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モーメント.

六話

目覚めはバッチリだった。

夢をみるかと思ったがかなり熟睡していたらしい、なにも記憶にない……がそのほうがいいだろう。

これから毎日あんなに面白いことが起こるのだ。

ぐっすり寝られたほうが健康的だろう。

メガネをかけると、羽知瑠はもう起きていた。

制服に着替えて昨日付けられたピンを留める。

食堂に羽知瑠と一緒に行って朝食を食べる。

今日は朝から授業があるから、みんなせかせかと歩いている。


「今日はなんの授業だろうな」


「うーん、とりあえず魔力の放出からかな?」


「羽知瑠は中等部からだよな?内容被るのか?」


「多少はね。でも基礎的なことしかしてないから、戦ったりはまだできないよ」


「そうか、戦うのも授業にあるんだな……やっぱ痛いか?」


「うーん、訓練室があってそこでなら怪我したりはしないはずだよ?大きな魔法陣の上に建てられてるから」


「なるほど?建物自体に怪我しないような魔法がかけられてるのか」


「うん、まあダメージ自体は身体にくるらしいけどね」


「痛いのは痛いんだな」


そんな雑談をしていると教室についた。

まだ先生は来ていないらしい。

ちなみに直樹は別のクラスなので時間割が違う。

ねぇ〜俺たちが別のクラスってどゆことー!?と昨日の食事をしている時に泣き真似をしていた。

羽知瑠とは席が離れている。

そういえば、お昼はどうするのか聞いていなかったな……と考えていると真野先生が教室に入ってきた。


「おはよう、今日から授業だな。まずは基礎から教えるぞー」


真野先生は、じゃあ立って!と声をかける。

俺たちが席から立って少し離れると先生は手をかざして魔法を唱える。


移動(動かせ)


そう言うと椅子と机がいっぺんに動き出した。

浮かんだ椅子たちは廊下側に固められて、机は窓際に。

すごい……!昨日のピンを付けたときも思ったが、複数の物を同時に動かせるのはさすが魔法学園の教師だ。

あらためて感動していると、真野先生は


「君たちもこれぐらいはできるようにならないと、だ」


クラスのみんなからはやる気の声と緊張が伝わってくる。いきなりこのレベルを求められているわけではないだろうが、ここまでできるようになるのかはまだ想像できなかった。


「物を動かすのは基礎中の基礎だ……もっとも簡単な魔法だし、多くの魔法の下地として必要なものだよ」


そう言うと先生は手の中にポンッと四角い箱を出した。


「まずはこれを動かせるようになろうか。一人一つ渡すから、一緒にやってみよう」


箱たちがそれぞれの場所まで飛んでくる。

手を差し出すと、力をなくしたように動かなくなった。


「さて、手の中にある箱を浮かすイメージをしようか。目を閉じて……身体の内側にある魔力を意識する。」


「そうしたら、その力を箱に向ける。そして魔力で包んで浮かすイメージ……できたら〈移動(動かせ)〉と唱える。どうだ?できたか?」


体内にある魔力を意識する。

暖かな流れを感じて鼓動とともに揺れ動く魔力を手のひらへ。手のひらから箱へ。

そして───


移動(動かせ)


箱が宙に浮かぶ。周りを見るといろんな高さに浮いた箱たちが見えた。

鼓動が高まって手が震える。

出来た……!俺も魔法が使えるんだ……!

喜んでいると箱にも鼓動の速さが伝わったのか少し震えている。


「よかったな、成功して」


「は、はい……!」


「これからできる魔法はどんどん増えていく……でも初めはこの学園の生徒みんな、小さな箱から生まれた嬉しさで成長していくんだ」


「だから君も、この嬉しさを忘れずに育てていくといい……自分だけの魔法を」


そう告げた真野先生の眼差しはどこまでも優しかった。

告げられた言葉と眼差しの優しさに俺の嬉しさは倍増していく。


ここから始まるんだ、俺だけの魔法が。

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