長谷川6
のん・あるこ〜る 第12話
長谷川6
「山本君!!」
目の前で山本君が崩れ去った。
神原さんがドアから入ってきた山本君の顔を殴ったのだ。
神原さんの動きは早かった。
私を呼ぶ声で山本君が助けに来たことを一瞬で判断した彼は
気づいたときにはドアの前まで移動し鍵を開けて息を潜めていた。
そして・・・。
私のせいだ。
私のせいで山本君が・・・。
「ふん、こいつが例の彼氏さんか・・・。くちゃ。
ぷっ。まぁここまで来たのだけは評価してやってもいいな。」
「くっく」っと笑いながら神原さんが倒れている山本君を足で小突いた。
「やめてっ!!」
私は泣きながら叫んだ。
「さっき君が叫んだのはこいつに居場所を知らせるためか・・・。
妙だと思ったんだ、大学名までだして。どうせケータイをこいつにつなげてんだな。」
「さ・さすがに頭はよろしいようで。」
山本君がよろよろと立ち上がろうとしながら言った。
「山本君!!」
「あら。まだ逝ってなかったのか。
愛だね〜。でもそれだけじゃ大事な人は守れないんだよ〜。」
そういってまた神原さんが山本君を蹴った。
「きゃ!」もうやめて!!私は言葉にならない声をあげた。
「ぐ・・。」
おなかを押さえて苦しそうに嗚咽をもらす山本君を
私はもう見てられなかった。
「ふん。くちゃくちゃ。
長谷川さん。もうわかったでしょ。
男は頭と強さよぉ。こんなやつより俺にしときなって。」
嫌らしい声でそう言いながら
神原さんがじりじりと近づいてきた。
私はもう涙でぐしゃぐしゃになった顔を両手でおさえながら
ただ頭を左右に振ることしかできなかった。
山本君・・・ごめんね。
私・・・。
私・・・。
「もう邪魔者は入らない。今度こそ二人っきりだよ〜。
彼氏の前で俺の女になりなぁ。」
そう言って私の肩を掴む神原さん。
振り払おうと彼の腕を掴んでみたけれど
鍛え上げられた両腕は私がどんなに力を入れてもどうにもならなかった。
「ほら、もういいかげんあきらめな。
やさしくするから。ふふ。くちゃくちゃ。」
「ぃやっ!!」抵抗する私は彼の腕につめを立てた。
「いてっ!!」
彼がひるんだすきに部室の角まで逃げる私。
でもこんなことしても無駄なことは自分でもわかっていた。
「おいおい。いい加減俺もキレるぞ。くちゃくちゃ。
そんなに時間稼いでも無駄なことぐらい君もわかってるんだろ?
もうどんなに待っても味方はこないんだからさ。」
またじりじりと近づいてくる神原さん。
さっきよりも目がぎらぎらして怖かった。
もうだめだ・・・。
そう私が心の中であきらめた
その時。
「それはどうかな。」
透き通るほどに明るい声が薄暗い部室の空気を切り裂いた。
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