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Spirit of kingdom  作者: 九十九 大和
異種間戦争へ~ん
10/11

ディガリア城急襲?だから?④

七話ほこれで最後です。



☆ジョン視点


ユウキに言われて、幕僚達と屋上に集まったが、まだ何も起きない。


「なんも起きねぇじゃねぇか」


畜生、騙されたか?

サラマンダーにしたって、これから殲滅するのに、部隊を編成しやなきゃなんねぇじゃんかよ…めんどくせぇ…


「中将閣下!海方面で何かが発光しました!」

「なに?」


余所見をしていた騎龍参謀が、遠くで何か光ったのを見たらしい。


光?射撃光か何かか?


突如、ジョンの水晶玉から声が入った。


『目標地点まで残り約15秒』


は?何言ってんだ?大体誰だよ、この美人なお姉さんは。


見知らぬお姉さんが水晶玉の向こう側でニコニコ笑っている。


『弾着、今』


森の方で、目も眩むような閃光が迸り、黒紫色の光がドーム状に広がって行く。遅れて、凄まじい衝撃波と爆発音が襲い掛かって来て、周囲が高濃度の魔力で溢れかえった。


「な、なんだ!?」


数人の幕僚が、酔った様に戻し始め、数人が倒れた。

不味い!魔力中毒だ!


過剰な魔力に当てられて、身体が酔ってしまう事なのだが、コイツはヤバイぞ…急性アルコール中毒みたいな症状が出ると、死人が出る。


俺が吸収するしか無いか…

空気中の魔力を一ヶ所に集めて球体にし、手を突っ込んで吸収した。


なんて素晴らしく高純度な魔力だ…

還元が早すぎる。


自分の中で、その殆んどが循環しているのが、よく分かる。


魔力にも純度があり、純度が低いと吸収しても自分の魔力として再利用出来ない魔力が出てくるが、コイツはそのままそっくりと再利用出来る程純粋だ。


「言葉も出ないゼ」


最高のショーを見たのだから、もうここに居ても仕方無い。


「気分が悪くなった奴は、名乗り出ろ!少しでもだ。大丈夫だった奴は肩を貸してやれよ!戻るぞ」


さて、アイツが帰ってきたら部屋の件も含めて、じっくりと話す必要がありそうだゼ…拳で。




中庭に、四階建ての校舎位の高さの黒い龍が、身体にコンテナを吊り下げ、慎重に着陸した。


ゆっくりとコンテナが地上に着地すると、コンテナを支えていたワイヤーが切断され、龍は仕事から解放された。


器用に、二本足で立ち上がり、肩を揉みながら腕を回している様はなんとも滑稽だが、その度に風を切る音がして、出迎えた兵士の顔がみるみる青ざめる。


突如、龍の身体を覆う程の霧が極地的に発生し、その霧は直ぐに晴れ、さっきまでいた龍は跡形も無くなっており、龍が立っていた所に賢者のような老人が立っていた。


「オムナ、助かった。感謝する」

「いえ、礼には及びませんぞ。ですが、やはり老人には堪えますが」


オムナと呼ばれた老人は、腰を叩いて笑う。


「さて、ナリア姫達を早くコンテナから出してあげなくちゃ」


ユウキはそう言って、コンテナに近付いた。


遠くで見ていた兵士達は、少し前に命じられた命令に従い城の中へと入って行き、入れ替わる形でディガリア城のメイドさんや女性団員達が、お湯や毛布等を持ってコンテナに走って行く。

コンテナの扉が開かれ、恐る恐る女性達が出てきた。

直ぐにメイドさんや女性団員達が、介抱にあたった。

一人だけ助かったサラマンダーは、縄でぐるぐる巻きにされ、蓑虫状態で天井から吊るされていた。


コイツに関しては、ユウキが引き摺って行き、城の中で待機している兵士に引き渡し、牢屋にぶちこんどけと命令した。


ちなみに、兵士を中庭から撤退させた理由は、武器を持った男性の兵士を見たら、怯えさせてしまうとの配慮によるものだ。


「ユウキ様!」


そう言って、城から出てきたユウキを見たナリアが、毛布に身を包んだまま駆け寄る。


「ナリア様。私に様などとは畏れ多い…どうぞ呼び捨て下さい」


ユウキはそう言って、跪いた。


「そんな!妾にはそんな事出来ません!」


慌て、ナリアが首を振り拒否する。


「それでは、ナリア様のお好きなように、お呼び下さい」


そう言ってユウキは笑いかけ、ナリアと良い雰囲気になった所を離れた別々の所で、睨んでいる二人の人物がいた。


ジョンとイカロスである。


「ぐぬぬぬ…何でだ?何で奴だけあんなに持てるんだ?世の中理不尽過ぎる…これはきっと、何者かの仕業に違いないゼ!!」



 うっ……し、知りませんよ。私は…



妙な所でカンが良いジョンであった。


「ジョン!ちょっと手伝ってよ!」

「はいよ、ただいま!」


何やら怪しげな衣装が入った袋を抱えたインフィーに呼ばれ、何も知らずに嬉々としながら手伝いに行ったジョンであった…


一方では、壁の脇から顔を覗かせたイカロスが、無表情で仲良く話している二人を見て、ドス黒いオーラを立ち上らせていた。


手をついている石の壁に、指がバキッと食い込み十個の穴を穿った。


「いち、ど……きょういくする…ひつようが、ある…」


そう言って、事の原因である本人を教育するために一歩を踏み出した。


そんな事は露知らず、恐い体験をしてしまったから、せめて今は少しでも忘れて貰えれば、と思ってナリアと話していたユウキは、二人に誤解され内一人に、背後まで迫られている事などまるで気付かない。


「そうだったのですか…ユウキ様も苦労なさっているのですね」

「ええ、本当に大変でした」


結局、ユウキの呼び方に対しては、頑なにナリアがこの呼び方が良いと言って聞かず、最終的にユウキが折れたのだった。


「その…ユウキ様…?」

「何でしょうか」


急にナリアが表情を引き締めたのを見て、ただ事ではない、何か悪い予感がすると思ったユウキの背中に、冷や汗が垂れた。


「妾を…ユウキ様の…きゃっ!」

「……ぐわっ!」


突如、十字の傷が入ったのっぺらぼうの人物が、手刀をユウキの首筋に叩き付け、昏倒させて引き摺って行く。


「ちょっ…!そこの者!妾とユウキ様の逢瀬を邪魔するとは!何者か名乗るがよい!!」


ピタリとのっぺらぼうが止まり、振り向いた。


「…なに」

「なに、ではない!名を名乗れと言っておる!」


一触即発の雰囲気が辺りを満たす。

ピリピリと張り詰めた空気が肌を刺した。


「…イカロス」

「イカロス、と言うのか?では聞くが、貴様はユウキ様のなんだ!」


ナリアが、一歩を踏み出した。


「……つま」


広島型原子爆弾が投下された。

行ってらっしゃい、ビックボーイ。


「う、嘘をつくでない!妾は、さっきメイド達に聞いたぞ!まだユウキ様は結婚されておられないと!!」

「……ちっ」

「今舌打ちしたな!?」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を、メイドや女性団員達は温かい眼で見ていた。


あの、誰か助けては貰えません?



 自業自得だな。ざまあみろ、羨ましい。



口論が終わるまで、ユウキは気絶した振りを続けるしかなかった。



次回は、閑話です。



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