長谷川4
のん・あるこ〜る 第8話
長谷川4
「おぉ、お帰り舞子。」
家に学校から帰ると懐かしい声が私を呼んだ。
「お・お兄ちゃん!!」
「おひさ〜。」
ほぼ半年ぶりになる兄の姿がそこには会った。
「どうしたのいきなり。家出て行ってから全然帰ってこないから心配してたのよ?」
「はいはい、悪かったって。ちょっとお前に頼みがあってな。」
「頼みって?」
すると兄は頭をかきながら何て言おうか少し迷ったようにしていた。
「もう、なぁに?ちゃんと言ってごらんよ。」
「・・・だな。実はちょっくら貸して欲しいものがあるんだ。」
「え?」
「ふぅ。」
レジの精算を済ませバイトの全ての仕事を終えた私は
イスに座り込んでため息をついた。
何で兄はいきなり帰ってきたと思ったら、あんなものを借りていったんだろうな。
「長谷川さん。」
「あっ神原さん。お疲れ様です。」
神原さんはいつもの笑顔で私に近寄ってくると
私の前の席に上品に腰を下ろした。
長身でがっしりとした彼は何をしても様になる。
「そういえば長谷川さん誕生日が近いんだって?
さっき小耳に挟んだんだけど。」
神原さんの口から私の誕生日なんて言葉が出るとは思ってなかったので
私は少し驚きながら答えた。
「あ、はい。明後日なんです。」
「へぇ。そうなんだ。それならさ、その日はお祝いしなきゃだね。
ご馳走させてよ。可愛い後輩の誕生日なんだからな。先輩として。
僕が車で迎えに行くし、店も予約しとくからさ。」
「あ、え・・・と・・。すみません。その日はちょっと約束がありますので・・。」
「そっかぁ。じゃあその予定は何時に終わる?
その後でもいいから行こうよ。俺は構わないからさ。」
「でも・・・。すみません。やっぱり無理です。
あの、お疲れ様です。私もう帰らなきゃ電車が・・失礼します。」
「え、ちょっと・・・。」
神原さんの引き止める声を無視してロッカーに逃げるように駆け込むと
私は自分の荷物を持って早足で店を後にした。
電車の席に付くと私は息を整えた。
いきなり神原さんがあんなこと言い出すなんて・・・。
誕生日は山本君と前々から約束をしていた。
そして何より私は山本君に誕生日に一緒にいてほしかった。
私はそこでさっきのことを思い出して少し反省した。
ちゃんと私は付き合ってる人がいるって言うべきだったのかもな。
でも、別に告白されたわけじゃないし、
もし本当にただのバイトの後輩としての誘いなら、
なんか私のただの自意識過剰の勘違いで恥ずかしい。
しかもあの神原さんなんだから、なおさらその可能性は高いのだ。
・・・んもぅ。
お兄ちゃんといい、神原さんといい、
ホントに男の人ってわかんないっ。
ご愛読本当にありがとうございました。
よろしければ続きも是非読んでみてください。