古着屋アップル 第9話 短編版
青学の受験日。眠れないまま朝を迎えた。パパもママも静かで、逆にそれがありがたかった。古着屋アップルで買ったコートを着て家を出る。
駅で凛と合流すると、凛はアップルのマフラーと手袋。天気予報では雪らしい。緊張しすぎてそんなことも忘れていた。
渋谷キャンパスに着くと凛と別れ、ひとりで教室へ。スマホの電源を切った瞬間、世界から切り離されたような気がした。頼れるのは自分だけ。
――今日だけは、男の子のことは考えない。
そう決めて試験に臨んだ。
***
全科目が終わり、スマホをつけると凛から「ピザまんで乾杯しよ」。二人で食べながら、ようやく受験が終わった実感が湧いてきた。
「卒業記念、ディズニー行こうよ。誰誘う?」
「クラスの男子かな」
「湊は彩葉と行くでしょ?」
湊のことは、もう追いかけなくていい気がした。
「ねぇ、凛って蓮のこと好き?」
「うん」
やっぱり。
凛は蓮が好きで、蓮はあたしを気にしていて、あたしは湊が好きだった。
でも湊には彩葉がいる。
その複雑さを雪が静かに覆っていく。
***
家に帰るとキムチ鍋。眠気に負けて部屋に戻ると、蓮からライン。
「明日、原宿の古着屋行かない?」
二人で――?
“友達から始めよう”と言うチャンスかもしれない。
「いいよ」と返した。
***
翌日、蓮と原宿へ。凛に悪いと思いながらも、気持ちを整理するために行くことにした。
アップルに着くと店長が「受験終わったんですね」と声をかけてくれる。
春物のジャケットを試着しながら、蓮と服の趣味が似ていることに気づく。楽しい。
でも言わなきゃいけない言葉が喉につかえたまま。
「店長さん、バイト募集してますか?」
思わず聞いていた。
大学に受かったら、ここで働きたい。
帰り道、蓮が言う。
「合格発表、待つだけだね」
発表なんて見たくない。
凛に蓮と出かけたことも言いたくない。
時間が止まればいいのに。
それでも、発表の日はやってくる。
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