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古着屋アップル 第9話 短編版

作者: 岩田 ヒロ
掲載日:2026/06/01

 青学の受験日。眠れないまま朝を迎えた。パパもママも静かで、逆にそれがありがたかった。古着屋アップルで買ったコートを着て家を出る。


 駅で凛と合流すると、凛はアップルのマフラーと手袋。天気予報では雪らしい。緊張しすぎてそんなことも忘れていた。


 渋谷キャンパスに着くと凛と別れ、ひとりで教室へ。スマホの電源を切った瞬間、世界から切り離されたような気がした。頼れるのは自分だけ。


 ――今日だけは、男の子のことは考えない。

 そう決めて試験に臨んだ。


***


 全科目が終わり、スマホをつけると凛から「ピザまんで乾杯しよ」。二人で食べながら、ようやく受験が終わった実感が湧いてきた。


「卒業記念、ディズニー行こうよ。誰誘う?」

「クラスの男子かな」

「湊は彩葉と行くでしょ?」


 湊のことは、もう追いかけなくていい気がした。


「ねぇ、凛って蓮のこと好き?」

「うん」


 やっぱり。

 凛は蓮が好きで、蓮はあたしを気にしていて、あたしは湊が好きだった。

 でも湊には彩葉がいる。


 その複雑さを雪が静かに覆っていく。


***


 家に帰るとキムチ鍋。眠気に負けて部屋に戻ると、蓮からライン。


「明日、原宿の古着屋行かない?」

 二人で――?


 “友達から始めよう”と言うチャンスかもしれない。

「いいよ」と返した。


***


 翌日、蓮と原宿へ。凛に悪いと思いながらも、気持ちを整理するために行くことにした。


 アップルに着くと店長が「受験終わったんですね」と声をかけてくれる。

 春物のジャケットを試着しながら、蓮と服の趣味が似ていることに気づく。楽しい。

 でも言わなきゃいけない言葉が喉につかえたまま。


「店長さん、バイト募集してますか?」

 思わず聞いていた。

 大学に受かったら、ここで働きたい。


 帰り道、蓮が言う。

「合格発表、待つだけだね」


 発表なんて見たくない。

 凛に蓮と出かけたことも言いたくない。

 時間が止まればいいのに。


 それでも、発表の日はやってくる。

本編はこちらから

https://ncode.syosetu.com/n0234lr/9

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