キレちゃだめだ。
キレちゃだめだ・・・。
キレちゃだめだ!!
平常心平常心平常心平常心平常心平常心。
ゆっくりとカウンターに近づき自分を落ち着かせるように厨房のおじさんに
「なんか、副隊長が軽くつまめるものありませんか?」
「え?あ・・・。そうだね・・・。けど・・・この有様では・・・」
何とも申し訳なさそうに笑う厨房のおじさん。
「・・・そうですか・・・」
いや、分かっていた。分かっていたが・・・。
ふ、自分が悪いのだな。
全ては自分が悪い。
やはり、全ては起きる前に終結させるべきなのだな。
パパさん、ママさんごめんよ。ボイス家家訓を、ある意味ないがしろにしてごめんね。
いらない家訓だけど、今は、今だけは・・・っ!そう思ってしまっちゃったよ。
少しでも脳筋ばかりではないと、騎士団が戦闘ばかりしている訳ではないと、自分の内なる自分が目覚めることを恐れた敗因だったのだろう。
あは、なんか色々と振り切れそうだ。
本当にっ
「なーにーしてるんですかぁあ?みーちーせーんぱぁい?」
ねえ?自分言ったよね?備品壊すなって!あぁ?!
「へ?ひぃー!?」
ミチの顔が一瞬で蒼白になった。
「あ・・・。餓鬼っ!」
それに、気付いた小者騎士が、邪魔するなというように声を荒げた。
その時飛び交っていた椅子が
「あ、あぶね!」
騎士団の一人が慌てたように言ったが間に合わずに、チェリーに直撃した。
首が変な方に曲がった。
「・・・。・・・。・・・」
それまでの、乱闘が嘘のように、静まり返った。
避ける事は出来た。
ただあえて、避けなかった。
そう、あえて。
「お、おい・・・大丈夫か・・・?ちびすけ・・・?」
誰かが、心配するように言った。
誰かののどの鳴る音がした。
誰かが・・・。
「あーあ、いったいなあー?チョー痛いなー、すっげー痛いなー、備品壊れているなー、経費が―いるなー、予算配分大変だなー、書類作成が大変だなー、上に頭下げるのチョー大変だなーあーぁー、あーぁー」
首を戻しながら無機質にそう言うと、そばにいる厨房のおじさんから脅えたような小さな悲鳴が聞こえた。
それを目端でちらりと見て、またミチ達に向き直った。
その拍子に眼鏡がゆっくりと落ちて行った。
誰かが息を飲むような音が聞こえた。
ああ、世界はやはり眩しくて見えない。
まあ、見えなくても気配で動けるが。
どんなに、ミチ達が蒼白になって行ってもこれじゃ見えやしない。
どんなに、自分が顔をしかめても眼鏡がなくちゃ見えにくい。
どんなに脳筋達が反省してようと今さらもう見えない。
なーにも、見えやしない。
「え?ぶ、ブサイクっ・・・?」
いや~はははは。ミチ先輩なんて言ったのかなぁ~?
「あーぁー、言っちゃったですよね?言っちゃったですよねーぇ?」
まあ、自分が十二分に分かっている事なんだけどね?
ゆっくりと落ちた眼鏡を拾い装着する。
デリカシーすらないのかねえ?
本当にっ!!!
誰かの息を飲むような悲鳴が聞こえた。
確かに、自分の中で何かの切れる音がした。
「ふっざけるなあぁぁぁ!!仕事増やしやがってっ!いい加減にしろよぉおおおーーーブッサイクで悪いかあぁぁぁーーー脳筋どもがぁぁあああぁーーーーーーっ!!!」
「ひぃーーー!!!」
「うぎゃー!!!」
「ちびが切れたーーー!」
「誰がちびじゃーーーい!!!ごらぁぁぁあ!?」
阿鼻叫喚。
我に返った時は、食堂のすぐ横の訓練場の真ん中で立っていた。
周りには先ほど食堂にいた脳筋どもが屍累々と落ちている。
手にはいつもの分厚い本の装備品が、血濡れの本と化していた。
「・・・」
額から汗が一気に噴き出してくる。
えーと、えーと、えーと・・・っ!えぇ!?
地に伏す名もなき脳筋騎士と目があった。
その騎士が、脅えた顔・・・ではなくものすっごく良い顔で
「ちびすけ、いい・・・ファイトだったぜ!・・・」
親指を立てて、地面に伏した。
「・・・。・・・。・・・」
やべっ。やっちゃった☆
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