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千早が笑って。
左目が笑って。
楽座が笑って。
いつか、確かに撮った記憶のある写真。
そして、いつか、確かに消え去ってしまった写真。
それは、確かにフォルダに保存していない写真。
千早が笑って。
左目が笑って。
楽座が笑って。
俺は、笑っていただろうか――
◆
携帯電話を閉じて顔を上げれば、目の前には猫がいる。
黒い、猫がいる。
虹色の瞳をした、黒い猫がいる。
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■』
「…………」
聞き取ることができない。
黒い猫の言葉を聞き取ることができない。
◆
「君は――」
言葉にする間もなく、猫は黒い渦の中に消える。
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