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問 your Hands

十五話

冷たい川の水の中に足を入れる。勝負は一瞬。

水を掬って顔に気合とともに叩きつける。

よし……!


「裕也!いくぞ!」


「了解!」


相変わらず魚は俺達を挑発するようにひらひらと泳ぎながら一定の距離感を保っている。それを利用して深いところにいる魚を少しずつ、ゆっくりと俺は泳いで浅瀬に移動させる。


ちょうど裕也の目の前にくるように。


移動(動かせ)


裕也が移動魔法を唱える。魚へ――ではなくその下の石に。石が跳ね上がって魚ごと空中に飛ぶ。


強化(我が身に灯し給え)!」


強化魔法を唱えて一直線に魚の元へと泳ぐ。手が水を搔く、1秒でも速く泳がなくては魚が水中に戻ってしまう。焦りはあるが体は強化魔法で思ったよりも速く動く。あと少し……!目標の場所で体を起こす。魚はまだ……空中にいる!


そして――


「捕まえた!!!!!」


手の中で魚がビチビチと跳ねている。あ、危なかった……!強化魔法で泳ぐことがそもそも初めてだからどれくらいのスピードが出るのかは一応事前に練習はして確認したが、本番で上手くいくかどうかは一か八かだった。失敗したら魚が学習して同じ方法は使えないかもしれないから一発勝負。


成功してよかった〜〜〜!!!


心のなかで小さな俺が小躍りして勝利を噛み締めている。いや、喜んでいる暇はない!早く裕也に渡さなくちゃ!


「裕也!」


陸に上がって裕也に魚を渡す。……にしてもこの魚、記憶の泡沫の光を放っているが宝珠自体は見えない。……どこにあるんだ?というかどうすれば触れられるんだ?


「うーん……斬っちゃう?」


そう裕也が言った瞬間魚が激しく暴れ出す。顔が死に物狂いだ……!よほど嫌なのだろう、抵抗が激しい。


「……腹の中にあるなら吐き出してもらうか」


仕方がないので魚を逆さにして揺らす。ほ〜ら吐き出せ〜、と何度かやっていると魚は宝珠を吐き出した。


……キャッチアンドリリース


「裕也、どうぞ」


「あはは、うんありがとう」


裕也が記憶の泡沫に触れると泡沫の膜が破れて泡が光を放ちながら裕也の体を包んでいく……。

目を閉じていた裕也がそっと目を開く。


「へー、こんな感じなんだ」


「なにか見えたか?」


「え?特には……?」


え?そうなのか?俺が触れたときは誰かの記憶が見えたんだが……。

人によるものなのかな?と、頭を捻っていると


「刀真、ありがとう」


「ん?なにが?」


「約束……守らなくても別によかったのに守ってくれたから」


「ああ、そんなことか。俺は俺が納得するほうを選んだだけだよ、俺の意思で」


そっか、と裕也は微笑む。選択肢が並んだとき、俺は一番俺が好きな、俺らしい選択をする。それが一番いいと信じてるからだ。


「さて!ここからは敵同士だな!」


「そうだね、この授業はクラス対抗だから……でも」




「僕は、この先なにかあったら刀真を助けるよ。……約束!」




手を振って裕也とはここで別れた。次この場所で会っても敵同士……、だけどすっきりしている。選択に悔いがないからだ。まあ、敵同士なのはこの授業だけの話だから学園で会えばきっと話は盛り上がるだろう!……冷たい反応されたら泣いちゃうけど。




さて、次はどうするか?うーん、クラスメイトを探すか?今はたぶん授業開始から2時間は経っただろうか。となるとそろそろ記憶の泡沫に触れた生徒も増えてきた……はず。でも、目印がなぁ……。特にこれといって集まれるような場所があるわけではない。そもそも開始地点がバラバラだし。となると、いっそ先生たちを追いかけたほうがいいのかも?


「でもそう簡単に見つかるかなぁ……「いやー今回は豊作ですなぁ!」



あ、いた。

呑気にお茶飲んでるわ。

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