余韻と囁かれる真実
轟くような歓声が、試合場を包み込んだ。
観客席の誰もが立ち上がり、勝者の名を叫んでいる。
「智真だ! 篠宮が勝ったぞ!」
「一年Bクラスが……二年Aクラスを倒した!」
「信じられない……いや、信じるしかない!」
歓声とざわめきは混じり合い、やがてひとつの熱狂へと変わっていった。
篠宮智真は、試合場の中央で静かに一礼した。
柔らかな笑みを浮かべるその表情には、“余裕”と“冷徹”が同居していた。
一方、城ヶ崎漣は膝をつき、荒い息を繰り返していた。
敗北の現実に拳を叩きつけ、それでも最後の意地を見せる。
「……ちっ……この俺が……!」
それでも濁った瞳はなく、悔しさの奥に確かな誇りがあった。
「一年坊主……いや、篠宮智真……お前の強さ、認めてやる」
その言葉を残して、漣は支えを失ったように崩れ落ちた。
審判が駆け寄り、介抱を始める。
「なんだよあの余裕……!」
「本当にBクラスなのか!?」
「いや、あれはもうBじゃねえ。A以上だ……!」
「篠宮智真……今後間違いなく注目されるだろ」
「なんでBにいるんだ……裏があるに決まってる……」
観客の間で、噂と疑念が爆発的に広がっていく。
「Bクラスに潜む異質な強者」――その評価が学園全体に刻まれていった。
生徒会席。
会長・神威蓮司は薄く笑みを浮かべる。
「……やはり、面白い。この学園にはまだ未知の駒が眠っている」
副会長・天城緋彩は冷徹な眼差しで篠宮を見つめる。
「力押しの漣を捌ききるとは……冷静さと戦術眼、そのどちらも規格外です」
書記・桐生澪奈は記録帳に素早く筆を走らせる。
「篠宮智真。潜在評価、Aクラス以上。再検討が必要です」
会計・黒瀬征士は拳を握りしめ、苛立ちを隠せなかった。
「チッ……新入生のくせに、余計な注目を集めやがって」
観客席の後方。氷室拓真は篠宮を見下ろしていた。
その眼差しには敬意と挑戦心が混ざっている。
「……篠宮さん。やはり貴方は……Bクラスに収まる器ではありません」
静かに拳を握る。
「ですが……その時こそ、私が証明いたします。
真に頂点に立つのが誰であるのかを」
敬語に込められたのは、忠誠と対抗心の両方だった。
日向悠真は観客席から、友人である篠宮の姿を見つめていた。
唇を噛みしめる。
「……智真……いや、篠宮……」
同じ一年、同じ新入生。
だが自分とはあまりに隔絶した存在。
胸に去来するのは畏怖と尊敬、そして焦燥。
「俺も……戦う理由を見つけなきゃ……置いていかれる……」
拳を強く握りしめた。
審判の声が再び響く。
「――続いての試合を発表する!」
観客の熱気がさらに高まる。
「次は誰だ……!?」
「さっきの篠宮以上に盛り上がるのか……?」
張り詰めた空気の中、新たなカードの名が告げられようとしていた――。
◆キャラクター紹介(修正版)
篠宮 智真
所属:凰嶺学園 一年Bクラス
表向きは気さくな新入生。裏の顔は冷徹な知略家で、《疾風会》の真のリーダー格。
実力はAクラス以上。なぜBに留まるかは謎。
今回、二年Aクラスの城ヶ崎漣を破り、その実力が学園全体に知られる。
城ヶ崎 漣
所属:凰嶺学園 二年Aクラス
豪放磊落な性格の剛者。異能は肉体強化型。
二年間Aクラスを維持した強豪だが、篠宮の戦術の前に敗北。
最後まで誇りを失わず、篠宮の力を認めた。
日向 悠真
所属:凰嶺学園 一年Dクラス
弱者の代表的存在で、ツッコミ役かつ振り回され役。
主人公にとっての相棒候補であり、成長していく人物。
篠宮の戦いを見て焦燥し、自分の戦う理由を求め始める。