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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第八章 護衛とフェスティバル

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85.路地裏の女

 真夜中の町へ飛び出した二人組が路地裏へ入って行く。

 

 くそっ、かなり早いな。逃げ足を買われて店荒らしを任されたか。

 俺とハルバリも追いかけるが、その距離はどんどん離される。

 強化魔法で一気に行くか?


 そう考えた瞬間、二人組は二手に別れてしまった。


「ウチがこっちや!」

「分かった!」


 俺とハルバリも二手に分かれる。

 俺の前を走る男は路地裏を何度も曲がり、全然距離が縮まらない。

 そしてとうとう俺は男の姿を見失ってしまった。


 ……くそ。早く強化魔法を使えば良かったか。

 辺りの路地裏を彷徨うが、男の姿を完全に見失ってしまった……。


 仕方なくカフェに戻る道を辿るようにもう一度路地裏を探って行く。

 諦めかけたその時、呻くような男の悲鳴が耳に届いた。すぐにその声が聞こえた方へ走り出す。


 曲がり角を曲がると、ハルバリがいた。

 背中を向けるハルバリに話し掛ける。


「ハルバリ、さっき男の声が……」

「ああ。目の前や」


 そう応えるハルバリは前を見つめて短剣を抜いて構えていた。

 いつも魔獣と戦う時に使っている大剣は、背負っていると目立つし憲兵に注意されるので、サリーデに来てからは宿に預けっぱなしにしているそうだ。なので彼女は短剣を装備しているのだが、その短剣を抜いて彼女は構えている。


 俺もハルバリが見つめている方に目を向けると、そこには地面に横たわる男と、立ち尽くすもう一人の男。

 さっきカフェに侵入してきた二人組だ。

 けど何で一人が倒れていて、もう一人は立ち尽くしている?


 その答えはすぐに分かった。

 立ち尽くしていた男は口から血の泡を吹いていた。そして糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

 倒れたその男の背中には大きな血の跡。恐らく背中から心臓をひと突きにされたんだろう。そしてその男が倒れた場所には一人の女が立っていた。


 月明かりがその女の白い肌を更に白く浮き上がらせる。細身のその女の手には血が滴るナイフが握られていた。女の濃灰色の瞳は何の感情も見せないまま、俺達に向けられる。

 この女がこの二人を殺ったのか。


 俺とハルバリに向かって、女が少し首を傾げながら話し出す。


「あら? 見られちゃった?」

「お前……何者(なにもん)や?」


 女は何も答えず、足元に転がる男を跨いで、俺達に一歩近付く。


「そこで止まれ」


 ハルバリの警告に女が動きを止めた。

 俺も剣を抜いて構えた。それと同時に身体に強化魔法をかける。何者かは分からないが、何か危険な気配がする。

 女の眼は俺達に向けられているが、まるで虚空を見るような眼からは何も感じない。

 

 ハルバリがまた口を開く。


「何でその二人を殺した?」


 ハルバリのその問いで、だいたい状況が分かった。二人組がここで合流したのをハルバリが発見した。だが、この女がハルバリの目の前で、二人組を殺したということだろう。


 女は無表情のまま、首を傾けている。

 女の濃灰色の瞳からは相変わらず何を考えているのか、まるで見当がつかない。

 ついさっき人を殺したにも関わらず、この女からは殺意も狂気も感じられない。

 ただただ無表情にその双眸が俺達に向けられている。

 再び女が歩み始め、口元が歪に吊り上がった。


「アナタ達、同業者かな?」

「動くなって、()って……」


 女の体がふわりと揺れたように感じたその瞬間、あっという間に俺達との距離が詰められ、俺とハルバリの体が弾かれるように反応する。


 速いっ!

 と感じた瞬間に鼻腔をつく甘い刺激臭。

 マズい! と感じ、大きく息を吐いて呼吸を止めた。


 さっきまで俺達がいた場所に女が着地し、俺とハルバリは大きく一歩下がっていた。

 女は手で口元を隠し、鋭い視線で俺とハルバリを交互に見やる。


「ハルバリ! 大丈夫……か?」


 ハルバリが膝から崩れ落ちるようにその場に倒れてしまった。

 何だ? 何をされた? 女の攻撃は何も当たっていないはず……。


 口に妖艶な笑みを浮かべた女が俺に目を向ける。


「あれ? アナタは眠らないのね?」


 ハルバリは……刺されていない。眠らされたのか? でもどうやって?

 女は俺の顔を覗き込むように首を傾ける。


「まあ、次はちゃんと眠ってもらうからいいけど」


 細身の女のシルエットがブレる。

 鋭い踏み込みでまた一気に飛び込んできた。

 また微かな甘い刺激臭が鼻先をくすぐる。俺の直感がこの匂いを嗅ぐなと警告してくる。刺激臭を払い除けるように剣を振り、後方へと跳んだ。


 更に女が追いかけてくる。そして鋭いナイフでの突き。剣で払い、横へ動き、距離を取る。距離を詰めてくる女が体を一回転させて、ナイフで脚を狙ってくるがそれを剣で受ける。

 ナイフを持っていない女の左手が俺の顔面に迫る。それを後方に跳んで躱す。

 再び女との距離が開き、俺は大きく息を吐き出した。


 この一連の動作の間、俺は呼吸を止めていた。

 恐らくあの()()だ。あの匂いでハルバリを眠らせたんだろう。たぶん強化魔法がかかっていなかったら俺も匂いを吸っていただろう。


 初めて女の顔に表情が浮かぶ。


「すごぉい……。今のでも眠らないんだ?」

「ああ、悪いね」

「ふぅん。スゴいね……」


 驚きと興味深さが入れ混ざったような顔。

 女がわずかに目を細める。


「でも無駄。次は殺すから」


 女が先に動く。それと同時にぐっと息を吸い込み、匂いに備える。

 あの匂いは催眠効果のある匂いだ。何かの品物(アイテム)か、魔道具だろう。

 

 この女が何故、店荒らしの二人は殺してハルバリを眠らせたのか、理由は分からないが次は殺すと言った以上、俺も簡単に殺られるつもりはない。


 フェイントを挟み、女が俺の間合いへと飛び込んできた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


ラドウィンの強化魔法は肺活量も強化されてしまいます。


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