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吾輩は厄介者である

「君、騎士団に配属ね・・・!」



 そう、広大な王城の端に位置する文官塔の一室に呼び出されて、そう言われ、それを告げた上司は早々にいなくなった。

 え?ちょっ、ちょっと?!意味がわかりません!!

 放心状態でその話を聞いていたチェルリは、その上司に返答する暇などなく、上司が逃げるようにして、その場を出て行った。

 何故か、と聞かれたら、多分厄介払いでしょうね!

 5歳に、話が通じるとも思っていないのかもしれない。

 いや、普通の5歳なら、通じないだろう。

 だが、そもそも、試験に受かる事もなかっただろう。

 そう、ため息を吐きながら、チェルリは分厚いメガネの柄を上にあげて、位置を戻した。

 チェルリだって、たとえ転生して、転生前の記憶があったとしても、ここは明らかに、日本とは違うファンタジーな世界。5歳で、国の機関の試験に受かる事などできないだろう。

 だがしかし、あの両親だ。

 あの両親のおかげで、自分は、試験を突破することができた。

 教育ママのおかげです。

 ありがとうございます。

 ただ、もう少しお手柔らかにしてほしかったです!!切実に!!!

 いいのか悪いのか、今一分からないが、いや、両親がこの歳でいなくなって、生きていけるかと言われたら、普通は一人では生きていけない。

 そう考えると、あながち、あの両親の教育方針も間違っていないのかもしれない。

 いや、ある意味ね、ある意味!!!ここ間違えちゃ駄目!試験にでますので覚えておいてね!

 って、試験ってなんだよ!って、自分で、自分に突っ込み入れてみる。

 ここでの常識が、分からないが、いや、かなりおかしかったかもしれない。

 周りの反応とか・・・。

 そんなことを考えていると


「うわー、まじで?本当にこの子なの?てか、何歳よ?この子、子供でしょ???」

 心底、驚いたというような雰囲気で、部屋に入ってきたのは、笑顔が似合うさわやか系のすらっとした、男性だった。

 この男性は騎士団の人なのだろう。腰に剣がさしてある。

 今後上司になる人だろう。

 ある意味初めは肝心である。

 なので、きっちり挨拶は致します。

 表面上はきっちりと!

 内面が、残念なのは、許してほしい。

 人見知りなので慣れるまで、ぎこちないはずだけどね!

「初めまして、私、チェルリ・ボイスと言います。これから、お手数をおかけすることもございますが、なにとぞご指導の程よろしくお願いいたします」

 そう言いながら、しっかりと頭を下げる。

 その様子に若干たじろいだように、

「えーと、あ、うん・・・。マリエーロ・シャフルです。副隊長を務めています。よろしく・・・」

「はい、よろしくお願いします」

 再度きっちりと、お辞儀をする。

 そうすると

「・・・。君、何歳なの・・・?」

「今年6歳になります」

 まあ、まだ誕生日になってないので5歳だが、ちょっとサバ読んで言ってみました。

 だって、あまりにも若すぎると、ね・・・。

 まあ、サバ読んでも若すぎだけね!。

「6歳・・・。まじで・・・?」

「はい」

 疑うように見てくるのは、見た目と年齢が合わないからというではなく、単に、確認のようなものだろう。

 たんに、そんな若い年齢で受かるなんてというようなもの。

「君貴族・・・?」

「いえ、平民です」

「・・・。ねえ、君、本当に、仕事できるの?」

 かなり引きつりながら、続けざまに、質問してくる。

「失礼ですが、本来私は、文官志望だったのですが、騎士団に配属されたという事は、そういった文官系の仕事ではなく、騎士としての仕事をするのでしょうか?」

 さっき配属先の変更を聞いたとき、それを考えたのだが、相手は、早々に、出て行ってしまった。

 あの禿おやじ。ちゃんと与えるべき情報すら、がん無視で、逃げ出しやがって。

 確かに、言っちゃなんだけど、騎士団で、騎士見習いやったって、自分だったら、難なくこなせる自信はある。

 うぬぼれじゃなくてね。

 周りから見たら、そうは見えないだろうが・・・。

 実践的にも、形式的にも、剣も武術もそのほかの得物でも。

 人となりパパさんに教え込まれている。

 だからそんな心配はいらないのだけれど、平和な生活がしたくて文官になったはずが、配属されたのは、血みどろに近い騎士団。

 あれれれ?、なんでこんなことに・・・?

 まあ、今までよりは、血なまぐさくないでしょう!

 常に熱血戦闘狂な両親に比べたら。

 あ、目から汗が・・・。

「あー、多少は、騎士の仕事があると思うけど、多分90パーセントぐらいは、書類整理だね。隊長がね、書類整理が苦手な人だから。ほぼ毎日書類とにらめっこだね。内勤ってやつかな?」

 内勤!

 やった!

 ようは騎士団の内の書類整理係ということになる。

 という事はある意味文官と同じような事。

 ちょっと、違う方向に向いたかも?と思ったけど、書類整理なら、対して、変わらない。

 血みどろも、遠のくはず!

 そうだよね?そうあってほしいよ!!切実に!!

「あーけど、君、本当に試験受かったの?その年で?」 

 どうも信じられないという様に聞いてくる。

 まあ、確かに疑いたくもなるよね~。

 だって、子供、幼児だし。

 それに、どうやら、自分は普通より、身体の成長が遅いらしい。

 というか、儚げママさんも成長が遅かったらしいから、そこに似たらしい!

 だが、しかし・・・顔はまったく似てないけどね!

 だから、パパさんに似たかというとそれもまた、似てないらしい・・・。

 と、他から言われた。

 そして、悲しい現実も・・・。

 まあ、それは後ほど説明するとしよう。

 ああ、また、目から汗が・・・っ!

「ええ、受かりました。ですが、信じられないのもまた自覚してますが、なんだったら、何か試験でもしますか?」

「うーまあ、不正はないだろうから、まあ、書類整理してみればわかるか・・・」

「よろしいのですか?」

「うん。いいよ。それに、いつまで、もつか分からないしね・・・」

 最後の方は、チェルリに聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。

「にしても、すごいね。6歳で試験通過なんて、頭いいんだね~」

「母親が教育熱心だったもので・・・」

 遠くを見る。

 あの人の教育の熱心さ。それは戦闘をしているときと酷似していた。

 教育も熱血戦闘狂でした・・・っ!

 ああ、なんか目から目からっ・・・!

 そんな姿に、あ、この話はNG?な雰囲気を嗅ぎとったマリエーロは、他の話題に変えた。

「にしても・・・、ボイス君は文官希望だったんだよね~」

「はい。文官希望と、試験の時書いていたのですが・・・」

「そうなんだね~」

 話しながら、文官塔の廊下を抜けていく。

「はい」

 淡々と歩いていく、マリエーロの後ろをチェルリはついていく。

 なんだかんだとマリエーロはチェルリの狭い歩幅に合わせて歩いてくれているのだろう。

 速度は、とてもゆっくり歩いていた。

「なんだかんだいって、君、最年少で、試験に受かったんだよ?本来なら、かなりの優遇や期待がされるはずなのにね。こっちに配属されるなんて思ってなかったでしょ?」

「はあ・・・」

 いや、もしかしたら、受かったけれど、なかったことにされるかもしれないとは思っていた。

 だって、平民ですから。貴族ではありませんから、そこはひねりつぶして、通らなかったことにできる。

「はっきり言うと、前から、誰か一人書類整理できる人間をまわしてくれって申請していたんだよねえ。何人か来たんだけど、やっぱりね~ははは・・・」

 それは、まあ文官の人間が騎士団の内には入りたくないし、違和感半端なかったんだろう。まあ、色々あったのはマリエーロを見ればなんとなくわかる。

 何とも言いにくそうにしていた。

「そうですね、やはり頭脳を主体にする文官と、身体を主体にする騎士団ではどうしてもという事でしょうか」

「そうだね、長く続くことはなくてね。今回は、多分それを踏まえてもいるんだろうと思うよ。子供の方が、適応できやすいしね。それに、貴族なら、そのまま文官のままだったんだろうけど、失礼だけど君は平民出身だし、騎士団の方にまわしても、誰か文句を言う後ろだてがいないという事もあったんだと思う」

 やっぱり、貴族と平民の扱いという事なのだろう。

 まあ、考えていた通りでもある。

「まあ、ぶっちゃけ、誰もこっちに来たがらなかったから、新しい問題なさそうな、使い勝手のいい子供をまわしてきたってことだね~」

 ハッキリ言って来た。

 まあ、要するに

「君にとっては厄介払いされたという感じかな」

 この場合、どっちもどっちだったりするだろう。

 騎士団は多分厄介ごとが多々あるのだろう。

 そして、騎士団にとっても、チェルリは厄介ごとでもある。

 たとえ能力的にも、上位を示したとしても、それは、貴族であれば、期待も優遇も受けやすいが、平民となると、厄介だ。

 貴族の上に平民がいるなど、そのような者は、貴族社会では許しがたい事なのだろう。

 そうなると、出世コースからは、早急に外さなければならない。

 そうなれば、騎士団という、文官とは対立した位置に、隔離のようにおしこめばいいのだ。

 現に、人が足りていないのだから。

 まあ、どっちにしろ、チェルリにとっては、

「どこだろうと、仕事ですから」

 そう、仕事なのだ。

 配属されたのが、騎士団だろうが、その内容は内勤の書類整理。

 大変だろうが、望んだことと同じ仕事内容。

 血みどろではない仕事先なのだ。

 たとえ、周りが、血みどろな仕事を、外でしていようと、関係ないのだ。

 とりあえず、この仕事内容はまだ、大丈夫なのだ。

 辞めることは今のとこ考えてない。

「さあ、ボイス君。もうすぐ騎士団塔の区域に入る。その中にも、色々と隊に分かれているから、気を付けてね。違う隊の場所に入ったら、速攻で、ミンチになるからね」

 ミンチ・・・。血みどろな世界だ・・・。

 あれ?なんか、考えが甘かっただろうか・・・。

 いやいやいや?

 まあ、ヤラレルことはないでしょう。

 ボイス家家訓。

 やられる前にやれ!

 我が家の家訓に基づいて、鍛えられているので。

 あれ、しっかりかっちり遺伝と、教育と洗脳がきいている!?

 いろいろとやばくない?!

 全然、縁側でお茶すすって平和な生活じゃなくない?!

 まずは自分の、認識改善しなくちゃやばくない!?

 無意識って恐ろしい!!

 けど、けど、身体なまったらいろいろとやばいので、書類整理が仕事になっても、身体などは、今まで通り維持し、高めることはする。

 今は、必要ないけれど、人生何があるか分からないのです!。

 まあ、両親に恨み、つらみを持った、まのつく方々が復讐に来ないともしれないので・・・。

 あれ?なんだか血みどろ・・・な世界しかないのか!?


 厄介だ、どこに行っても厄介な世界しかないのか!?

 平和な世界カモーン!!

 


読んでくださりありがとうございます!

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