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文殊へチェンジ!

二組、青沢賢臣part5


炎は火花を散らして札を燃やし、その暗さと反対に優しく辛くんを包んでいる。

トスン、と地面に降りた後不思議そうに辺りを見渡す辛くんに芥江くんは心配そうに駆け寄った。


「大丈夫かい?辛」


「わっ……なんだ裕也か、助けてくれたんだな」


「当たり前さ、君が呼ぶなら何処へでも」


華のある二人がキラキラを撒き散らしながら二人の世界に入っている。騎士と王子様のような見た目なので並ぶと眩しくて消し飛びそうだ。その美しさにさらさら……とおれがまるでさっき燃えたお札のように土に還りそうになっていると先生が話かけてきた。


「……これ、待ったほうがいいのか?」


「待ちましょう」


邪魔したら馬に蹴られて地獄に落ちるので。


先生が律儀に待ってくれている間も二人の世界に入っていたが、辛くんがハッと気づいてこちらに戻ってきた。


「わ、悪い……待たせた」


「いやー大丈夫っすよ!ね!先生!」


「お、おう!安全第一?だもんな!」


「すみません、お待たせしました」


辛くんの肩に手を置いて笑いながら芥江くんは先生に向き謝罪する。目は……全然笑ってないけど……これ激おこなのでは?一瞬先生もその目の暗さにたじろいだ、が持ち直してピンに手を伸ばしてお札を出現させる。



「さ、二回戦といこうか――」


コツリ。


なにかが当たった音。


それはどこからか響く普遍的な音。

なのにやけに耳に残る音。


コツリ。


その音がピンヒールだと気づくまでそうかからなかった。近づく足音は気品と威風を纏っている。

舗装された道はこのピンヒールのためにあるかのようにその存在を歌う。

音色へと視線を向けるとそこにはただ一人、演奏者が立っていた。




「お邪魔させてくださる?」



そう言った彼女の顔が視界から消える。あれだけ印象的だった音もなく。


刹那の時の後、紙の端切れが舞い上がる。

切り裂かれたいくつもの紙が地面に叩きつけられて。

そうして開けた視界にようやく――彼女が起こした現象だと解った。



「――ッやるじゃないか……!」


気がつくと先生はお札を盾にして攻撃を防御していた。

彼女は長い髪を靡かせてそれをピンヒールで蹴りつける。針のように鋭いヒールが何度もお札を切り裂き、まるで踊り子のように彼女はくるくると回って攻撃を重ねる。


「ふふふ!共に踊りましょう!」


一撃、二撃。繰り出される攻撃はその可憐さと反比例するように熾烈さを増す。ショーのような攻防が繰り広げられる中、二人の足元には塵のように紙が積もっていく。

切り裂かれたお札に隙間ができ、彼女が渾身の一撃を繰り出す、振り上げた脚が天を向いたまさにその時――――


「きゃっ……!?」


彼女の脚が真っ白になっていく。

切り裂かれたお札、その降り積もった切れ端が手となり彼女を持ち上げたのだ。


「油断した、か?」


手となったお札に巻き上げられて彼女はその身を宙に投げ出される。凄まじい勢いで飛ばされてビルに叩きつけられる――かと思ったが、彼女は空中で身を翻してビルの屋上に着地する。


「失敗してしまいました……奇襲ならば先生にも通じるかと思いましたのに」


彼女が頬に手を当てて自らの失敗を憂う。


怖っ……強っ……!あの子たしか、一組の子だったよな!?どうやらおれたちがドンパチやっているのを聞きつけて乗り込んできたらしい。スラリとした長身にピンヒールが眩しい。


「一度で終わらせたかったのですが……諦めません!まだ時間もありますもの!」


彼女はぎゅっと両手を胸の前で握り宣言した。

かと思ったら次の瞬間にはひらり、と水の中を泳ぐ魚の如くビルから飛び降りる。

ちょうど時計の針を指すように先ほどの豪華な建物の前で、伸ばされた脚がクロスする。



「刺し至れ――無象の針!」


魔法を詠唱した彼女はその脚をまるで針みたいに仕立て上げて連撃を繰り出す。

それを先生は幾重にも重ねたお札で防ぐ……二人の間には火花が飛び散りそうなぐらい激しい戦闘が繰り広げられている。

……そうだ、今なら一撃ぐらい通るんじゃないか!?すっかり空気に飲まれていたが、おれたちも攻撃しても構わない……よな!?辛くんと芥江くんに目配せすると、二人も同意見だったらしく頷きながら魔法具を構える。

先生がおれたちの存在を忘れているとは思えないが、注意は彼女に引かれているだろう。


攻撃するなら今……!三人寄ればなんとやら、だ!

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