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つけるなら、肌

七話目

授業は続く。今度は真野先生の専門の防衛魔法だ。

これができないと普通に戦闘した時に死んでしまうので、みんな真面目に話を聞く姿勢になる。


「さっき教えた魔法は箱を浮かす魔法だったな?これを最初に教えるのは魔力を身体から放出するイメージが全ての基礎として必要だからだ」


「この魔力の放出を身体を守る防護服のように纏わせたり、バリアとして局所的に守ったりする。他にも、放出せずに体内で魔法を発動させて毒を吐き出す、なんてこともできるがこれは中級者向けだな」


ほうほう、なるほど。さっきの授業の内容は本当に基礎の基礎だったんだな。

ここから発展させていっていろんな魔法が使えるようになるんだ……ん?そういえば、昨日出した魔導具の武器も小さくはできたが大きくする方法は教えてもらってないような……?


「で、昨日ピンにした君たちの魔導具だが、大きくする方法を教えなかったのは寮の中で暴れられたら困るからだ。昔、テンション上がって暴れたやつがいてな……それからは次の日に防衛魔法を教える時に伝えることになってるんだ」


まあ、いるよな……初めてもらえた魔導具だ。普通の学生に渡したら一人ぐらいそういうやつがいてもおかしくない。

ちょっとした俺の疑問が解決したところで、先生は


「じゃあまず、魔導具を大きくする方法を教える。その後、防衛魔法で身体の守り方と魔導具を武器として使うことも教えるぞ。真剣に聞かないと怪我するからな!気をつけろよ」


クラスに一気に緊張が走る。ここからが本番だ。

真野先生の指示でピンに手を添える。


「やることは昨日の逆だ。今、手で触れているピンを意識しながら魔力を流し込む。それがだんだんと大きくなるイメージ……そして流す魔力を少しずつ増やす」


真野先生が言った通りにやると、魔導具である俺の刀がピンの形から徐々に大きくなる。

昨日見た大きさまで大きくなったところで浮かんでいる刀を手に持つ。


軽く刀を傾けて状態を見る。

うん、俺の刀だ。カッコいい!

周りのみんなもそれぞれ自分の魔導具をあらためて観察しているみたいだ。

よく見るといろんな種類があるな……前の席の女の子はグローブのような武器だった。


かっ…

かっこいい〜〜〜!!!!!

すごく清楚な紫色の長い髪とスラッとした綺麗な姿勢、それに相反するかのように、グローブは荒々しいゴツゴツとした殺傷力の高そうな感じ…!

それぞれにギャップがあって、よりかっこよさを引き出している。


となりは守道だ。彼の高身長に合った大きな薙刀は、かなり重そうで一撃でも喰らったら鈍い痛みが走りそうだ。

そもそも軽々と持っているが重くないのだろうか?


「守道、それ重くないか?」


「いや?特に重くはないぞ」


「持たせてもらってもいいか?」


「おう!いいぞ!」


守道の薙刀と俺の刀を交換しようとした、が重すぎて持とうとした手が痺れる。

俺が非力すぎ?いやいや、この見た目なら重いのは当然だろう。

こんなに重いのになんで平気なんだ……?と守道を振り返ると


「この刀、けっこうずっしりくるな……ほんとに戦えんのか?」


「え?俺はすごくフィットするっていうか、全然重くないけど……」


どうやら自分の物以外は見た目通りの重量があるらしい。通りで最初に大剣を出した女の子も軽々持っていたわけだ。所有者の魔力に反応しているんだろうか?


「ほら、昨日ぶりの再会に感動する気持ちは分かるが、防衛魔法のほうもやるぞ~」


そうだ、防衛魔法の授業だったんだ……。

真面目に聞かないと最悪本番で死ぬかもしれない。


「じゃあ説明するぞ─」


魔法には様々な種類がある。

攻撃魔法、防衛魔法、回復魔法、支援魔法─これらをベースにさらに細分化していくこともできる。

それぞれをかけ合わせることで無限にパターンが作れるし、個人や一族などでの固有の魔法もある。


防衛魔法は基本的に相手によって対処するための魔法と、前もって準備をしてかけておく全体への備えとも呼べる2つの側面を持つ。


今回教えるのは、相手がどの魔法を使ったかで対応してかけるいわゆるバリアを張る魔法、それと服のように身体へあらかじめ張り巡らせておく衝撃に備えるための魔法だ。

近接、遠距離にかかわらずどちらも重要な魔法、これを覚えられないと実戦には出られない。

実戦では、あらゆる魔法を同時に使いながら戦わなくてはならない。

どれが欠けても命取りになる─


「ここまではいいな?では君たちが今からやるのは身体にかける方の魔法、防護(主を守り給え)

まず俺自身にかけてみようか」


防護(主を守り給え)


真野先生がそう唱えるとふわりと光が先生の体に集まっていく。そして、吸収されていくように光が体の中に消えていった。


「こんな感じだな、見た目わかりづらいだろうがちゃんとかかってるぞ?試しに傷つけてみようか」


先生は手にナイフを持つと手首を切りつけた。

クラスのみんなが息を飲む。

先生の手首には傷一つない。

心のなかでそっと胸を撫で下ろす。よかった……ほんとうに魔法で守られてるみたいだ。


「ほら、大丈夫だろ?あ!真似しないようにな?まあ、俺は防衛魔法が専門だからできるがいきなり君たちがやるのは無理だからな?」


さすがに傷つけるのはやりたいとは思わないだろ……。

釘をさされた俺たちは、声には出せなかったがみんなそう思った。




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