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烙印・Eランク

入学式は終わった。

だが講堂の空気は冷めるどころか、むしろざわめきと熱気を増していた。


「聞いたか?」「ゼロ判定……」「Eランクだってよ」


生徒たちの囁きは一人の少年に集中していた。

壇上で神威 蓮司が「力なき者は去れ」と宣告した直後、

その力を証明するはずの適正検査において――彼だけが異質な結果を叩き出したのだ。


水晶が反応しなかった。

二度の検査でも、数値は出なかった。


「……判定不能、Eランクと記録する」


嵯峨 玄道の声は冷徹に響き、会場を震わせた。




「二度目でそれか。やはり、面白いな」


その時、神威 蓮司の口から洩れた言葉は、会場にさらなる波紋を広げた。

二度目――?

新入生たちの間にざわめきが走る。


「二回やったのか?」「それでもE?」

「やっぱり壊れてんじゃないの?」

「いや……逆に気味悪くねえか?」


疑念と嘲笑、好奇と恐怖。

それら全ての視線を浴びながらも、転生魔王は堂々と舞台に立っていた。


(ふむ……二度目でも測れぬとは。

やはり、この世界の尺度では我を捉えることはできぬか)


彼は小さく笑みを浮かべた。

その笑みは嘲笑とも、愉悦とも取れるものだった。




壇上の嵯峨が補足する。


「補足しておく。凰嶺学園では、Dランク以上が合格基準だ。

それ以下は補欠、あるいは淘汰対象とされる。

特にEランクは……生存を許されぬ弱者の烙印だ」


会場の空気が冷え切る。

その言葉は残酷な現実を突きつけ、同時にEランクの少年に死刑宣告を下すような響きを持っていた。


「終わったな」「最初の序列戦で消えるだろ」

「いや、むしろいい見世物になる」

「笑わせてくれるじゃねえか、ゼロ判定」


周囲の声は刃のように突き刺さる。

だが彼は平然としたまま、むしろ愉快げに肩を揺らした。


「……人間とは、つくづく愚かだな」


声にした瞬間、近くにいた生徒がぎょっとした顔を見せ、数歩下がった。

その声音には、言葉以上の威圧が込められていたからだ。




神威 蓮司はその光景を黙って眺めていた。

冷徹な眼差しの奥に、かすかな興味が揺れている。


(やはり……この男、ただの“無能”ではない。

測れぬという事実そのものが異常だ)


蓮司の口元にかすかな笑みが浮かぶ。

観客席からは誰もその変化に気づかない。

だが当の魔王だけは――確かにそれを捉えていた。


(ふふ……やはり面白いな、学園の王よ。

この檻の盤上で、我がいかに暴れるか――よく見ておくがいい)


嘲笑と期待が入り混じる視線を一身に受けながら、

転生魔王は“最弱”としての物語を踏み出した。




◆キャラクター紹介(第3話)


【主人公(転生魔王)】

ランク:E(測定不能/ゼロ判定)

異能:不明(魔王の力だが、この世界の測定器では判別不能)

性格/立ち位置:尊大な魔王口調を崩さぬ少年。

二度目の検査でも判定不能となり、“異質”として烙印を押された。

最弱の仮面を被りながら、内心では支配者の愉悦を抱いている。


【神威 蓮司かむい・れんじ

ランク:序列第1位(S相当)

異能:不明(伏線として非公開)

性格/立ち位置:生徒会長。Eランク判定を「二度目」と言い、唯一その異質さに興味を示した。


【嵯峨 玄道さが・げんどう

ランク:教員

異能:非公開

性格/立ち位置:制度を冷徹に説明し、

「D以上が合格、Eは淘汰対象」と告げることで新入生に残酷な現実を突きつけた。


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