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冷徹なる秩序

「次戦、特別戦枠――生徒会副会長、天城緋彩!」


アナウンスと共に舞台袖から姿を現した彼女は、凍りつくような冷気を纏っていた。

長い黒髪を背に流し、制服の裾すら乱さない歩み。

無表情のその瞳には、観客すら存在していないかのような冷徹さがあった。


「ひ、緋彩様だ……!」

「副会長が自ら舞台に立つなんて……」


観客席がざわめき、同時に張り詰めた空気が広がる。




「対するは――Bクラス二年、《村瀬 剛》!」


呼ばれたのは大柄の少年。

筋骨隆々とした体格で、異能は〈鋼皮〉。

身体を鋼のように硬化させ、圧倒的な防御力を誇る。


「よし……! ここで勝てば俺の名は一気に広まる!」

村瀬は拳を鳴らし、歓声を浴びるように観客に応えた。


「Bクラスの実力者だ!」

「鋼皮の村瀬なら、副会長とも渡り合えるかも!」


ざわめきが希望に変わる。


だが、緋彩の眼差しは氷のように冷たかった。


「……不要な雑音」


短く吐き捨てるように呟いた声に、観客が一瞬静まり返る。




「始め!」


審判の合図と共に、村瀬は一直線に突進した。

鋼のように硬化した拳が、空気を裂いて振り下ろされる。


「喰らえ、副会長!」


ドォンッ!


轟音が舞台を揺らした――が。


緋彩は動かない。

ただ指を鳴らしただけ。


「――《律制・静止》」


次の瞬間、村瀬の拳は寸前で止まった。

まるで見えない鎖に絡め取られたかのように。


「……な、何だこれ……!? 動かねぇ!」


観客席がざわめく。


「動きが……止められてる!?」

「いや、まさか……副会長の異能は――!」




緋彩は淡々と歩み寄る。

表情に感情はない。

瞳は冷徹に村瀬だけを射抜いている。


「秩序を乱すものは、ここで固定する」


彼女の声が響いた瞬間、村瀬の全身がさらに縛られていく。

硬化した鋼の肉体すら、軋む音を立てて拘束される。


「ぐっ……! クソッ、俺は負けねえ!」


必死に抵抗し、力を込める村瀬。

だが緋彩は一歩も揺らがない。


「無駄」


無表情のまま、手を翳す。


「――《律制・崩落》」


舞台全体が震え、拘束された村瀬の硬化が音を立てて剥がれ落ちた。

鋼鉄の防御が砕かれ、彼はその場に膝をついた。




(……強すぎる)


俺は息を呑んだ。

総司の斬撃も恐ろしかった。

だが、緋彩の力は質が違う。


圧倒的な「支配」。

相手の行動を根本から縛り、抗う術を奪う。


「……王を名乗るならば、避けられぬ壁だな」


隣の真凰は、静かにそう呟いた。

その横顔はわずかに愉悦を含んでいた。




村瀬はなおも立ち上がろうとする。

鋼の肉体を限界まで強化し、最後の一撃を狙う。


「まだ……終わってねえッ!」


観客も歓声を上げる。


「村瀬いけー!」

「副会長を倒せ!」


場内の熱気は最高潮に達した。


だが――緋彩の無機質な瞳は、最初から揺れていなかった。


「終わりは、既に決まっている」


その声と共に、次の技が放たれようとしていた。




◆キャラクター紹介(第28話)


【天城 緋彩】

生徒会副会長。冷徹無比、感情を欠いたような少女。

異能〈律制〉:対象の行動や状態を「固定」し、「崩す」ことで支配する。

村瀬の鋼皮を無効化し、圧倒的な支配力を示す。


【村瀬 剛】

Bクラス二年。異能〈鋼皮〉で防御に特化。

名を上げようと全力で挑むが、緋彩の圧倒的支配に追い詰められる。


【日向 悠真

観戦者として緋彩の異能を目撃。

「支配」という異質な強さに恐怖と衝撃を覚える。


【主人公(真凰)】

悠然と観戦し、「避けられぬ壁」と評する。

むしろ楽しむかのように緋彩の力を受け止める。

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