水霊矢の如し
十四話
「……ま!……とうま!刀真!!!」
え、あれ……?俺は……。顔のない誰かの記憶、を見ていた、のか?
「大丈夫かい?突然動かなくなるから驚いたよ」
「ああ……ごめん、大丈夫だよ……どれくらいこうしてた?」
「そんなには経ってないけど……少し休もうか?」
「いや、いいよ。君の分の記憶の泡沫を探しに行こう」
どうやらしばらく放心状態に見えたようだ。誰かのおぼろげな記憶を見た、けど……人に話したくなるようなものじゃなかった。悲しくて、苦しくて……痛いのに動かない体がもどかしい、みたいな。誰の記憶なんだろうか……?これを泡沫に触ったみんなは見てるのかな?本当に記憶の泡沫には誰かの記憶が入っているんだ。
「そういえば……君、刀の方はどうなんだい?」
「え?刀?」
「そう、君は刀が魔導具なんだろう?記憶の泡沫は魔導具の経験値を上げるアイテム?みたいなものだと先生の説明から僕は理解していたんだけど……違ったかい?」
「あー……確かに!言われてみると前よりしっくりくるっていうか、思い通りに動きそうな感じはするな」
確かにそういうものだったな、先生の説明は。あれ?じゃああの記憶は……?おまけみたいなものだったんだろうか。にしてはヘビーな記憶だったけど。まあ……いいか!
「ふふ、それにしても裏切らないんだね」
「え?なにをだ?」
「記憶の泡沫を僕の分も探すの、手伝ってくれるんだろう?」
「まあ、そりゃ今回は二人でゲットしたようなものを譲ってもらっちゃったし」
「あはは!お人好しだねぇ」
「んーそうか?当たり前だと思うけど」
あははは、となぜか爆笑している裕也を不思議な気持ちで見る。そういう約束だったし、当然というか疑問にも思わなかったが……お人好しなんだろうか。まあ、裏切るよりお人好しで笑ってもらったほうが気持ちがいい。
「ほら、いつまで笑ってんだよ次のやつ探しに行こうぜ」
「はは、うんそうだね」
とは言ったものの、次のあてがあるわけではない。前回は裕也が見つけてくれたから今回は俺が見つけないと……!そう思って森を歩いていると川を見つけた。川か……なにかありそうだ。
「どう?なにか見つかりそうかな」
「うーん……分からないな……でもぜったい今回は俺が見つけたい!」
「あはは、そう気負わなくてもいいさ。気になったことを観察してみたら見つかるよ」
そういうものか?でも、経験者が語ってるし……。信じてやってみるか。えーと、気になったこと気になったこと……。うーん、なんだろう魚が跳ねてるな、とか?……ん?あの魚……色が変わってるな、不思議な光……どこかで見たような……?いや、さっき見た!記憶の泡沫の光じゃないか!?
「裕也!あの魚!」
「!なるほど、捕まえよう!」
俺達は川の中に入って捕まえようとする、がその魚は突然とんでもないスピードで泳ぎだした……!目で追うのがやっとってどんなスピード出してんだよ!?
「挟み撃ちにするぞ!」
二人で距離を詰めて追い込んでいく……がその間を魚は余裕綽々といった感じで通り抜けていく。……?俺達を通り抜けていく一瞬止まった?と思ったらその魚と目が合った。
……こ、こいつ……!笑っていやがる……!!
魚って表情筋あったっけ!?とかそんなことはどうでもいい!馬鹿にされているのが伝わってくる嫌な笑みだ!
「くっそー!!なんだコイツ!魚かほんとに!?」
「刀真作戦……!作戦を考えよう!」
俺達は一旦川から上がった。やつを睨見つける……その間もすいすいと俺達を嘲笑うかのようにゆっくりと泳いでいる。
「やっぱこれも魔法がいりそうだな……」
「そうだね……スピードで負けてるから他のもので補わないとダメ、かな」
他……なんだろう、テクニックとか?うーんでも俺達にそんなテクニックがあるだろうか……?今使える魔法を思い出してみよう。移動、強化、防衛……移動魔法で川を止めるとか?いや、この方法だとかなり魔力を使ってしまいそうだし一人でできるとは到底思えない……。
「刀真、強化魔法ってさ」
「うん?なんだ?」
「スピード上がったりしないのかな?」
「……!でも俺達と違ってアイツは水中という種族のアドバンテージで強化されてるんだぞ!?」
「うん、そうなんだけど一瞬に絞って追いつけたらいいんだよね?」
た、確かに!なにもずっと全力で追いかけて捕まえなくても一瞬トップスピードで追いつけばいいのだ。盲点だった……!そうとなれば作戦は立てられる!
「よし……!この方法でいくぞ!」




