表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/52

会議と進行

序列戦四戦目。黒瀬迅が倒れた翌日の放課後、生徒会室には重い空気が漂っていた。


神威蓮司を中心に、副会長・天城緋彩、書記・桐生澪奈、そして会計・黒瀬征士が揃っている。


「――真凰」


蓮司が静かにその名を口にすると、他の役員たちの視線が集まった。


征士は拳を握り締めたまま、感情を押し殺している。

「……Eランクの仮面を被り、弟を打ち倒した。奴は危険だ。即刻、排除の対象とすべきだ」


言葉は低いが、室内を震わせるほどの熱を帯びていた。


「確かに異常ね」

澪奈が眼鏡の奥の瞳を細める。

「ゼロ判定を二度受けた人間が、Cランクを凌駕するなんて。

……仮に隠された適性があるとしても、測定不能の領域なんて前例がないわ」


緋彩は無機質な声で続ける。

「統計的にはイレギュラー。放置するのは危険です」


征士が勢いよく立ち上がった。

「だから言っている! 今すぐ叩き潰すべきだと!」


その言葉に蓮司は目を閉じ、しばし沈黙した。

やがて口を開く。


「……面白い」


「なに……?」

征士が顔を歪める。


「イレギュラーこそが舞台を面白くする。

王を名乗るならば、序列戦でどう立ち振る舞うか見届けたい。即排除など、退屈だ」


冷淡な声に、室内は再び静まる。

緋彩だけが無感情に頷いた。


「会長の方針に従います」


征士は唇を噛み、椅子に座り直した。

憎悪を抑え込んだ眼差しは、なお真凰を捉えて離さない。





一方その頃、序列戦の会場。

講堂の熱気は再び最高潮に達していた。


「次は誰だ!?」

「黒瀬の敗北で、雰囲気が一気に変わったな!」


観客の熱狂に包まれる中、俺――日向悠真は不安げに席に座っていた。

昨日の試合の余韻がまだ残っている。

真凰の圧倒的勝利にざわつく視線。

そして「次は自分かもしれない」という予感。


「悠真」


隣の真凰が静かに俺を見た。

「恐れるな。舞台に立つ者は、恐怖を超えて初めて名を刻む」


「……わかってるよ」

小さく頷き、俺は拳を握った。





舞台上に、次なる挑戦者たちが呼ばれる。


「第五戦! 出場者は――」


抽選器が回転し、名前が告げられる。


「Aクラス一年、《刃霧 総司》!

対するは、Dクラス二年、《三条 佳奈美》!」


歓声が沸き上がる。


刃霧総司――長身にして冷徹な眼差しを持つ剣士。

異能〈斬界〉、触れたものを寸断する鋭利な力を持つ。


三条佳奈美――しなやかな体躯の少女。

異能〈糸操〉で舞うように糸を操り、敵を絡め取る戦術家。


「うわ……次も強そうだな」

俺は思わず呟いた。


真凰はただ一言。

「……舞台を楽しませてもらおう」





「始め!」


総司が一閃。空気そのものを斬り裂き、舞台に深い溝が走る。

佳奈美は素早く後退し、糸を放つ。透明な糸が陽光を反射し、網のように広がった。


「速すぎる……!」

俺の目では追いつかない速度だ。


観客が歓声をあげる中、糸と斬撃がぶつかり合い、火花を散らす。


「佳奈美、頑張れー!」

「総司、やっちまえ!」


応援の声が飛び交う。


だが舞台を見つめる真凰の瞳は、冷ややかに光っていた。





生徒会室では、征士が拳を握りしめ、冷徹な視線を落としていた。

「……真凰。必ず叩き潰す」


講堂では、悠真が息を呑みながら舞台を見つめていた。

「……負けられない。俺も、俺なりに」


表と裏で、二つの火種が同時に膨れ上がっていく。




◆キャラクター紹介(第25話)


【黒瀬 征士】

生徒会会計。弟の敗北を受け、真凰排除を強硬に主張。

だが会長に止められ、憎悪を胸に秘める。


【神威 蓮司】

生徒会長。即排除ではなく観察を選ぶ。

イレギュラーを「面白い」と評する。


【刃霧 総司】

Aクラス一年。異能〈斬界〉。冷徹な剣士。


【三条 佳奈美】

Dクラス二年。異能〈糸操〉。舞うように糸を操る戦術家。


【日向 悠真】

噂の渦中で不安を抱えつつも、隣に立つ決意を固める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ