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舞踏会、終わらない。

二十九話

「じゃあ部活見学、略して部見(ぶかけん)!頑張ってね〜!」


略さなくていいだろ!というツッコミをして直樹とは別れた。

さて、残るは魔法映画部。

魔法の映画ってなんだ……?一般的な映画は魔法を出すためにCGや小道具を使い、工夫することで見せかけているが逆に魔法が使える場合はどんな映画を撮るんだろう…?


そんな疑問を頭に浮かべながら魔法映画部の部室に入ろうとする。

……いや、正確には入ろうとして、扉に手をかけたところで足が止まった。


「……??」


目の前が虹色に見える。

レインボー。まさにハッピーなラッキーアイテム。

一瞬、俺の頭がおかしくなって空に飛んだのかと思ったが、どうやら違うらしい。瞬きをすると、視界が黒くなる。

これはつまり……



「あ……頭に当たっちゃったのか、そーりー」



聞き馴染みのない声がしてその音の発生元を探す。首を振るとベチャベチャと顔に付いた何かが落ちていく。

クリーム?っぽい何かが床に落ちることで視界が少し開けて目の前が見えるようになった。


視線を感じて下に目を向けると少女がいた。

特徴的な髪型――両サイドから流した髪の毛を胸元でハートに結んでいる。その彼女は、上着を腰で結びメガホンを持った片手をこちらに指していた。


「でも君も悪いのです、ノックなしで入るとこうなります。良い経験をしましたね」

「えぇ……?」


それはさすがに言いがかりでは?

とは思ったものの、こちらも悪い点はあったので一応謝る。すると少女?はメガホンを下ろし、魔法を唱えた。


清浄をここに(汚れを浄化せよ)


唱え終わると同時に俺の頭や床にかかっていたクリームが跡形もなく消えた。すごい。


――――――――



「なんだ、部活見学でしたか」


災難でしたね、という言葉を何の感情もなく部室に入った俺たちに言うのは魔法映画部の部長、深見歌芙(ふかみかふ)先輩だ。

先程かかったクリームは映画のワンシーン、虹色のパイシューが弾けるシーンを撮っていた所、俺が入ってきたことで部室にかけられていた空間魔法が崩れて本来はかからないクリームが飛んでしまった……らしい。


「どんな映画を撮っていたんですか?」

「オレも気になります!」


羽知瑠と守道が興味津々で先輩に尋ねると、先輩はおもむろに手の中に本を魔法で呼び出した。


「これは部で撮った映画をまとめた本型の記憶媒体です」


そう言うと魔力が流されたのか本が輝きを放って像を結び、映像を空間に映し出す。


「魔法映画では視点を設定し、その方向に撮った映像を丸ごと映し出して視聴者の意識を映画の空間に存在させて体験することができます」


えーと、つまり映画を本当に自分で体験できる……ということだろうか?普通の映画も体験と言えば体験だがあくまで視聴者、画角に収められた映像を観るという形だ。それを魔法で意識ごと映画の中に入れて視点そのまま見ることができる……まるで今起こっていることかのように。


「そんな感じですね。元は記憶の継承のために生み出された魔法をエンターテイメントに変えて楽しんでいます」


なるほど!と俺たちが納得しているとそれまで椅子も机もない、カーテンも閉められた殺風景だった部室にきらびやかな音楽が流れ始めた。

驚いて周りを見るとドレス姿の女性とすれ違う。すれ違った彼女の方を思わず視線で追う。するとそこには王子様がいた。王子様は優しく微笑みながら手を差し出す。

……どうやら舞踏会の映像みたいだ。いつの間にか部室が王宮のような背景になっている。手を取り合った二人はくるくると音楽に合わせて踊り出す。カメラは彼女たちに固定されたまま、二人を追いかけて同じように踊る。



回る。

少女の髪がその穏やかなリズムに揺れる。

ヒールの音は彼女の緊張を表現していた。



しばしその光景に見惚れていると歌芙先輩に声をかけられた。先輩はきらめく黄金の床にかしづく――――――



「さあ、私の手をとって?」


そのセリフに思わず誘われて、手をとった。

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