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静かなる策士、豪拳を受ける

試合場に響く鐘の音とともに、篠宮智真と城ヶ崎漣の戦いは中盤へと突入した。


観客の視線は一点に集中する。

先ほどの一撃――漣の豪拳を紙一重で避け、まるで舞うように立ち続ける篠宮の姿が脳裏から離れない。


「……おい、見たか?」

「漣先輩の拳を避けやがったぞ!」

「ありえねえ……普通なら骨ごと砕けてる!」


一年生たちの困惑。

二年生や三年生の間にも、次第に「ただのBクラスじゃない」という声が広がっていた。




漣は吠えるように地を蹴った。

「小細工で逃げ回るか! だったら潰れるまで追い詰めてやる!」


再び拳が振り下ろされる。

その衝撃で床石が砕け、破片が弾丸のように飛び散った。


篠宮は身を翻し、破片の間をすり抜けるように滑る。

その動作はまるで“舞”だった。


「速い……っ!」

「いや、違う。あれは――見切っている」


観客の驚愕は増すばかりだ。


漣は苛立ちを募らせ、息を荒げて吠えた。

「ちょこまか逃げ回りやがってぇ!」


その時、篠宮の目がわずかに光を帯びた。

「――逃げているんじゃない。観ているんだよ」


声は穏やかだが、その言葉の意味に漣の背筋が冷えた。




生徒会席。

神威蓮司は顎に手を当て、口元に笑みを浮かべていた。

「……なるほど。あの立ち回り、やはり只者ではない」


天城緋彩が冷静に言葉を重ねる。

「分析と回避。あれは戦術眼です。漣先輩の力を計っている」


桐生澪奈は筆を走らせながら頷いた。

「戦闘データを蓄積している……単なる回避ではありません」


黒瀬征士は苛立ちを隠さず舌打ちした。

「分析だかなんだか知らねえが、力の差は埋められねえだろう」


会長の目は鋭さを増す。

「埋めるかどうか……それを見届けるのが面白いのだ」




観客席の後方で、氷室拓真はじっと篠宮を見据えていた。

彼の瞳は冷徹だが、その奥にはわずかな緊張が宿っている。


「……篠宮さん。やはり貴方は……」


声はかすかに揺れ、しかしすぐに静かな敬意へと戻る。

「この場に姿を現せば、誰もが気づいてしまうでしょう。

貴方が本来――Bクラスには収まらない存在であることに」


拳を握る氷室。

「ですが……その時こそ、私が証明いたします。

頂点に立つのが誰であるのかを」




再び漣の巨拳が襲い掛かる。

観客席からは悲鳴が上がった。

「避けられるか!?」

「今度は無理だ!」


しかし篠宮は一歩も引かず、逆に一歩前へ踏み込んだ。


「……っ!」

観客が息を呑む。


漣の拳が目前に迫る――その刹那、篠宮は体をわずかに捻り、拳をすり抜けるようにかわす。

そしてすれ違いざま、軽く指先で漣の腕を弾いた。


「な……っ!?」

漣の身体がわずかに流れ、足が止まる。


篠宮は静かに告げる。

「力は確かに圧倒的だ。だが……その全てを預けるのは、危うい」


その余裕。

その声に、観客は背筋を粟立たせた。


「智真……ただの新入生じゃない……!」

「なんだあの戦い方……完全に格上だろ!」


観客の評価が一変しつつあるのを、漣は肌で感じていた。

だが、だからこそ吠える。


「なら……その余裕ごと叩き潰す!」


試合はさらなる激突へ――。




◆キャラクター紹介


篠宮 智真しのみや・ともまさ

所属:凰嶺学園 一年Bクラス

表向き:気さくで誰にでも話しかける人懐っこい新入生。

裏の顔:冷静沈着な知略家。実力はAクラスに匹敵し、なぜBに留まるのかは謎。

戦いでは“観察と分析”を基盤とし、余裕を見せながら敵を追い詰める。


城ヶ崎 じょうがさき・れん

所属:凰嶺学園 二年Aクラス

豪放磊落な性格で、肉体強化系の異能を駆使する剛者。

二年間Aクラスを維持し続ける強豪で、力で相手を粉砕するのを信条とする。


氷室 拓真ひむろ・たくま

所属:凰嶺学園 一年、《疾風会》副リーダー格。

冷静沈着で常に篠宮を観察している。

篠宮に対しては常に敬語で接し、忠誠と畏敬を込める。

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