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静かなる乱入

翌日。

朝から嫌な予感が胸を圧していた。

教室に姿を現した日向 悠真の顔は、昨日よりもさらに腫れていた。

それを隠すように俯き、笑ってみせる。


「だ、大丈夫だって。ちょっと寝不足なだけだから」


(……愚か者め)


昨日の光景を思い出す。

疾風会の連中に囲まれ、殴られ蹴られ、それでも声を上げぬ姿。

その必死さがなおさら我を苛立たせた。


なぜ貴様が痛みに耐えねばならぬのだ――。




放課後。

悠真は再び「先に帰る」と言い残し、足早に教室を出た。

昨日と同じだ。

ならば、今日も同じ結末が待つ。


我は無言で立ち上がり、影のようにその背を追った。


人気の少ない裏庭。

案の定、そこには数人の上級生が待ち構えていた。


「おっ、来たな最弱!」

「昨日の続きだ。声もっと出せよ?」

「ほら、こいつはゼロ判定の腰巾着だ! 笑えよ!」


笑い声が響き渡る。

悠真は再び壁際に押し付けられ、腕を捻られ、蹴りを浴びせられていた。

抵抗はできない。

ただ唇を噛み、必死に耐えるだけ。


上級生どもはその姿を玩具のように楽しんでいた。

一人が彼の胸ぐらを掴み、無理やり顔を上げさせる。


「なあ? ゼロの隣に座ってたら強くなれると思ったか?」

「EとD、仲良く最弱コンビで沈んでろ!」


拳が振り上げられる――




その瞬間、場の空気が凍りついた。


「――くだらぬ」


低く響く声。

振り向いた上級生の視線の先、そこに我は立っていた。

夕陽を背に、影が長く伸びる。

その姿だけで、空気が一変する。


「なっ……Eランク!?」

「おい、なんでここに……!」


我はゆっくりと歩み出た。

靴音が、乾いた地面に冷たく響く。


「昨日の分で満足せず、今日も同じ遊戯か。

飽きもせぬ虫どもだな」


「て、てめぇ……何様のつもりだ」


「何様かと問うか。――王に決まっていよう」


上級生どもの顔が引き攣る。

我が瞳には、冷たい炎が宿っていた。


「その手を離せ」


「は、はあ? Dランク庇ってどうすんだよ」

「お前も一緒に潰されたいのか?」


「勘違いするな。

我は虫ケラを庇う気など毛頭ない」


一拍置いて、静かに言葉を落とす。


「――ただ、不愉快なのだ」


沈黙。

その場の誰もが、次に何が起こるかを理解した。


疾風会の連中は歯を鳴らし、無理に笑って見せる。


「へっ、ゼロ判定がイキりやがって!」

「じゃあ見せてもらおうか、最弱王様よ!」


拳が振り上がり、空気が張り詰める。


我の視線は冷たく、そして揺るぎなかった。


(――虫ケラども。

その愚かさ、我が直々に叩き潰してやろう)


静かなる乱入。

制裁の刻は、もう目前に迫っていた。




◆キャラクター紹介(第7話)


【日向 悠真ひなた・ゆうま

ランク:D

異能:振動感知センス・バイブレーション

立ち位置:二日連続で疾風会に狙われ、見世物にされる。耐え抜こうとするが限界に近い。


【派閥《疾風会》】

学園下層の小派閥。

弱者狩りを見世物にして笑い者にする。

今回は悠真を玩具にしていたところに主人公の乱入を受ける。


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