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 「いや、いや……来ないで!」

 サーシャはくせのある長い赤毛を振り乱しながら、必死で石を投げる。だが腰が抜けて尻餅をついた状態で投げた石は、見当違いの方向に飛ぶか、届かずに虚しく地面に落ちる。

 「この! この! あっち行け!」

 後退りながら、サーシャは死に物狂いで石を投げる。石と一緒にむしった草が、少女の眼前で舞った。

 少女の前では、昆虫の幼虫に無理矢理人間の上半身と蟻の頭部を繋ぎ合わせたような巨大な生物が、地響きのような唸り声を上げている。

 緑色のぶよぶよとした虫の腹に、小石が虚しく弾かれた。蟻に似た顔面の顎から、じゅるじゅると粘液が涎のごとく垂れる。それが食欲を連想させ、サーシャの恐怖を増幅させた。

 後退する少女の背が硬いものに当たる。慌てて振り返ると、土の壁が彼女の逃げ道を塞いでいた。

 見上げるほどの崖は、腰を抜かした少女の力ではとてもではないが登れるものではないだろう。それに登っている間に絶対捕まってしまう。完全に退路を絶たれ、絶望と恐怖で涙が溢れそうになる。

 「誰か……誰か助けてええええええっ!」

 森にサーシャの絶叫が木霊する。叫んでも無駄な事は充分解かっている。この森には、城の屈強な兵士ですら恐れて入って来ないのだ。だがそれでも、自我を保つために本能が喉を振るわせる。そうしないと精神が壊れてしまいそうだった。

 木霊が小さくなるにつれ、サーシャの絶望が大きくなる。

 食べられる――そう思った時、サーシャの耳に信じられない声が届いた。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 サーシャの叫びに応えるかのように、誰かの叫びが徐々に近づいて来る。

 その声は一秒ごとに大きく、そして近くなる。視界を蟻頭に塞がれているが、誰かがこちらにもの凄い速さでやって来るのが感じられた。

 背後からの咆哮に、蟻頭がゆっくりと振り向く。巨大な腹が蠕動しながら移動すると、サーシャの視界が僅かに開け、ほんの一瞬だが誰かがこちらに駆けてくるのが見えた。

 誰かが助けに来てくれた。

 絶望に支配されかけた少女の心に、一筋の希望の光が射す。それは太陽の光のように、とても明るくて温かい。

 サーシャは、幼い頃母から聞いた昔話を思い出した。

 絶体絶命のピンチに現れる、勇者の物語を。


 「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 疾走しながらゲイルが吼える。

 ゲイルが駆け抜けた跡は、耕したかのように地面が抉れていた。

 速い。あれほど歩きにくいと愚痴をこぼしていた森を、矢のように駆け抜ける。

 緑の巨大な物体を視界に捉えた。見るからにおぞましく、そして大きい。あれならこの森に生えている木々など、何の障害物にもならないだろう。

 だがそんな事はどうでもいい。それよりも、絹を裂くような悲鳴と一瞬だけ緑の塊の後ろに見えた赤毛が、ゲイルのテンションを一気に上げた。

 さらに速度を上げる。

 蟻の頭がゲイルに向き直り、突然湧いて出た邪魔者に敵意を剥き出しにする。ゲイルは構わず一直線に蟻頭へと突進した。

 下半身がイモムシ状なだけに、蟻頭の方向転換は遅い。ぶよぶよした腹が波打ち、見る者の生理的嫌悪感を刺激する。だが腰から上の人間に近い上半身は、下半身に似合わず機敏な反応を示す。

 強引に体を捻り、蟻頭は近くにあった木々を後ろ手で払う。腕のほんの一振りで、数本の大木がゲイルに向かって飛んだ。

 突然襲いかかる大木の弾幕。だがゲイルは止まることも避ける事もせず、まるで飛んでくる巨木など目に入らないかのようにただ真っ直ぐ蟻頭へと駆ける。

 回避行動すらしないゲイルに、一本の木が直撃コースで飛来する。当たれば常人なら即死間違いなし。だがゲイルは右手を振りかぶると、木の幹に手刀を一閃した。

 「ゲイルチョップ!」

 ただの手刀。ただのチョップ。たったそれだけの一撃で、巨木が真っ二つに割れてゲイルの後方へと吹っ飛んだ。

 ゲイルの走る速度はまったく衰えず、蟻頭がようやく重たい体を引きずるように反転した時にはすでに懐に入っていた。

 「遅いんだよ、デカブツが!」

 ゲイルは左足を地面に突き刺す勢いで踏み込み、体を回転させる。突進の勢いをそのまま乗せ、強烈な右の回し蹴りを放った。

 ずどん、と蟻頭の腹が大きく凹み、巨体が横にずり動く。だがゲイルの足は、すぐに押し返されてしまった。

 予想外の弾力に、ゲイルはバランスを崩す。だが何とか持ち直し、蟻頭の腹に蹴りの連打を浴びせた。

 爆撃の連続音が森に響くが、ゲイルの足には分厚い水風船を蹴ったような感触が伝わっただけだった。

 「クソ、効いてねえ」

 ゲイルが顔を上げて蟻頭を見るが、ダメージがあるようにはまったく見えない。無論蟻の顔面に表情があればの話だが。

 腹を攻撃するのを諦めようとした時、頭上から蟻頭の腕が襲いかかって来た。

 「うおっ……!」

 鋭い爪を持った豪腕が、次々とゲイルを襲う。イモムシの下半身と違い、蟻頭の腕は移動速度の千倍は速かった。

 矢継ぎ早に繰り出される蟻頭の攻撃を、ゲイルは右に左に飛び跳ねてかわす。巨大な腕が空振りするたびに、地面が深く掘られた。

 「へっ、遅い遅い。遅すぎて目をつむってもかわせるぜ」

 余裕綽々のゲイルは本当に目を閉じる。それでも蟻頭の攻撃は、ゲイルには当たらなかった。

 だが――

 「あら?」

 目を閉じて飛び跳ねていたため、ゲイルは蟻頭が掘った窪みに足をとられた。

 無様に地面に仰向けに倒れるゲイル。その隙を逃さず、蟻頭の腕がゲイルに伸びる。

 強烈な平手打ちが、大量の土砂を撒き上がらせた。激しい土煙が起こり、少女は慌ててバスケットを庇うように覆い被さる。


 辺りに充満していた土煙がようやく治まると、サーシャはゆっくりと体を起こした。体中に土を被っていたが、幸いどこにもケガはない。口の中の砂を吐き出し、髪に積もった土を手で払い落とす。バスケットの中身も、彼女が身を呈して守ったお陰で無事だった。

 ほっと胸を撫で下ろすが、今はそれどころではない。蟻頭はまだ自分の目の前に居るのだ。だが怪物は自分の事など気にもかけず、背中を向けてじっとしている。

 これはチャンスだ――そう確信したサーシャは、勇気を振り絞って蟻頭の横をそっと通り抜ける。怪物は何かに夢中になっているようで、地面を這い進む少女にはまったく気がつかなかった。

 そういえば、助けに来てくれた(と彼女が勝手に信じている)勇者様の姿がなかった。まさか颯爽と駆けつけたはいいが、怪物に恐れをなして逃げ帰ってしまったのだろうか。

 いや、そんな事があるわけがない。何しろ勇者様なのだ。こんな虫っぽい怪物を恐れるなんて事はないはずだ。

 だが――ちらりとサーシャは自分の家よりも大きな蟻頭を見上げる。まず目についたのは、グロテスクな下半身だ。その上に人の体と蟻の頭を据えるなんて、子供でもこんな奇抜なデザインは思いつかない。確かにこんな巨大な怪物と闘えと言われたら、どんな勇猛な戦士でも二の足を踏むだろう。

 得も言えぬ不安に襲われたサーシャは、とにかくここから離れようと必死に地面を這う。大事なバスケットを頭に乗せて両手で支え、懸命に足を動かした。

 這い進むにつれ、蟻頭の腹で隠れていた景色が露になる。ふと見ると、蟻頭の手から何かがはみ出しているのを見つけた。

 よく見るとそれは、蟻頭の手に押し潰されたゲイルであった。

 「あ…………」

 助けに来たはずの勇者が、まさかの返り討ちに遭っている。

 あまりにショッキングな光景に、サーシャの手からバスケットが落ちる。そして少女の意識は闇に吸い込まれた。


 蟻頭の指の隙間から覗くゲイルの体は、ぴくりとも動かない。巨木を簡単になぎ倒す蟻頭の豪腕を受ければ、圧死は必然であろう。むしろゲイルと解かる形を残しているのが奇跡だ。

 獲物を完全に仕留めたと確信したのか、蟻頭が嬉しそうに顎をガチガチと鳴らす。表情を持たない蟻の顔が、まるで笑っているように見えた。

 だが次の瞬間、蟻頭が苦痛の声を上げる。見れば、蟻頭の指をゲイルが両腕で締め上げていた。

 「いてえじゃねえか、この……この……えっと、半分以上虫だから、この虫野郎」

 ゲイルは両足を蟻頭の指に絡ませ、さらに締め上げる力を強める。ぎりぎりと指が軋み、怪物は悲鳴に似た鳴き声を上げた。

 指を襲う激痛に、蟻頭は堪らず手を激しく振ってゲイルを振り払おうとする。だががっしりと指にしがみついたゲイルは、振り回されながらも執拗に蟻頭の指を締め付けた。

 「オラぁっ!」

 気合いとともに、ゲイルは蟻頭の丸太のような指をへし折り、そのまま力任せに引きちぎる。

 蟻頭の絶叫が一際大きくなる。ゲイルは怪物の指を引きちぎった反動を利用して跳躍した。

 地面に降り立ったゲイルは、抱えていた怪物の指を放り捨てた。どさりと地面に落ちた指は、濃い緑色の体液を撒き散らしながらのた打ち回る。蟻頭も激痛のあまり暴れていた。

 「マジであったま来たぜこの野郎。虫らしく踏み潰してやるから覚悟しろ!」

 蟻頭に向けて指をさすと、ゲイルは両足を開き腰を落とす。ゆっくり肺と腹の中の空気を全て絞り出すと、大きく深く息を吸う。

 「我――最強なり」

 ゲイルの発した言霊キーワードによって体内の内燃氣環ソウルジェネレイターが発動し、全身の筋肉が制限から解放される。戒めを解かれた肉体が歓喜の声を上げ、その高揚感がゲイルの闘争心をさらにかき立てる。

 「行くぜっ!」

 低くしゃがみ込んだゲイルは、全身のバネを最大限に溜める。地面を穴が開くほどの力で蹴り、音速に近い速度で空へと舞い上がった。

 数秒で森を見渡せるほどの上空に到達する。下を見ると、蟻頭の姿が豆粒ほどに見えた。

 体が重力に捕らえられ、上昇が止まる。

 「体がダメなら頭を潰せばいいって、昔から決まってんだよ」

 雲に手が触れる上空で、ゲイルはにやりと笑う。

 自由落下が始まり、ゲイルの体が下に引っ張られる。それと同時に右足を高く振り上げて、自分の体を縦に連続回転させた。

 高度が下がるにつれ、落下速度と回転速度が上がり、ゲイルは車輪のように大気を切り裂きながらまっ逆さまに落ちた。

 「くらえ! 必殺、超重力踵落とし《グラビトンボマー》!」

 遠心力で加速した踵が、落下速度をプラスされて蟻頭の頭頂部に炸裂する。

 轟音が生まれ、蟻頭の首が衝撃に耐え切れずに体にめり込む。

 完全に頭が沈み込んでも勢いは止まらず、上半身がめきめきと虫の腹に飲み込まれ、蟻頭は縦に押し潰されていく。強制的に押し込まれた上半身に圧迫され、虫の腹が破れ体液が噴出した。

 大気との摩擦で、全身から煙を立ち上げたゲイルが足を離す。地面に着地して見上げると、蟻頭の体長は半分以下になっていた。


 すっかり体積の小さくなった蟻頭の腹を、ゲイルが爪先で軽く蹴る。だが蟻頭は脈動しながら体液を垂れ流すだけで動かなかった。

 蟻頭が完全に沈黙した事を確認し、ゲイルは「フン」と鼻を鳴らす。

 「虫ごときが俺に勝とうなんて、百億万年早いぜ」

 「そのわりには苦戦していたようですが?」

 「うおっ、びっくりした!」

 いきなり背後に現れたサムに、ゲイルはびくっと体を震わせる。

 「何だよサム、今頃追いついたのか? 相変わらずドン亀だな、お前は」

 「私は重力下では、本来の機動性を発揮できませんからね。それと――」

 「あ……」

 サムが両手に抱えている少女を見せると、ゲイルは忘れていた大事な何かを思い出したような顔をする。

 「誰かさんが目的を忘れて派手に暴れまわっているので、私が保護しておきました」

 サムの皮肉に、ゲイルが「ぐ……」と唸る。蟻頭に叩きつけられた事で頭に血が上り、今の今まですっかり少女の事を忘れていたのだ。

 ゲイルは少女の顔を覗き込む。気を失っているのか、サムの手の中でぐったりとしていた。

 「おい、動かねえぞ。まさか死んでるのか?」

 「いいえ。気を失っているだけです」

 「そうか……」

 ほっと息をつくゲイル。注意して見れば、少女のささやかな胸が小さく上下している。特に目立った外傷はなさそうなので、本当にただ気絶しているだけなのだろう。

 少女が無事なのを確認すると、やおらゲイルは溜め息をついて肩を落とした。手を頭の後ろに組み、わざとらしくがっかりしたポーズをとる。

 「どうしました?」

 「しかしうっすい胸だな。こいつ本当に女か? ったく、参ったな……」

 「まだ少女と呼んだほうがよい年齢のようですが、それが何か?」

 「いや、どうせ助けるなら巨乳の美女が良かったなあって思ってな」

 「はあ……」とサムが呆れる。鉄仮面の通気孔から、溜め息に似た排気が漏れる。

 「こんなツルペタを助けるために苦労したなんて、とんだ無駄骨だぜ。俺は胸がメロン大以下の奴は、女と認めないポリシーを持っている事に定評があるんだ。知ってるだろ?」

 両手を胸の前で動かして豊満な胸をジェスチャーするゲイル。サムは奇妙な動きをする相棒を、文字通り無機質な目で見ていた。

 わずかな沈黙の後、サムは少女をそっと木陰に横たえた。そして蟻頭の死骸に近づき、しげしげと眺める。

 「この生物……奇妙ですね」

 「無視か? 俺の話はスルーか?」

 「え? ああ、すみません。よく聞こえませんでした」

 「お前はその気になれば、一キロ先で落とした針の音でも聞こえるだろ。それとも何か? 俺の声は、お前のセンサーでも感知できない特殊な音波なのか?」

 唾を飛ばして喚く相棒をよそに、サムは蟻頭の腹の表面を左手でなでる。

 突然サムの右手の甲から剣が飛び出し、一秒間に一万回振動する超振動ブレードの刃が低い唸りを上げる。

 左手で当たりをつけた箇所に、ブレードの刃が突き刺さる。ゲイルの渾身の蹴りですら破れなかった体皮に、刃はあっさり飲み込まれた。そのまま刃で円を描き蟻頭の腹をくり貫くと、躊躇なく腕を突っ込み何かを掴み出した。

 「ゲイル、これを見てください」

 「全部無視かよ!?」

 目の前に突き出されたサムの手を、ゲイルが叩く。粘液のついた握り拳がぬちゃりと音を立てて開かれると、ゲイルの顔が徐々に真剣になる。サムの掌には虹色に淡く輝く、クリスタルに似た物体が乗っていた。

 「これは……」

 「科学的に圧縮されたエネルギーの塊です」

 「と言うと、この化け物は人工的に作られたものだって事か」

 当たりだな、とゲイルはにやりと笑う。

 「この惑星には絶対ありえない物質ですからね。間違いないでしょう。恐らくこの物体は、怪物の構築及び原動力として機能している核のようなものです。ただエネルギーの圧縮率が異常で、これ一つでも小さな発電所程度のエネルギーを有しています」

 そうか、とゲイルは頷く。クリスタルは仄かに明滅を繰り返し、ゲイルの顔を照らしている。蟻頭の命の源であったクリスタルの光はとても美しく、そして儚かった。

 二人がクリスタルを眺めていると、乾いた音を立てて、蟻頭の死骸に亀裂が入った。巨体が形を失っていく。地面に落ちた破片はさらに細かく崩れ、砂となって風に舞った。

 「核を抜いたため、肉体が崩壊を起こしているようですね」

 「所詮は仮初めの命ってやつだ。命を与えられた操り人形も、電池が切れればただのガラクタに逆戻りか……」

 無言になるサムに、ゲイルは「悪い。忘れろ」とばつが悪そうに言った。

 二人はしばらくの間、崩れ行く蟻頭の姿を黙って見守った。

 蟻頭は、五分ほどで完全に砂の山に変わった。砂山もいずれ風に飛ばされてなくなるだろう。残ったのは、ゲイルの拳ほどの大きさのクリスタルだけ。サムは、掌でぼんやりと光るクリスタルと砂山を交互に見た。

 「感傷か? お前にしてはセンチメンタルだな」

 そう言うとゲイルは、サムの手からクリスタルを取り上げた。クリスタルにまとわりついて蟻頭の体液を、顔をしかめながらズボンの尻で拭く。

 「いいえ、そういうわけでは……」

 「くだらない事を考えている暇があったら、とっととコイツのデータをキャサリンに回せ。恐らく今回の標的ターゲットに繋がる鍵だからな」

 「了解しました」

 サムの両目が赤く光り、ゲイルの掌に置かれたクリスタルをスキャンする。データを採取すると、衛星軌道上で待機している宇宙船のメインコンピューター『キャサリン』に転送した。

 サムからの転送データを受信したキャサリンは、すぐさま惑星全体のサーチを開始した。

 「サーチ開始しました」

 サムの報告を受けると、ゲイルは持っていたクリスタルを無造作に腰のポーチに突っ込んだ。あまりの自然な動作に、さすがのサムも思わず見逃してしまうところだった。

 「ちょ……もう少し丁寧に扱ってください。もしそれが爆発したら、いくら貴方でも無事では済みませんよ」

 「ったく心配性だな……お前は俺の母親か?」

 「そういう問題ではありません」

 「いちいち細かい事を気にしているとハゲるぞ」

 「元から髪なんて生えてませんよ」

 「ははっ、そうだったな」

 サムは上手く話を反らされた事に気がついたが、ゲイルが楽しそうに笑っているのを見てそれ以上何も言わなかった。

 「それじゃあ獲物の巣穴が見つかるまで、どこかで待機するか。無闇に歩き回っても、腹が減るだけだからな」

 大きく伸びをすると、ゲイルの腹が鳴る。そしてそれに呼応するように、少女が小さな声を上げた。

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