きみの上着。
季節はまだ春になったばかりで、肌寒い。
少し薄着しすぎてしまったと、後悔した。
「寒いね…」
そう口に出すと、隣にいたきみが
自分の上着を手に取り、私の肩に掛けてきた。
「やだ、いけめん」
「あはは、やってみました」
「貸してくれるんですか?」
「こんなので良ければ!」
「わーいありがとー」
照れ隠しにいつも通り軽口をたたいてみる。
本当はきみの上着ってだけで嬉しくて
照れながらしてくれた行動が可愛くて
表情の緩みを抑えられないくらい、
体以上に心が温まっているのをきみは知る由もない。