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長谷川10

のん・あるこ〜る 第20話(最終話)

長谷川10(final)

「今のサインどういう意味だったの?」



お兄ちゃんの姿を見送った後で私は山本君に聞いてみた。


「内緒。」


そう言うと山本君は幸せそうに微笑んだ。



私はその後もしばらく何度も山本君に聞いてみたけど


結局山本君は教えてくれなかった。


「けちぃ。」私はくちびるを尖らせて言う。


「こればっかりはだ〜め。」山本君がいじわるに笑いながら言った。



「でも、やっぱりお兄ちゃんは全てをわかってるわけじゃなかったみたいだね。

まぁそんなわけないよね。お兄ちゃん超能力者じゃあるまいし。」


私は山本君と肩を並べて歩きながらそう言った。


「いや、僕はまだ信じてるよ。」


山本君は前を向いたまま笑顔で言った。


私は少し驚いて彼の方を見た。


山本君の目は子供みたいに純粋な光を放っていた。


「山本君ってホントに子供っぽいところあるよね。」


わざと少し呆れたような口調で私は言ってみる。


「そうかな〜。」山本君は首をかしげながらそう言う。


「絶対そうだよ。」


そして私は山本君のそんなところが好きだよ。


私は彼の顔を見つめていると、思わずそう言いたくなったけど


なんとなく恥ずかしかったので私はその気持ちを大事に心に仕舞い込むことにした。






















「あ、日付が変わる。」山本君が自分の時計を見ながら言った。


「本当だ。あと30秒。」



私たちは一緒にカウントダウンをすることにした。



「10。」


そうしている時に私はたくさんの想いをかみしめ思った。


「9。」


私はすっごく幸せ者だってこと。


「8。」


本当に生まれてきてよかったってこと。


「7。」


そして私は感謝の気持ちでいっぱいになった。


「6。」


私を産んでここまで育ててくれた両親に。


「5。」


私を今まで支えてくれた友達たちに。


「4。」


私の危険を命がけで助けてくれた人たちに。


「3。」


私のことを本当に大切に思ってくれるお兄ちゃんに。


「2。」


そして何より・・・。


「1。」


いつも私を暖かく包んでくれる大好きな山本君が、今私の隣に居ることに。


「0!」



「誕生日おめでとう。舞子。」


山本君がやさしい笑顔でそう言った。


「ありがとう。」


私は涙が出そうになるのをなんとか我慢して笑顔で言った。


「じゃあ・・もう何かわかっててつまらないかもだけど・・・。」


そう言って山本君は手に持った、可愛いラッピングがされた小さな箱を

私の方にゆっくりと差し出した。


「これ僕からの誕生日プレゼント。

プレゼントは・・・ちゃんと受け取る約束だよな。」


山本君は私の顔を覗き込むようにしてそう言うと

私の手の中にそれをやさしく置いてくれた。


そして私はその箱をまるで雪の結晶でも受け止めるかのように

大事に両手を広げて受け取った。


「うん。ありがとう。」


これ以上の感謝の言葉を知らない自分がすごくもどかしかった。


「開けてみて。」山本君は照れくさそうに言う。


私はゆっくりと丁寧にラッピングを剥がした。


中からは小さな白い箱が出てきた。


さらにその箱をぱかっと開いてみる。



中には輝く石が綺麗にちりばめられた


私好みの可愛い指輪が入っていた。


リングの裏には私と山本君のイニシャルも彫られている。



「かわいい。」私はうっとりしながら言った。


「デザインもハルと相談して決めたんだ。」山本君が言った。


《お前はこういうのが好きって言ってたろ?》


そうお兄ちゃんが笑顔で言う姿が目に浮かんできた。


お兄ちゃん・・・ありがとう。


私は心の中でまた私の感謝の気持ちを

十分の一も伝えてくれないもどかしいその言葉を使った。


「付けてあげるよ。」


山本君が丁寧に箱から指輪を取り出した。


そして私の手をそっとやさしく持つと

薬指にゆっくりとその指輪を通してくれた。


「ありがとう。」


私は自分の指に納まったその指輪をものすごく愛しく感じた。


そして何より私の目の前に笑顔で立ってるその人のことを。

























「これから・・・どうしよっか。」


私は少し緊張ぎみに言った。


私はこんな夜遅くまで山本君と居たのは初めてだったのだ。


「う〜ん・・・。」


山本君も少し緊張したような感じだった。


大丈夫・・・。


私は思った。


山本君となら大丈夫・・・。


山本君がどういう提案をしたって私は・・それに従う。


私は心の中でそう決めた。



「舞子は二十歳になったんだよね〜。」


「・・・うん。」


「じゃぁ舞子はお酒ももう飲めるんだね。」


山本君はしみじみとした感じで言った。


そう。やっと私も大人の仲間入りをしたのだ。


「どこに・・・行こっか?」


私はまた山本君に聞いた。


ドキドキドキ・・・。


私は自分の心臓の音が聞こえるくらいに緊張していた。


大丈夫。


大丈夫・・・。



すると少し考えている様子だった山本君は「よし。」と言うと


私の方をくるっと向いてやさしい声でささやいた。



「いつものカフェに行こっか。」



そして暖かい笑顔を私に見せてくれた。


私の緊張は嘘みたいにすっと消えて無くなった。


そして私はなんだかうれしくなって笑顔になって答えた。


「うん。」




















そして私たちはいつものようにカフェに向かった。


私はもうお酒を飲める歳にはなったけど


まだ当分はお酒を飲んでみるつもりはない。



たしかに大人の世界にも少なからずの好奇心はあるし


山本君と一緒ならいつか行ってみてもいいかもなとも思ってる。


でも私はもう少しだけ、今は背伸びせずにこんな風にゆっくりと歩いていたいと思う。




だって私たちはいつだって、お酒なんてなくたってこんな風に最高の気分になれるんだから。


最後までご愛読いただき本当にありがとうございました。

初めての長編小説だったので読みづらいところや、表現が未熟なところもあったかと思いますが、それなのに最後まで読んでいただいた皆さまには、本当に感謝しきれないほどの想いを抱いております。本当にありがとうございます。

また、もしも感想や評価を書いて頂けるならば、それは僕にとってこれ以上にないほどの光栄です。どんな言葉でも大歓迎なのでよろしければよろしくお願いします。最後に、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。

                                  ぶんちゅう

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