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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第八章 護衛とフェスティバル

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87.やましい事は何もない

 美しい女殺し屋に馬乗りになった状態で、さてどうしようかと悩む。

 女の右手は俺に踏まれて骨は粉々に折れているだろう。ナイフもへし折れている。

 他に武器を隠し持っている可能性もあるが、反撃する術はないと思う。

 何よりこの女からは警戒心は感じるが、敵意を感じない。

 これならもうハルバリを連れて戻っても大丈夫だと思うが……。


「おい。今から解放するけど変な気を起こすなよ?」

「ホントに何もしないの?」

「しない」

「それはそれで……ちょっと自信なくしちゃうな」


 俺が誘惑に乗らなかったことで、落ち込む女殺し屋。


 俺は立ち上がり、女の袖から落ちた小瓶を拾い上げる。


「あ、それは返して欲しいな」

「駄目だ」

「あ、いやらしい事に使うつもりなんでしょ?」

「使わねえよ!」


 匂いが漏れないように小さな袋に入れる。この女に返したらまた何をしてくるか分からないからな。

 女から目を離さないようにして、ハルバリの元へと移動する。

 ハルバリは静かに寝息を立てて、深く眠っているようだ。


「ね? 寝てるだけでしょ?」

「ああ。そうみたいだな」


 女はゆっくりと立ち上がると、服についた土埃を払う。そして俺に向かって微笑むと、


「ワタシは依頼を受けた人間以外は殺さない……プロだから」

「そうか……」


 どうやらこの女には殺し屋としての矜持があるらしい。

 女が後ろに転がっている店荒らし二人の死体に目をやった。


「その二人は依頼を受けたから殺したのかい?」

「ええ。そう」

「誰がそんな依頼を?」

「ふふ……教えるわけないじゃない。依頼人だよ?」

「たしかに……それはそうか」


 女が負傷した右手の具合を確かめる。出血や関節の感じを見ると、やはり骨まで砕けていそうだ。


「大丈夫か?」

「アナタがやっておいてよく言うわね」


 そうでした。ちょっと無神経だったか。

 女が可笑しそうに笑いだす。


「アナタ、本当に面白い。初めて会ったわ。アナタみたいな人」

「そうか? どこにでもいるおじさんだと思うけど?」

「ううん。アナタみたいな冒険者は初めて。ワタシが知っている冒険者は違う」


 この女がどんな冒険者を知っているかは知らんが、とりあえずハルバリの肩を叩いて起こそうとするが、全然起きる気配がない。


「何したって、二時間は起きないわよ」

「そうか……」

「だから今なら襲っちゃっても大丈夫よ。ワタシが見ててあげるから」

「しねーよ! てか見ててあげるって何だよ!」


 何なんだこの殺し屋は! 変態か!?

 俺もこんな女、見たことねえわ。


「ねえ……」

「今度は何だ?」

「そんなに邪険にしないでよ。もう何もしないから」


 女は両手を挙げて、何もしてこないということをアピールしてくる。が、コイツは殺し屋だ。最大限に警戒しながら話の続きを促す。


「アナタ、この町の人間じゃないわよね? 何処で冒険者してるの?」

「知ってどうする?」

「アナタに興味があるの」


 女は妖しく微笑みながら俺の顔を見つめてくる。

 正直に言う必要はないな。もしイオアトスまで乗り込んで来たら厄介だし、適当に誤魔化すか。


「普段はクーフェンにいる」


 クーフェンとはサリーデから見て、イオアトスとは真逆の位置にある町だ。俺が唯一知っているサリーデよりも遠い町の名前だ。


「ふぅん。意外と近くから来てるんだね」

「そうだな」

「いつかワタシとゆっくりお話してくれる?」

「それは断る」

「どうしてよ?」

「殺し屋と仲良くしようなんて人間に会ったことあるか?」

「まあ……ないわね」

「そういうことだ」


 どうやら信じたようだ。

 残念そうな表情の女が今度は首を傾げて、俺の顔を覗き込むように尋ねる。


「アナタは殺し屋が嫌い?」

「初めて会ったからな。分からんけど、近くにいて欲しいとは思わないな」

「ワタシはアナタともっと話したいと思うんだけど?」

「俺は殺し屋に興味ないよ。すまんね」


 女がクスリと笑い、口元を隠す。

 

「それは残念。さ、仕事は終わったし、そろそろ結界の効果が切れるからワタシは行くわ」


 俺は油断せず女に対して警戒の体勢を崩さない。女は可笑しそうに微笑みながら、


「じゃあ、また……今度ゆっくりお話しましょうね。()()()()()


 夜の闇に溶け込むように女は姿を消した。


 え!? アイツ、何で俺の名前を知ってたんだ?

 あ、認識票!

 首に下げている冒険者認識票には名前が刻まれている。

 俺が馬乗りになって、アイツが首に手を伸ばした時に見たのか。


 まあ名前が知られた所で、俺は明後日にはサリーデを去る。もう会うことはないだろう。


 さて……店荒らしがあの女に殺された以上、俺もここに留まる理由はない。

 ハルバリを連れて店に戻るか。


 眠ったままのハルバリを背負い、俺は店へと歩き出した。


 ◇◇


 店の前まで戻ると、店の前でランタンの光が動いているのが見えた。


 く……他にも店荒らしに来た奴がいたのか?

 しかしそれはすぐに違うと分かった。


「ラドさん!」

「ラドっち!」


 ミザネアとティレイアがランタンを持って駆け寄ってくる。二人ともすぐにでも戦えるような格好をしていた。

 

「二人とも、どうしてここに?」

「心配だったから見に来たのよ」

「あ、そうなんだ」

「ラドっち! どこ行ってたの! 犯人は来たの?」

「ああ。今さっき追いかけてきたところだよ」


 事情を説明する為に俺達はカフェの中に入る。空はもううっすらと白みだしていた。


 とりあえず眠ったままのハルバリを寝かせると、ティレイアから低い声で質問が飛んでくる。


「ラドっち……念の為聞くけど、まさかハルちゃんに変な事してたんじゃないよね?」

「ラドさん!?」

「してねーよ! ちょっと理由(わけ)があって寝てるだけだよ!」


 と、二人からあらぬ疑いを掛けられながらも、二人組の店荒らしが来た事や女殺し屋に遭遇した事を説明した。


 二人からの疑いを晴らして、説明を終える頃には店の中に眩しい朝日が差し込んでいた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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