ソーダホワイトフライト
十話目
食事を食べ終えた俺たちは、食堂から直接訓練室に向かうことにした。
廊下を渡り、中庭をつきぬけると少し離れた場所に大きなドーム型の建物がある。
それにしてもいい天気だ。
ぐっと腕を伸ばすと木がさわさわと音をたてているのが耳に残った。
中庭は太陽の光を受けて草木が輝いていた。深緑のいい匂いがする…目線を空へ向けていると、上階の校舎から中庭を見下ろしている人がいるのに気づいた。
綺麗な人……まるで人形のように美しい真っ白な人だ……。
見下ろす視線はどこか楽しげで、でも寂しそうに揺れている。
なにかをしてあげたい気持ちになる人だな、と考えていると先を行く羽知瑠たちから声がかけられた。
そういえば訓練室に向かう途中だった……そう思って視線をそちらに向けたが、もう一度あの人を見たくて視線を戻すと、そこにはもう誰もいなかった。
訓練室は建物自体シンプルな造りだが、中は広く近代的で上から下の階を見下ろせるようになっていた。
でもこの広さで戦闘なんてできるのだろうか?1年生だけとはいえ、人数はそれなりにいる。どういう形式で戦うのかわからないが……どうやってやるんだろう?
「ここには拡張魔法がかけられてんだね〜」
「拡張魔法?」
「そ!空間の拡張!」
「うん、魔法によって空間を広げられるんだ……見えているよりもずっと広くなるよ」
「へ〜面白いな!俺の部屋にも使えたらいいのにな!」
思わず笑ってしまうが守道の体格では確かに狭いのかもしれない。拡張魔法という魔法があるんだな……某猫型ロボットのポケットみたいなものだろうか?
だとしたらとても欲しいが……。
「俺も使えるようになるか?」
「そのうち習うと思うよ!」
夢のポケット……!俺もオーバオールにすればそれっぽいだろうか。
心を踊らせてわくわくした気持ちになっていると真野先生ともう一人の先生が訓練室に入ってきた。
「ハロー諸君、さ、訓練だぞ〜……まあその前に」
「私めからも一つ……魔法を伝授致しましょう!」
なんか……独特な先生だな……。
性別もよくわからない、長身の先生はそう言うなり杖を片手に近づいてきた。
「君たちが今のまま戦うのもいいんですが……!なんと!現場で戦う十命機関の隊員たちは身体に強化魔法をかけているのです……!」
……十命機関?なにそれ?周りを見るとみんな真剣な面持ちで聞いている。やば、俺だけ知らないっぽいな……?あとで羽知瑠に教えてもらおう。
「これをかけるとあら不思議!素手で岩を割り!足で地面を裂き!巨獣にふっとばされても大丈夫!……かもしれません」
最後急に不安になることを言わないでほしい……!
「まあ、これは必須なので皆さんできるようになってもらいます」
「そうそう、これないと実戦では死んじゃうからな~」
やっぱ死ぬ気でやらないとこの段階でバッドエンド直行なのか……。できるできないじゃなくてやらないと死ぬ!気合を入れなくては……!
「では!皆さん魔力を身体の中心から練り上げてください!そして……!」
そして……!
「強化!」
強化魔法をかけると身体が軽くなった気がした。
これで本当にふっとばされても大丈夫なんだろうか?
羽知瑠たちも不思議そうに身体を眺めている。
「実感はわかないでしょうがちゃんとかかってますよ、皆さん!」
「うん、上出来だな。優秀優秀!」
先生たちには分かるみたいだ。よかった……がかけられたということは、もしかして……?
「では!戦闘訓練をはじめましょう!」
て