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8話『再戦』
その後、俺はできる限り働くようにした。
ポケットティッシュを配る仕事なり、イベントスタッフなりを。
だが、借りていた金を返すのに結局は溶けてしまう。
「はあ…………たまんねえな」
「それはマスターの行いが悪いです」
既にあの女と戦ってから1ヶ月ほどが経つ。
今でもあの感覚は忘れられない。
――――死の瀬戸際。
思い出すだけで背筋がゾクッとする。
もしあそこで逃げられなければ死んでいたんだという事実はトラウマレベルだった。
「どうすっか」
「とりあえず、魔法が使えないことにはどうしようもありませんね」
「じゃあ強盗でもする?」
「それは最終手段ですよ」
おい、神の手先よ。
そんな悪行認めていいのかよ。
思わずため息がこぼれる。
時刻は夜10時。
明日も駅前のポケットティッシュ配りが昼からある。
とりあえずテラフィーの弁当だけでも食って寝るかと思った瞬間、家のベルがなった。
「こんな時間に誰だ」
「借金取りですかね」
そんな訳無いだろ。
俺は軽く笑いながら扉を空けた。
それが間違いだった。
「――――こきげんよう」