表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/37

遊園地の異(7)

 次の日の朝、僕が学校に着くとすぐにカズキが興奮した様子で話しかけてきた。


「聞いたか? ラビットランドの話」


 急にそんなことを言われても、何のことか分からなかった。僕は首を振った。


「廃園になるんだってさ、経営不振で。二三年前からヤバかったらしいけど、この前の震災のあおりで来場者が減ってついに倒産したらしい。今度の遠足で場所が変更になったのも、それが理由だったらしいぜ」

「ほんとに!? じゃあ、あのため池もトイレも……」

「埋め立てて撤去されるかもな。霊はいないにせよ薄気味悪い場所だったから、むしろ良かったのかもな」


 僕は少し寂しくなった。あそこに誰もいない、声は僕にしか聞こえないと分かってはいるんだけど。


「あともう一つニュースがあって、これはクラスの奴らが噂してたのが聞こえてきただけだけど……」


 カズキがそこまで言ったところで、担任の黒井先生が教室に入ってきた。


「時間だぞ、席に着けー!」


 まだ何か話したそうなそぶりだったけど、カズキはしぶしぶと自分の席に戻っていった。

 日直の号令で朝の挨拶をすると、先生は教室の入り口のほうに手招きをした。

 なんだ、とクラスの全員がにわかにそちらに注目する。

 おずおずと、不安げに教室に入ってきたのは、写真でしか見たことのない小山良彦君だった。

 あまりの出来事に、僕は一瞬吹き出しそうになった。さっきカズキが言おうとしていたのは、きっとこのことだったんだ。


「今日から、クラスの友達が増えることになった」


 先生が言うと、ヨシヒコ君は緊張した様子で、でもしっかりとした口調で言った。


「今日からこの学校に転校してきた小山良彦といいます。よ、よければ友達になってください」


 僕が手を叩くと、一人また一人と同じように手を叩き、すぐに教室は拍手に包まれた。ヨシヒコ君は照れくさそうにしている。

 よければ友達になってください、この一言を言うために彼は夜も眠れないほど緊張したんじゃないだろうか。

 子どもっぽい考えでもいい。僕はため池の子どもたちに一人でも多く、そこから抜け出してほしいと思う。そのためにまず、ヨシヒコ君と仲良くなろう。

 そんなことを考えながら、僕は初めて会うとは思えない彼に向け、手が痛くなるまで拍手をし続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ