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二戦目、牙を剥く

歓声とため息が入り混じる講堂。

小野寺舞花が勇敢に戦い、しかし敗北した余韻がまだ残っていた。


壇上に立つ副会長・天城 緋彩が再び抽選機を回す。

金属球がカランと落ち、番号が告げられる。


「――二戦目。

Bランク・相楽 鷹真さがら・たかま

対するはCランク・白河 悠里しらかわ・ゆうり


ざわめきが広がった。


「相楽か……!」

「あいつは“猛禽”の異名で知られてるぞ」

「白河も曲者だ。これは面白い」


周囲の熱気に、俺は思わず喉を鳴らした。

一戦目とは比べものにならないほど、空気が重い。





「二戦目――始め!」


審判の合図と同時に、悠里の身体から紫がかった煙が広がった。

瞬く間に舞台全体が濃霧に覆われ、姿が見えなくなる。


「くっ……!」

観客席からどよめきが上がる。


(な、何も見えない……!)


俺は思わず身を乗り出した。

煙の中で何が起きているのか、全く掴めない。


だが隣の“王”は腕を組んだまま、微動だにしなかった。


「安っぽい幻術だな」


「えっ……見えてんのか?」


「王の目に映らぬものなど存在せぬ」


(……何そのチート発言!)





煙の中から、悠里の声が響いた。


「さあ、捕まえられるかよ、猛禽さん?」


嘲るような声。

しかし次の瞬間――


「そこだ」


鷹真の声が鋭く走り、煙を裂いて飛び込む影。

空を切る爪のような蹴りが、幻影を打ち破った。


「ちっ、やっぱ速ぇな……!」


悠里が舌打ちする。

だが次の瞬間、別の方向から影が現れる。


「俺はここだ」


「幻影か!」


鷹真の目が閃き、正体を見抜いた。

幻影をすり抜けた刹那、悠里の本体が背後からナイフを振り下ろす。


「っ……!」


観客席から悲鳴が上がる。





だが鷹真の瞳は猛禽そのものだった。


「遅い」


振り返りざま、肘打ちが正確に悠里の腹部を捉える。

空気が震える衝撃音。


「ぐはっ……!」


悠里の身体が宙を舞い、舞台に叩きつけられた。

その瞬間、幻煙が一気に晴れる。


観客席から大歓声。


「やっぱ相楽だ!」

「幻煙を見切った……!」


悠里は呻きながらも、薄く笑った。


「へへ……やっぱ“猛禽”の異名は伊達じゃねえか」


「お前の煙じゃ、俺の目は欺けない」


鷹真が冷ややかに言い放ち、勝負は決した。





俺は震える手で拳を握った。


(Bランク……やっぱり次元が違う……!)


新入生の舞花が全力で抗ったCランク。

それすらも軽く凌駕する強さが、Bランクにはある。


「なあ……俺ら、こんなのと戦うのかよ」


俺が呟くと、隣の“王”は口角を吊り上げた。


「王たる我に相応しい舞台だ。

退屈しのぎには丁度いい」


「……お前、本気でそう言ってんのか」


「当然だ」


その眼差しは、自信でも傲慢でもなく――

まるで“当然の理”のように揺るがなかった。





壇上で、神威蓮司が小さく顎を引いた。

その瞳が、静かに主人公へと向けられる。


(……やはり只者ではないな)


その眼差しは、もう「監視対象」を超えていた。

「試すべき対象」へと変わりつつある。




◆キャラクター紹介(第18話)


【相楽 鷹真さがら・たかま

三年生・Bランク。

異能:〈猛禽眼〉。視覚を極限まで高め、反射速度を極限にまで上げる。

性格:好戦的で自信家。

今回:幻煙を見切り、圧倒的勝利。強者の風格を示す。


【白河 悠里しらかわ・ゆうり

二年生・Cランク。

異能:〈幻煙〉。煙で視覚・嗅覚を惑わす。

性格:皮肉屋で飄々とした態度。

今回:幻影で食らいつくが、Bランクの力を前に敗北。


【主人公】

観戦者。試合を冷笑しつつ「退屈しのぎ」と捉える。

その態度が、悠真の不安と反発を呼ぶ。


【日向 悠真】

観戦者。Bランクの強さを前に圧倒され、自分の弱さを痛感する。


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