[添付]緊張。または、不安。
八話目
「守護」
魔法自分にかけてみること数回。
ようやく上手くできるようになってきた。
この魔法は自分へのダメージを軽減する魔法なので身体はもちろん、服にもかかる。
なので、先生のような確かめ方をしなくても、服に傷がつくかどうかでかかっているかどうかは確かめられるのだ。
さっきのはパフォーマンスみたいなものだったんだろう……恐ろしいが戦闘ではこの程度では済まない。
「この魔法は魔力の強さ、多さ、熟練度で耐久値は変わってくる。戦闘の中、どれだけ防御に割くかを見極めながら使うといい」
はーい、とみんなが返事を返す。
ちょうどチャイムがなった。授業の終わりの合図だ。
「じゃ、休憩だな。食堂に行って昼食をとれ。その後は訓練室に集まってくれ……以上、解散!」
はー、疲れたとみんなが口々に言う。
俺も少し疲れたな……。慣れないことをして肩に力が入ったのか少し凝っている。腹も減っているし、先生の言う通り、昼食を取らないと午後からの訓練は持たないだろう。
肩を回しながら、周りを見ると守道が近づいてきた。
「昼飯、一緒に食べないか?」
「おう、いいぞ」
そんなことを話していると、羽知瑠も近づいてくる。
少し困った顔で、守道の後ろからひょこっと顔を出した。
「僕も、いいかな……?」
「当たり前だ、一緒に食べに行こう……守道もいいか?」
「もちろん!はじめまして、菊水守道だ、守道でいいぞ」
「はじめまして……五式羽知瑠です……!あの僕も羽知瑠で大丈夫です」
二人が挨拶をしているのを見ているとなんだか、大型犬と小型犬の幻覚が見える……。
結構な体格差があるので、二人が縦に並んだら羽知瑠は全く見えないだろう。
「?なに考えてんだ?」
「ああ、いや……なんでもないよ。じゃあ行こうか」
食堂への道中、先ほどの授業の内容を話し合う。
二人もあの授業は新鮮だったみたいだ。
「羽知瑠は持ち上がり組なんだろ?この魔法は習ってないのか?」
「ううん、少し習ったよ……でもあんなことする先生は初めてだからびっくりしちゃった」
「確かにいきなりすぎて驚いたよな」
守道は豪快に笑いながら、羽知瑠は少し怯えながら先ほどの授業での真野先生のパフォーマンスに驚いていた。
話をしながら食堂へ向かっていると
「ちゃお!オレも混ぜてほしいっす!」
もう一つのクラス─2組から、直樹が走ってきた。
よく息が切れないな……陸上部なんだろうか。いや、そもそもこの学園に陸上部ってあるのか?と考えていると、
ぺちぺち
「もぉ~刀真くんったら!オレがいるのに考え事?お空に飛んじゃやーよ!ってね!」
顔を両手で挟まれた……!今首から変な音しなかったか?
大丈夫か?俺の首……!
直樹は相変わらずハイテンションだ。
「なおくん!あんまり乱暴しちゃだめでしょ?」
「うっす……すいません!隊長!以後気をつけます!」
羽知瑠に叱られて直樹は嬉しそうだ。
寂しかったのか?もしかしてクラスではひとりぼっちなんだろうか……。優しくしてやろう。
勝手に一人で直樹の様子を想像して自己完結、満足した。
「お前たち……いつもこんな調子なのか?」
一人テンションに置いていかれている守道は苦笑いをしていた。
ご、ごめん……。わりと最初からこんな感じだったよ……。