山本6
のん・あるこ〜る 第11話
山本6
「助けに行こう。」
舞子からのSOSの電話が切れた後でハルは言った。
電話から聞こえた声は、どうやらケータイの送話口から遠かったようで
余り正確には聞き取れなかったがおそらく内容は次のような感じだった。
-助けて!-
-どうしたんだい?いきなり叫んで。
このサッカー部の部室はキャンパスから離れているからどんなに呼んでも人は来ないよ。-
-明光寺大学のあなたがこんなことしてもいいんですか?-
-ふふ,どこの大学の人でもこんな事していいわけないでしょ。
でも俺ならいいんだよ。なんてね、ふふ。-
-きゃっ!ちょっとそれ以上近づかないで下さい。-
-まぁまぁ-
-きゃぁ!!!!-
ブツッ・・・ツー・ツー・・・。
受話口から聞こえる男の声ははガムを噛んでいるのか、
ふざけた様な返答で不快そのものだった。
ふざけやがって!
舞子が危ない。
そして彼女が僕に助けを求めている。
僕がどうするかなんて決まっていた。
「ほら早く。山本行くぞ!」
せかすようにまたハルが僕に言った。
「だめだ。僕は恋人を助けに行くという理由があるけど
ハルまで巻き込んで危険にさらすわけにはいかないよ。
気持ちはありがたいけど。僕だけで行く。」
舞子のためなら僕自身はどうなってもよかった。
でもハルにまでそんな危ない橋を渡らせたくなかった。
「俺にも守る理由はある。」
「え?」
そう言うハルの目は強い光を放っていた。
「頼む。俺も行かせてくれ。」
そう言ってハルは僕の目を睨むようにみつめていた。
「わかった。行こう。」
そうして僕らは大学に停めている僕の車に向かった。
「舞子は電話先で舞子を襲っている奴に気づかれないように
今いるところの情報を僕らに教えようとしていた。」
「明光寺大学・・・サッカー部か・・・。」
僕らは車に乗り込み明光寺大を目指している。
「都内でも有数な名門私立大じゃないか。
しかもあそこのサッカー部は全国でも有名の超強豪だ。
そうとう体格も頭もいいと考えたほうがいいな。」
ハルは助手席で、もどかしそうに赤信号を睨みながら言った。
「飛ばせばあと10分で着く。
相手が誰でも舞子を救えればいい。僕はどうなってもいい。」
「バカ!冷静になれ山本。
そんなのでお前に何かあったら舞子が喜ぶと思うのか?」
「でも・・」
「俺もいるんだ。・・まぁ俺も喧嘩には自信ないが。
あんまり一人で突っ走るなよ。」
「あぁ・・・。」
僕はあいまいに答えた。
「着いた。」
大学内に入ると僕は適当に車を停め飛び出した。
「おい!山本!」
ハルも遅れて車から飛び出す。
僕は近くを通った女子大生を捕まえた。
「サッカー部の部室どこ?」
「えっ!あ、あぁあっちですけど・・・」
そう聞くなり僕はお礼も言わずそっちに走った。
食堂前の人ごみがうざったかった。
「アンケートをおねが・・」
アンケートなんて今している場合じゃないんだ!
頼むから道を開けてくれ!
「山本!待て!ったくぅ・・。
ん?あ・・・・あれは・・・・・・。
おい山本!おいって!!」
余りにしつこく言うので走りながらハルの方を振り向いた。
「ちょっと俺考えがあるから先行っててくれ!すぐ行くから!!」
僕は言われないでも一人で行くつもりだったので
手を振って答えた。
電話越しでくちゃくちゃと音を立てながら話す男の声を思い出す。
舞子に何かしてみろ・・・・そんときは・・・。
-サッカー部-
あった!!
「舞子〜!!!」
僕は思いっきり叫んだ。
何せサッカー部の部室は何部屋も設備されていたのだ。
くそ!強豪サッカー部め!
その時。
「山本君〜!!」
舞子の声だった。
僕は声の聞こえたドアに駆け寄った。
舞子。今助ける!!
ドアを勢いよく開ける。
ドス!!!
強い衝撃と共に目の前が真っ暗になった。
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