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力と水音の幕開け

「次の試合を発表します――」


アナウンスの声が講堂を震わせる。


「Cクラス一年、《高槻 颯太》!

対するは、Dクラス一年、《三輪 七海》!」


その瞬間、観客席がざわついた。


「おいおい、高槻だってよ!」

「Cクラスの怪力男か……やべぇぞ」

「相手、三輪って……小柄な女子だろ? 大丈夫かよ」


舞台の空気は一気に熱を帯びた。

強者と弱者。

巨躯と小柄。

力と知略。

対照的な二人の構図が、観客の心を掻き立てていた。


俺はごくりと唾を飲み込んだ。

(颯太……名前だけは聞いたことがある。

力押しでねじ伏せるタイプらしいけど……七海はどう戦うんだ?)


隣で真凰が笑う。

「おもしろい組み合わせよ。

巨壁と小波……されど小波も時に岩を穿つ。さて、どちらが舞台を制すか」




舞台にまず姿を現したのは高槻颯太。

短く刈り込んだ髪、広い肩幅、隆々とした腕。

制服の上からでも筋肉の厚みが伝わり、観客席から「おおっ」と歓声が漏れた。


「……高槻颯太だ。手加減はしねぇ。立つなら覚悟して来い」


低く響く声。

その圧に、周囲の空気が震えるようだった。


「相変わらずゴツいな」

「マジで拳で人を砕けそうだ」


観客がざわつく。


そして、反対側から現れたのは三輪七海。

肩までの黒髪を結び、小柄な体で舞台に上がる。

華奢でありながらも、瞳には怯えの色はない。


「Dクラス、三輪七海。私は……負けない」


凛とした声に、一瞬観客が静まり返った。

その小さな体からは想像できない確信の響き。


「七海……小さいけど、気が強いな」

「いや、怖じ気づいてないぞ」

「もしかして……何か策があるのか?」




観客席からは半信半疑の声が飛ぶ。

「どうせ一撃で終わりだろ」

「いや……あの目はただ者じゃねぇぞ」


生徒会室でも話題が始まっていた。


黒瀬征士が不機嫌そうに呟く。

「また弱者の無謀か。見るに値せん」


だが、桐生澪奈は冷静に反論する。

「いいえ、征士。Dクラスから序列戦に残っている時点で、彼女には力がある。

力押し相手にどう立ち回るか、観察する価値はあるわ」


緋彩は感情を込めぬ声で付け足す。

「水を操る異能か。防御と回避に特化しているのなら……勝機はゼロではない」


会長・蓮司は口元に笑みを浮かべる。

「さて……舞台は力の象徴と、抗う小さき波。

群衆がどちらを選ぶか、見ものだな」




氷室拓真は腕を組み、鋭い眼差しで舞台を見つめていた。


「……高槻は、ただの力押しじゃない。

あれは本物の肉体強化だ。だが、型にハマれば単調。

三輪……お前がどう抗うか、見せてもらおうか」


小さく呟き、口元を歪める。

その視線は、既に次なる「人材の可能性」を計り始めていた。




舞台中央で二人が対峙する。


颯太が拳を鳴らし、低く笑った。

「悪いが、俺は手加減できねぇ。潰すつもりで行く」


七海は一歩も引かず、冷ややかに睨み返した。

「いいよ。潰せるもんなら潰してみなよ。

私は……簡単には沈まない」


観客がざわめく。


「おお……言い返したぞ」

「小さいのに、強気だな」

「どっちが勝つんだ!?」


審判が手を挙げ、声を張り上げる。


「――始め!」


その瞬間、颯太の拳が地を叩き割るように前へ飛び出した。

対する七海は軽やかに身を翻し、手を広げる。


水の波紋が、空中に浮かび上がった。




◆キャラクター紹介(第41話)


【高槻颯太】

Cクラス一年。武骨な力押しタイプ。肉体強化で圧倒する剛腕の使い手。

一撃必殺の自信を持ち、弱者を「潰す」と宣言する。


【三輪七海】

Dクラス一年。小柄だが冷静。水を操る異能を用いて防御・撹乱を得意とする。

強気な言葉で颯太に挑み、観客を驚かせる。


【日向悠真】

観客席で試合を見守り、不安と期待を抱く。

七海の言葉に「ただの弱者じゃない」と感じ始める。


【主人公(真凰)】

対照的な二人を「巨壁と小波」と称し、冷徹に愉しむ。


【生徒会】

白石と同様に二人を観察。七海に可能性を見出す者もいる。


【氷室拓真】

高槻の単調さと、七海の潜在性に注目する。

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