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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第八章 護衛とフェスティバル

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83.妨害行為

 軽い頭痛を感じながら目覚めた。

 昨日はちょっと調子に乗って少し飲み過ぎたか。

 ティレイアの知り合いがやっているという酒場はミザネアが言っていた通り、酒の品揃えがめちゃくちゃ多かった。


 なので俺達が行った時、店内はかなり賑わっていたが、ティレイアが個室を予約してくれていたのでゆったりと飲む事が出来た。

 しかも料理も美味い。超金持ちのサフィアもしばしば通っているというだけあって、それほど大きくない酒場だったが酒も料理も一流だった。


 そして昨日は俺の隣では美女ではなく、ナディライが座っていたので、思いの外酒が進んでしまった。

 だってナディライ、聞き上手だし褒め上手なんだよね。おじさん、気持ち良くなってどんどん喋るし、どんどん飲んじゃったよ。

 おかげで今朝は軽い頭痛と共にお目覚めですね。


 重い体を無理矢理起こして、思いっ切り伸びをする。

 そろそろ体をしっかり動かさないと、このフェスティバルの間に鈍ってしまいそうだな。

 そう思った俺は冷水で顔を洗って無理やり覚醒して、部屋でじっくり体をほぐしてから出かける事にした。


 ◇◇◇


 宿から出るとすっかり陽は昇り、フェスティバル二日目の町の賑わいが俺の目と耳に飛び込んでくる。


 さて、軽い二日酔いなのに何故朝から出掛けようとしているかというと、またティレイアのメイドカフェで朝食をとる為だ。

 昨日、無理やり約束させられたんだよな、ティレイアと。

 細かなやり取りは忘れたけど、今日と最終日の明日はティレイアのメイドカフェで朝食を食べる約束になっている。

 当然、ミザネアとツァミも来る事になっている。


 まあ店員がメイドの格好している以外は普通に美味しいお店だし、別にいいんだけどね。なんだかんだでティレイアにもサフィアにもお世話になっているしね。

 というわけで俺は一人、町の喧騒を横目にティレイアのメイドカフェへと向かって行った。


 ◇◇


 あと少しでメイドカフェという所で、人だかりが出来ているのに気付く。メイドカフェの方向だ。

 やば! もう行列が出来ているのかと思い小走りで行くと、それはメイドカフェを遠巻きに見ている人だかりだと分かった。


 その人だかりをかき分けて、メイドカフェの前まで来て、俺は思わず自分の目を疑った。


 店の前には数人の憲兵。後ろに見えるカフェは明らかに店内が荒らされていて、店員たちが片付けをしている。

 嘘だろ? 昨日まで何もなかったのに……。


 店に近付くと、憲兵の一人に声をかけられる。


「すみません。今は立ち入り禁止ですので……」

「あ……えっと……」


 俺が返答にまごついていると、カフェの中からミザネアが顔を覗かせた。


「ラドさん!」

「ミザネア! すいません。この店の関係者なんで……」


 憲兵にそう言って俺はミザネアの元に向かった。カフェの中はイスやテーブルがなぎ倒され、店内にあったと思われる食器類も壊され、床にぶち撒けられていた。


「……ヒドいな」

「ええ。朝、店員さんが出勤してきたら荒らされていたらしいの。私とツァミも片付けを手伝ってるんだけど……」


 見るとツァミが店員と、床に落ちた物を拾い集めていた。

 店内の少し奥の方で憲兵と話しているティレイアの姿があった。いつもおちゃらけた感じの彼女が、厳しい顔をして憲兵と話していた。


「誰がこんなことを……」

「まだ分からないみたい。でも売上金とかは店に置いてなかったから、盗みに入った盗賊が腹いせにやったんじゃないかって……」


 腹いせにしてはやり過ぎだろ。これだけ店内を荒らすにはそれなりに時間もかかるだろうし、盗みに入って何も無かったら犯人はすぐに立ち去ろうとするのが自然だ。

 だから侵入した奴は最初から店を荒らすのが目的だった気がする。


 すると店の奥からサフィアが姿を現した。その後ろから更に数人の男女が続く。

 皆が片付け作業をしている店内に向かって、サフィアが声を上げる。


「他の店から備品を持って来たわ。皆で協力して片付けたら、開店準備に入るわよ。昼からは再開するつもりだから……みんな大変だけど、頑張ってちょうだい」

「「はい!」」


 片付け作業をしている全員から返事が返ってくると、サフィアが俺達の姿に気付き近付いてくる。


「ラドウィンさん、ミザネアさん。ごめんなさい、ね」

「いえ、俺は今来たところなんで……。何か手伝いますよ」

「本当にありがとう、ね」


 憲兵と話し終えたティレイアがこちらにやって来る。その顔はかなり険しい。


「お姉ちゃん……ゴメン」

「ティレちゃんが謝る事じゃない、わ。早く片付けてお昼から営業出来るように頑張りましょ」

「でも……絶対にやったのはボルドン商会の奴らだし……アタシがあの時、あんな事言わなきゃ……」

「ティレちゃん! 今そんな事を考えていてもしょうがないわ。早く店を再開させる事だけを考えなさい」

「うん……分かった」


 沈んだ表情でティレイアが片付け作業へと向かった。

 

 ボルドン商会って、たしか食事会の後にティレイアと揉めたピプロットって奴の商会か。他の商会への妨害も平気でやるとは言ってけど、こんな強硬手段を取るのか?

 元気なく立ち去る妹の背中を見送って、サフィアが俺達の方に向き直る。


「ティレちゃんはああ言っていますが、気にしないでください、ね。何も証拠はないのですから……」


 と、サフィアはそう言うと、店の奥へ下がって行った。

 そしてミザネアも片付け作業を再開し、俺も何か手伝おうと店内を見回す。

 すると後ろから袖を引かれて、振り返るとハルバリが鋭い目で立っていた。


「ハルバリ。君も手伝いに?」

「こっちや」


 ハルバリに小声で言われて、店内の柱の隣に移動する。そして二人で身を隠すようにすると、ハルバリが視線をカフェの外に向ける。


「前の人混みの中や。見覚えのある顔、ないか?」

「人混み?」


 そう言われてカフェの外に出来ている野次馬に目を向ける。憲兵が制してくれているが、何事かと足を止めている野次馬が数十人はカフェを遠巻きに見ていた。

 その中にカフェを凝視する目つきの悪い男に見覚えがあった。


 ピプロットの取巻きの男だ。たしか食事会の後、ピプロットと一緒にいた奴だ。

 ハルバリに視線を戻して頷くと、


「やっぱりおっちゃんも覚えとったか。なら間違いないな」

「え?」


 そう言ってハルバリがカフェの出口に向かおうとするので、慌てて腕を掴んで止めた。


「ハルバリ! どうするつもりだ?」

「どうするって、捕まえて白状させるんや」

「待て待て! 無理だ、止めておけ」

「何でや!?」

「証拠がない。(しら)を切られたらどうしようもない」

「ぐ……。それやったらどうしたらええねん! このまま泣き寝入りか?」

「いや……ちょっと待て」


 柱の陰からその男の様子を窺う。

 奴らの狙いはこのカフェの営業妨害。表の男はそれを確認しに来たんだろう。

 そして今、カフェの店員が表の野次馬に向かって昼から営業を再開するとアナウンスしている。

 と、なると……


「ハルバリ。俺の予想だと……」


 そう言いかけた時、サフィアが俺とハルバリの所に近付いて来た。


「ラドウィンさん、ハルちゃん。お願いがあるのだけれど、いいかしら?」


 神妙な表情で、サフィアは俺達に話し出した。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


仕事が出来る人って切り替えが早いですよね。サフィアはそんな感じで書いてます。


これからもよろしくお願いします。

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