花冠、和、晴れ晴れ
二十話
「や、」
「「「「やったーーーーー!!!」」」」
よっしゃ!決めた!これは文句ナシだろ!
羽知瑠のパンダから飛び降り、先生の注目がパンダの攻撃に向いたその隙を狙って刺突を繰り出した。ここまで上手くできたのはやはりみんなの攻撃があってこそだ。ルベリクスさんが一定の距離で仕掛けて魔導具の巨大化を消費し、ルゼインくんの空からの攻撃を印象づける。さらに守道が隙を作って羽知瑠のパンダでダメ押し……それぞれに先生の魔導具を全て使わせて一瞬の隙を作る。さすがに先生も残りの俺がどこから攻撃してくるか探すだろうけどパンダの背中にいるとは思わないだろう!ふふん!
「お見事です!よい作戦でしたね」
先生はみんなの目を一人一人見てこう言った。そうでしょうそうでしょう!もっと褒めて!と俺はない尻尾を振る。だってその作戦考えたの俺だからね!
「ルベリクスさんとルゼインさんの魔法の特徴を上手く活かしたよい攻撃でした!それに菊水さんの付加された水属性によって起こる現象もよく考えられています!五式さんの使役獣も面白い使い方ですね、攻撃に使いつつそれを隠れ蓑にもう一段の攻撃……」
「うん!花丸です!」
先生は魔法で花を降らせるとティーカップたちとくるくると踊り始めた。わーお、おとぎの国のパレードかな?
「今年の〜生徒たちも〜♪とっても〜優秀〜♪」
先生の長い髪がふわりと踊りに合わせて揺れる。すげー髪質いいな、どこのトリートメント使ってんだろ。
って、そんなことより――
「先生〜!他のみんなはいいんすか?」
「ん?ああ、大丈夫ですよ!一組も二組も合格です!先ほど真野先生からも二組に一本取られた、とおっしゃっておりましたので!」
「え……?これ対抗戦じゃ……?」
「そう言ったほうが盛り上がるかな〜と思いまして!まあ我々から一本取ることができれば訓練はOKですよ」
あ、そういう感じなんすね……。少々ガクッときながらも喜びを噛み締める。まあ、なんだかんだ言ってかなりの経験を積めた気がする。入学直後から相当ハードだが、魔法を使ったり戦う大変さはかなり身にしみた。いやほんとに。
と、振り返っているとチャイムが鳴った。
「は~い皆さん終わりですよ!各々教室に戻りましょう!ま、今回は記憶の泡沫が手に入れば丸、ですので一本取れなくても気にせずに次につなげましょう!」
明るいなぁこの先生……、っとそういえばさっきの二組の子たちに挨拶がしておきたかったんだった。戦闘前にこっそり思っていたことを思い出して先ほどの四人のところに向かう。彼らは……あ、いた!別々の方向に吹き飛ばされていた二人も合流して話し合っていた。
「あいたた……残念だったわね」
「ああ……もっと作戦を練らないと、だな」
「ごめんなさい!二人とも……私……!」
「俺もすまなかった……」
どうやら吹き飛ばされた二人に先ほどの女の子と青年が謝っているみたいだ。
「いーのいーの!」
鞭を使っていた女の子がからりと笑う。
「みんなで負けたのよ、全員まだまだってことよ!誰のせいとかじゃないわ!ね!三衣くん!」
「……いや俺は……」
「そ・う・よ・ね」
「あ、はい……」
うーんすごく強いおなごだ……。俺がその気迫に圧倒されていると、向こうから話しかけて来てくれた。
「よかったな、君たち」
「おめでとうございます」
「あはは……どうも!体大丈夫?えっと……君は……」
「広登一紗です」
「俺は斎藤宗司……彼女の婚約者だ」
「どぅえええ!!!こ、婚約者……!?その歳でこ、婚約……!?」
「?はい」
「別段珍しくはない、魔法を家業にするものならな」
ひょえええ……!!いや俺には珍しすぎてびっくりしてるんですが!?魔法の世界ってそういうもん?まあ、俺全然この学園のことも知らなかったし……世界って広いんだな……。
「あ!私は紅崎怜葉よ、よろしくね!ほらあんたも!」
「……三衣、朔です」
「俺は阿賀刀真です!よろしく!」
二人の手を握ってブンブンと振る。紅崎さんは楽しそうに、三衣くんは嫌そうにしていた。そんな顔すんなって、構いたくなるだろ?ウェーイウェーイと三衣くんにカバディでうざ絡みをしていると羽知瑠たちがやってきた。
「刀真くん、お疲れ様!……わ、二組の人たちとお話してたの?」
「よーっす羽知瑠、おう友達になったからな」
「はあ?違うけど」
「え〜?ほんとにござるか?」
「うざ……やめてください触らないできしょい」
「ふふ、ほんとに仲良しになったんだね」
「え、目、節穴……?」
俺たちがふざけているとルゼインくんが笑いながら話しかけてきた。
「ははっ!面白い人だね君たち」
「おう!ルゼインくんか!さっきは助かりましたよ、ありがとう」
「いや、俺たちも助かったよテナと二人でどうしようか迷ってたからさ」
「ああ……助かったよ二人だけで挑むのは心許なかったからな」
うう……!目が合ったら恋しちゃいそうな美形が二人並んで微笑んでる……!さっきは緊急事態だったから全然意識していなかったがそういえばこの二人は教室の中でもかなり目立つイケメンさんなのだ。なんとなく話しかけづらいなーとちょっと思っていたが、これを機会に仲良くなれそうでよかった。おそらくクラス同士、生徒同士の交流を深めるためにもこの訓練は良いのだろう。
守道も加わってみんなで話していると、真野先生が近づいてきた。
「あれ?先生どこから来たんですか?」
「市街地の方担当だったんでな、おら、そっちも解散したからお前らも教室戻るぞ」
はーい、と二組の子たちと別れて教室への道に進む。きたときよりも足取りは重くなったが、それでも心持ちは晴れやかになっていた。