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長谷川1

のん・あるこ〜る 第2話

長谷川1

「今日おもしろい奴にあったんだ。」



山本君がそう言いながら私との待ち合わせ場所に現れたあの日は、

かれこれ5ヶ月くらい前になるけど今でも覚えている。


「へぇ。どんな人だったの?」


まだ当時は山本君と付き合って1ヶ月も経っていなかった私にとって、

彼の言う全ての話題が魅力的で、私は前のめりになりながらつづきを促した。


「とにかくおもしろいんだ。いきなり可笑しなこと言い出すんだ。」


そう言うと彼はそのときのことを思い出したように少し笑った。


「可笑しな事・・・。その人危ない人なんじゃないの?」


私は少し心配になりながら言った。


「僕も最初はそう思った。でもあまりに唐突に可笑しなこと言うんで興味の方が勝っちゃったんだ。」


山本君はそう言うと照れくさそうに笑った。


彼は普段は大人のようにとても落ち着いているんだけど、

時々こういう風に子供っぽいところをみせてくれて私を喜ばせた。


でもそれはすごく稀なことだったので、私はそういう機会をあたえてくれた彼の言う、

その見知らぬ『おもしろい奴』さんに感謝したくなった。


「ところでそれ、どこでの話なの?」


私がそう聞くと、彼はまた思い出したように少し笑って意味ありげに間をとると、

笑いを抑えるように私に言った。



「男子トイレ。」









「でも確かにそうだよね。」


私は山本君の話を聞き終えると笑いながら感想を言った。


「確かにその違いは私も考えたことあるな。コンサートとかでトイレに行ったときも、

男の人は長い間並ばなくてよくてずるいな〜って。」


「僕もそりゃ考えたことあるけどさ。」


そう言うと私は彼が何を続けようとしているのかわかったので彼と声をそろえて言った。


「あの場でそんなこと言わなくても。」


そこまで言うと私達はふたりで笑った。


こうやって二人で大笑いしたのは初めてのことだったので、

私の中のその『彼』への感謝の気持ちがまた大きくなった。まだ会ったこともないのに。



そして、私は心の中でそんな可笑しな出会いがある男の人たちのことを

少し羨ましく思ったのを今でも覚えている。


あれからというもの山本君はその『彼』、後の『ハル君』の話を

私に時々うれしそうに話してくれた。


彼があまりにも楽しそうに話してくれるので、

私は時々ハル君に奇妙な嫉妬心すら感じながら話を聞いていた。



そしてそんな愉快な話を聞くたびに、私はハル君にいつか会ってみたいなと思った。












「お待たせ。舞子、待った?」


文庫本を開いて読んでいた私に、

急いできたのか息が少しあがった山本君が駆け寄りながら言った。


「ううん。私もさっき来たとこ。」


「そのわりには本にかぶりついてたよ。」


山本君は私の文庫本を指差しながら笑った。


「あ。でもこれはただ・・・。」


「いいよ。気を使ってくれなくて。ごめんね、お詫びに今日の映画は僕がおごるからさ。」


彼は私の前頭部に優しく手を置いて、軽く撫でてくれながら笑顔で言った。

私はそうされることがすごく好きだった、

彼はそんな私の気持ちを知ってか知らずかたまにそうしてくれた。


案の定うれしくなった私は可愛く「うん。」と言いそうになったけど

何とか抑えて笑顔で言った。


「ありがと。でもだ〜め。ワリカンね。」



これが私達のルールなのです。


ご愛読いただき本当にありがとうございました。

よろしければまた続きも是非読んでみてください。


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