表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

山本10

のん・あるこ〜る 第19話

山本10(final)

「弥生だから・・・ハル・・・・・・?」


「あぁ。」


僕の問いかけにハルは真顔で答えた。


「ぷっ。」


「くっくっく・・・。」


「ぷくっくっくっく。」


「ぷはははっ。」



僕とハルは二人して爆笑した。



なんともバカバカしくて


なんとも変な説得力があって


なんともマイペースで


なんともハルらしかったからだ。



「もう・・・。でも二人ともなんか可笑しなとこが似てるよね。」


舞子が僕らを見てしみじみとした感じに笑いながら言った。


「そうかな。」


僕はハルを笑顔で見ながら言った。


「全然似てねぇよ。」


ハルは僕のことをニヤケ顔でみて言う。


「ほらね。」


舞子は満面の笑顔になって僕とハルの手を掴んだ。


そして僕らは三人で笑った。



















「じゃぁ俺は邪魔者だろうから、そろそろ帰るわ。

あとは二人でよろしくやってくれ。」


そう言うとハルは僕らに背を向けて手を振った。


「ちょっと・・・ハル。」


「お兄ちゃん。」


「あ、そうだ。舞子。もうちょっとで日付が変わる。

ちょっと早いけど・・・誕生日おめでと。

なんか山本のプレゼント考えるのに必死で

俺からのプレゼント全然考えてなかったから・・・その・・何もないけど・・ごめんな。」


「ううん。そんなのいいよ。

気持ちだけですごくうれしい。・・お兄ちゃん、本当にありがと。」


「今度家に帰ったときにでも一緒に飯でも食いにいっておごるからよ。」


「うん。楽しみにしてるね。

それと・・・改めて・・今日私を助けに来てくれてありがと。

それに色々と・・・もう・・なんて感謝していいかわかんないくらいだよ・・。」


「やっぱホントにお前はバカだな。

妹助けない兄貴なんてどこにいるんだよ。」


「お兄ちゃん。」


「山本と仲良くな。」


「うん。」


舞子は涙目になりながら笑顔を作ってうなずいた。


「山本!」


「おぅ。」


「舞子を・・・よろしく頼むな。」


僕の目を真っ直ぐに見てハルは言った。


「うん。」


僕はしっかりとうなずいた。





















「ハル!」


ゆっくりと歩いて僕らから離れて行くハルに僕は声をかけた。


どうしても聞いておきたいことがあったのだ。


「ん?」


「あのサインのことだけど。」


「あぁ薬指のな。俺たちだけの。」


「そうそれ。」


ずっと前に大学のカフェでハルと一緒に決めた薬指のサイン。


それをあの時ハルは僕に使った。


「うまくいったな。」


ハルは笑いながら言った。


「でも・・・」


僕は言った。


「なんでサインの内容を決めなかったんだ?」


























あれはいつだっただろう・・・。


僕とハルは大学のカフェでいつものようにランチを食べていた。


「なぁ。なんで薬指だけないんだろうな?」


そうハルが言って僕らは二人だけの薬指のサインを決めようという話になった。


あれがいい・・・これがいい・・・僕らは色々意見を出し合った。


そしてしばらく考えていたハルは「よし決めた。」と言った。


「サインの意味は・・・なしにしよう。」


「は?」僕は意味がわからなかった。


「だから意味なし。ただのサイン。」


「それじゃサインの意味ないじゃん。」僕はあきれて言う。


「いいって、いつかピンチの時とかに役にたったりするんだってコレが。」


「はぁ?そんな時来るわけないでしょ。」






















「あぁ・・・それは・・・。

山本となら中身なんか決めてなくても・・・なんか伝わると思ってさ。」


ハルはどこか照れくさそうにそう言った。


「ハル・・・。」



サッカー部の部室でハルは僕に薬指を向けた。


僕は最初戸惑った。


何せそのサインには意味はなかったからだ。




でも



《今のうちに舞子を連れて安全なとこに逃げろ!俺が時間を稼ぐ!》



確かに僕にはそう伝わったんだ。





「それにさ。」ハルはこっちを向くと僕の手にもってるものをゆび指して言った。


「薬指は・・・そこはなんとなく開けといたほうがいいと思って。」


「え?」


僕は自分の手にもった舞子へ渡す指輪の箱を見つめた。


「薬指にはちゃんと役目があるからな。

その指は大事な人との絆の証を宿す場所だから。」


「ハル・・・。」


「ちゃんとそれを舞子につけてやってくれ。

もう二度と変な虫が付かないようにな。

そしていつかお前のその指にも舞子と同じものをはめてやってくれよな。」


そう言って微笑むと、ハルはまた振り返ってあっちを向かって歩きだした。



















「ハル!!」


僕は叫んだ。


「僕!君が何て名前でもこれからもハルって呼ぶよ!」


僕は力の限り叫んだ。


「だって僕にとってはハルはハルだから!」


遠くの方でハルが僕の方を振り返った。


「おぉ!!」



僕は思いっきり手を振った。


ハルも笑顔で僕に手を振り返している。


そして僕らの手にはしっかりと薬指が立てられていた。


「また学校でな〜!!」


僕はまた大声で叫んで薬指を高々と掲げた。





ハルは違うって言ったけど


僕はやっぱりハルは全てのことをわかってるって


実はまだ心のどこかで信じていた。


だから僕が大きく掲げたこの薬指の示す意味を


ハルならきっと理解してくれているはずだ。



そして僕らが交わしたこの薬指に込められた意味は、僕とハル、ふたりだけの秘密だ。

ご愛読本当にありがとうございます。

よろしければ続きも是非読んでみて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ