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レッツ・クラフト!

二十五話

教室の中には様々な物が置いてある。

淡く発光するパンケーキ、浮かんだ氷の花がパチパチと弾けるサイダー。

ここは魔法クラフト部。俺達は見学者として歓迎を受けていた。


「よ〜うこそ!魔法クラフト部へ!私は!部長の朝日奈真理よ!」


朝日奈先輩は自己紹介と共にクラッカーを鳴らす。クラッカーの中からはメロディーと共に『歓迎!』『ようこそ!』と書かれた旗を繋げた小さな汽車が飛び出し、そのまま空中に発車した。



「ど、どうもお久しぶりです先輩。入学式以来ですね」


「あら!阿賀刀真くんじゃない!よく来たわ!さ!ここにサインしなさい!」


「あの、まだ入ると決めたわけじゃないので……」


え〜!と不満そうな朝日奈先輩を宥めながら先輩の正面の椅子に座る。横を見ると、羽知瑠と守道はすっかり圧倒されていた。まあ気持ちは分かる……この人のハイテンションさは初見では面食らっちゃうよな……。


「ん?どうしたの?お友達も一緒に入るんでしょ?」


「ま、まだこの部が部活見学初回なのでもう少し見て回りたいかな〜と……」


「そ、そうなんです!あの大変興味はあるんですが他の部活も見てから決めたい……です!」


「ん~~そりゃそうか!しょうがないわね!見逃してあげる!」


二人は先輩の勧誘をなんとかあしらって席に着く。

三人でホッと一息を吐いていると朝日奈先輩が他の部員を呼んで紹介してくれた。


「刮目しなさい!!うちのかわいい部員よ!」


「よろしく」


「よろしくお願いします!」


こちらをチラリと見てすぐに目を離したクールな感じの先輩は宮羽夜海先輩。3年生らしく朝日奈先輩とは同学年で副部長をやっているみたいだ。もう一人の元気な挨拶をしたキリッとした先輩は桃尾俊先輩。2年生でその名の通りピンク色の髪をしている、でも男前だ。


「今はちょっと席を外してる子も多いけど、全体としては二十名程の部活よ!」


ほら!挨拶!と朝日奈先輩に促されて部室のあちこちから手が上がる。『よろしく〜』『入るなら歓迎するぞ〜』と四方から声がかけられて慌てて頭を下げる。

こ、こんなにいたのか……。物が多すぎて分からなかった。クラフト、と記される通り作る部活らしく部室には魔法で作られたと思われる物がたくさんある。


「今日はなにをやってるんですか?」


「今作ってるのは花火よ!打ち上げた時にお菓子が降ってくるようにしたいの!でも打ち上げたら燃えちゃうからどうやって魔法で残るようにするかが課題なのよね……」


「なるほど……確かに火花で燃えちゃいますね」


「そういうのを悩むのもこの部活は楽しみの一つよ!あれこれ悩んで形にできた時が楽しいの」


花火にお菓子が入っていたら子どもも喜ぶだろうから確かに楽しそうだ。試行錯誤をするのも面白そうだし、魔法を使って実際に自分の手で作れるのもこの学園ならではだろう。


「みんなこれを作ってるんですか?」


「ううん、それぞれ作りたい物を作ってるわ!チームで大きな物を作るもよし、個人で長い時間をかけて制作する子もいるからそこは自由よ」


けっこう自由度が高い部活みたいだ。さっきの宮羽先輩は朝日奈先輩と一緒に花火を作ってるみたいだけど、桃尾先輩は一人で踊るクローゼットを作っている。……い、一緒にダンスしてる……!どうやっているんだろう?


「あ、あの……」


「ん?どうしたの?五式くん」


「さっきの花火……お菓子を防衛魔法で包んでみたらどうでしょうか……?」


「ん~~それは私たちも考えたんだけど、それだけだと花火と一緒に飛び散らないから派手さがないのよね」


「そうですね……じゃあ、中に衝撃を受けたら弾ける魔法をかけた袋とかを入れてみるのはどうでしょうか?それが複数個入ってたらいろんな方向に飛び散りませんか?」


「……確かに!あなたって最高ね!それちょっと試してみてもいいかしら!」


「は、はい……!お役に立ててなによりです」


羽知瑠ってこういうの得意なんだな……!すごく楽しそうにお菓子の花火について朝日奈先輩と話している。感心していると守道に話しかけられた。


「楽しそうだな」


「ん?どうした?守道」


「ああ、俺はこういう頭使うのどうも苦手でなぁ」


「へー、まあ確かに苦手そうな顔してるもんなあ」


「おい!って、まあその通りなんだがな」


ふざけて守道と笑いながら出されたソーダを飲み干す。氷の花のパチパチで炭酸が長持ちするようになってるのか……考えられてるな。謎に発光しているパンケーキを恐る恐る二人で食べていると羽知瑠がはにかみながら駆け寄って来た。


「二人とも!僕、ここに入ろうかな……!」


「おう、いいと思う!楽しそうだったぞ」


「うんうん、羽知瑠に向いてる部活だと思うぞ」


羽知瑠は魔法クラフト部に入るのを候補に入れたみたいだ。自分に向いてる部活があるのは一番いいな。俺に向いてる部活もあるといいんだが……。そもそも自分がなにに向いてるとか全然まだ分かってないからなあ。


「そろそろ他の部活も見に行くか?」


「ああ、そうだな。じゃあお邪魔しました朝日奈先輩!またよろしくお願いします!」


「「お邪魔しました!」」



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