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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第九章 キケン?な女

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96.極東の剣術

 何かが這いずる音はどんどん速くなり、そして近付いて来る。そしてその音の主が回廊の曲がり角から姿を現す。


「何だ……これ?」

「これって、魔獣?」


 長く冒険者をしているが、目の前に現れた魔獣は初めて見た魔獣だった。

 言葉では表現しにくい形状をしていた。


 粘着質なゼリー状の体はスライムのようだが、大きさは人間の大人ほどもある。こんなデカいスライムは見た事がない。形状は不安定で、波打つように体全体が揺れている。

 更にこのスライムが不気味なのは、うっすらと透けたドス黒い紫色の体の中にいくつもの魔獣が見えることだ。捕食した魔獣だろうか?

 しかもこのスライムの体の所々に魔晶石のような結晶が散りばめられたように光っている。


 レヴィアラが呻くように尋ねてくる。


「これってこの辺じゃよくいる魔獣?」

「いや……こんなヤツ初めて見た」


 顔も眼球もないスライムが俺達を認識したようだ。進行方向が俺達の方に変わり、その体を揺らしながらじりじりと近付いてくる。


 形状からして恐らくスライムだ。たぶんあの溶解性の体で俺達を捕食してくるように動くはずだ。


 武器を構える俺達に気付き、スライムが移動速度を緩める。

 様子を見てるのか? スライムのくせに。

 俺の知っているスライムは、食欲のみで活動する直径三十センチほどの大きさしかない魔獣だ。獲物を見つけたら一直線に向かって来るような単純な生き物だ。

 体に取りつかれても火傷程度。顔を取りつかれたら窒息の危険もあるが、一直線に動く習性なので、よっぽどの間抜けじゃない限りそんな事にはならない。

 こいつらの撃退方法は粘着性の体の中にある核を壊すだけ。そうすればスライムの体はたちまち溶けてしまう。

 つまり向かってきたところを切るだけで大抵撃退出来る魔獣だ。


 捕食した魔獣が邪魔で見えないが、体の何処かに核があるのは間違いない。じっと目を凝らし、不気味なバカでかスライムの体を見つめる。


「スライムの倒し方は分かるか?」

「もちろん。だけど本当にスライム?」

「たぶんな。恐らく体の中に核があるはずだ。そこを狙うぞ」


 スライムと俺達が対峙する。スライムが完全に移動を止めた。その瞬間、


 くっ!?


 スライムの体から槍のように鋭い何かが飛んでくる。俺はそれを身を捻って間一髪で躱し、横へ転がる。更に追い打ちで飛んでくる何か。後ろに下がって距離を取る。

 レヴィアラにも飛んできていたようで、その攻撃を躱したレヴィアラが俺の隣に並ぶ。

 スライムが飛ばしていたのは体から伸びる触手。俺達を攻撃した何本もの触手が、ウネウネと動いていた。何とも気持ち悪い動きだ。

 触手持ちのスライムなんて聞いた事ねえよ。


 軟体動物を思わせる不気味な触手がスライム本体の周りで蠢いている。

 レヴィアラが一歩前へと歩み出る。


「問題ないわ。ワタシが仕留める」

「油断するなよ。何をしてくるか分からねえぞ?」

「それでも問題ないわよ」


 レヴィアラは静かに刀を鞘に納めた。

 刀を仕舞ってどうするつもりだ?


 腰の刀に手をかけたレヴィアラが、視線をスライムに向けたまま俺に話す。


「ラドウィンは自分の身だけ守ってればいいから」


 少し腰を落としたレヴィアラが更に一歩前に出る。その動きに反応した数本の触手がレヴィアラに向かう。


 触手の一斉攻撃! あんなの躱せねえだろ!


 レヴィアラが凄まじい速度で刀を抜いた。

 キィンという透き通るような高い金属音の後、レヴィアラに向かっていた触手が細切れに飛び散った。

 目にも止まらぬレヴィアラの斬撃。彼女の斬撃は一瞬で数太刀放たれ、触手を斬り刻んだ。彼女の刀は既に鞘に納められている。


 あれは極東の剣術か。たしか……納刀した状態から切るっていう、抜刀術とか居合斬りとかそんな風に呼ばれていたと思う。

 レヴィアラは極東の剣術使いだったか。


 触手を全て斬り落としたレヴィアラが、地面を蹴ってスライムに迫る。

 蠢くだけのスライムにレヴィアラの斬撃を防ぐ(すべ)はない。


 再びレヴィアラが抜刀と同時に袈裟斬りでスライムの体を両断する。

 ひと呼吸おいて、左右に分かれて崩れ落ちるバカでかスライム。ドロっとしたスライムの体と、その中で捕食されていた魔獣の体が床に広がる。

 その中に直径二十センチほどの真っ赤なスライムの核が真っ二つに割れて落ちていた。


 レヴィアラの斬撃がスライムの体を文字通り一刀両断したのだ。

 あまりの剣撃の鋭さに思わず言葉を失う。サリーデで会った時、もしレヴィアラがこの刀を持っていたら俺はこいつに勝てなかったかも……という想像がよぎった。


 納刀し、ふぅと一息吐いたレヴィアラがこちらに振り返る。


「問題なかったでしょ?」

「凄いな。それは極東の剣術だね?」

「うん。頭領から仕込まれた技術の一つ」


 レヴィアラの表情にまた少し暗い影が落ちる。

 また頭領の事を思い出したか。よほど大きな存在だったんだろうな。


 両断されたスライムの元に向かい、その死骸を検めてみる。捕食されていた魔獣はこの迷宮で見かける魔獣だな。ということはこのスライムはこの辺りの魔獣を捕食して、こんなに大きくなったのか?

 それだけじゃ説明つかないと思うが……。


 スライムの死骸を弄っている俺にレヴィアラが聞いてくる。


「ねえ、ラドウィン。何か気になるの?」

「ああ。ちょっとね……」

「ふぅん。まあいいけど……」


 レヴィアラは俺の方に背を向け、さっきまで魔晶石を採取していた場所に歩き始める。

 俺は二つに分かれたスライムの片方を弄っていた。真っ二つに割れた核が形を失いつつあった。体だった液体も粘着性が薄れて、乾いた床へ染み込み始めていた。


 もう片方の残骸に目を向けると、こちらはまだ粘着性が失われていなかった。

 違いが出るんだな……ぐらいに思っていた。

 だが、こちらの液体が少し泡立っている事に気付く。そして真っ二つに割れているはずの核が小さく蠢いていると気付いた瞬間、その液体から凄まじい速度で触手が伸びた。


「危な……」

「えっ?」

 

 一瞬の出来事だった。

 伸びた触手は、こちらに背中を向けていたレヴィアラを背後から貫いた。

ありがとうございました。


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