遊園地の異(7)
次の日の朝、僕が学校に着くとすぐにカズキが興奮した様子で話しかけてきた。
「聞いたか? ラビットランドの話」
急にそんなことを言われても、何のことか分からなかった。僕は首を振った。
「廃園になるんだってさ、経営不振で。二三年前からヤバかったらしいけど、この前の震災のあおりで来場者が減ってついに倒産したらしい。今度の遠足で場所が変更になったのも、それが理由だったらしいぜ」
「ほんとに!? じゃあ、あのため池もトイレも……」
「埋め立てて撤去されるかもな。霊はいないにせよ薄気味悪い場所だったから、むしろ良かったのかもな」
僕は少し寂しくなった。あそこに誰もいない、声は僕にしか聞こえないと分かってはいるんだけど。
「あともう一つニュースがあって、これはクラスの奴らが噂してたのが聞こえてきただけだけど……」
カズキがそこまで言ったところで、担任の黒井先生が教室に入ってきた。
「時間だぞ、席に着けー!」
まだ何か話したそうなそぶりだったけど、カズキはしぶしぶと自分の席に戻っていった。
日直の号令で朝の挨拶をすると、先生は教室の入り口のほうに手招きをした。
なんだ、とクラスの全員がにわかにそちらに注目する。
おずおずと、不安げに教室に入ってきたのは、写真でしか見たことのない小山良彦君だった。
あまりの出来事に、僕は一瞬吹き出しそうになった。さっきカズキが言おうとしていたのは、きっとこのことだったんだ。
「今日から、クラスの友達が増えることになった」
先生が言うと、ヨシヒコ君は緊張した様子で、でもしっかりとした口調で言った。
「今日からこの学校に転校してきた小山良彦といいます。よ、よければ友達になってください」
僕が手を叩くと、一人また一人と同じように手を叩き、すぐに教室は拍手に包まれた。ヨシヒコ君は照れくさそうにしている。
よければ友達になってください、この一言を言うために彼は夜も眠れないほど緊張したんじゃないだろうか。
子どもっぽい考えでもいい。僕はため池の子どもたちに一人でも多く、そこから抜け出してほしいと思う。そのためにまず、ヨシヒコ君と仲良くなろう。
そんなことを考えながら、僕は初めて会うとは思えない彼に向け、手が痛くなるまで拍手をし続けた。