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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第八章 護衛とフェスティバル

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77.親の大変さと楽しみを少しだけ知る

 サリーデ滞在二日目。

 フェスティバルの前夜祭当日の朝。

 快適なベッドの上で目覚める。昨日までも、宿場町ではちゃんとした宿に泊まれてはいたが、やはり護衛という依頼を受けていたから完全にリラックスは出来ていなかったんだろうな。

 今日はその依頼からも解放されたせいか、ぐっすりと眠ることが出来た。

 結構お高いと思われる宿屋。本当にあのサフィアという商人は太っ腹だ。どんだけ儲けているんだろうね。

 

 まあぐっすりと眠れた理由は、昨日ミザネアとツァミに夜遅くまで色々な店を回るのに付き合わされて疲れ切ったというのもあると思うけど……。


 で、今日の前夜祭。

 俺の予定は昼前にミザネアとツァミと合流して昨日の続きで、町を巡る。

 本当は朝から行くと二人は言っていたが、何とか昼前に合流という事にしてもらった。そうでもしないと、俺の体力がもたないからね。

 で、夜はサフィアから商会の人達との食事会に誘われている。なんでもサフィアの商会で店を一つ貸し切りにしているそうだ。

 こんな凄いフェスティバルの前夜祭当日に店一軒貸し切りに出来るって、どんだけ金持ってんだよ、て感じだ。

 だがディケイドだけは何かサリーデで別の用事があるらしく、フェスティバルの間は別行動をすると言っていた。

 こっちの冒険者ギルド関係の用事らしい。クリスタルランクともなると色々と大変だね。


 さて……ミザネア達との待ち合わせまでまだ少し時間があるし、このお高い部屋でもう少しのんびりして、二人に振り回される体力を蓄えるとしますか。


 ◇◇


 昨日と同じように活気に溢れる町並み。フェスティバルの前夜祭ということで、大街道沿いには様々な露店だけでなく、芸を披露する大道芸人や、楽器を演奏する詩人などがその雰囲気を盛り上げていた。

 

 その多種多様な()し物にミザネアとツァミは実に楽しそうな笑顔を見せていた。


「ホント、すごいよね〜。フェスティバル。やっぱり来て良かったぁ〜」

「ミザちゃん! アレ何? あれ!」

「おい! あんまり急ぐと迷子になるぞ、ツァミ!」


 もうこうなると、俺は姪っ子と娘を連れた親父状態だよ。傍から見ると間違いなくそう見えるだろうな。

 けど、ツァミは初めて会った時と比べればだいぶ表情が豊かになってきたな。初めの頃は感情表現が分かりにくかったけど、色んな人と交流する中で年頃らしい色んな顔を見せるようになってきた。冒険者になる前は山奥で師匠と二人きりだったらしいからな。そう考えたら良い変化で、ツァミの成長を見ているようで、なんだか嬉しい。

 なんか……ジジイ臭くなってるな。


 しかし二人とも元気だな……昨日からずっとあの調子でフェスティバルを満喫している。 

 まあもう俺は祭りではしゃぐ様な歳でもないし、むしろ若い子がこうやって楽しそうにしてるのを見ている方が楽しい……。


 はっ! 年寄りがやたらと食べ物を若者に薦めるのってこういうことなのか……?

 美味そうに食べる若者の顔を見たいから年寄りは食べ物を薦めてくる、ということか……なるほど。

 何となく年寄りの気持ちを理解した気がした。


 と、俺がこんな年寄りくさい事を考えているのもお構いなく、ミザネアとツァミとあちこちの店を巡り、大道芸を見て、あっという間に時間が過ぎていった。


 ◇◇


 陽が傾き出したが、まだまだ町の活気は収まらない……どころか前夜祭という事もあって、昼間よりも人の数が増えているような気がする。

 大通りに立ち並ぶ露店にはまだまだ多くの旅行者達が人だかりを作っていた。

 俺とミザネアとツァミはサフィアに教えてもらった店へと向かっていた。


「さ! ラドさん! もうすぐよ」

「おじたん、早く」

「はいはい……」


 二人に色々と連れ回されて、おじさんはもうクタクタです……。正直、食事会がなければもう宿屋に戻って、ゆっくりしたい所だが……。

 

 二人に連れられて、サフィアの商会が主催する食事会の会場となっているレストランに到着する。店の前にはサフィアの弟、ナディライが立っているのが見えた。

 俺達に気付いたナディライが手を振る。


「こちらです! ラドウィンさん!」


 どうやら商会の従業員以外にも食事会に招待したらしく、案内役としてナディライが店の前にいるみたいだ。

 ナディライの背後にあるレストランは真新しい店構えに豪華な装飾。一目見て、お高いレストランだと分かる。

 こんな豪華な店を貸し切りに出来るなんて、本っ当にどんだけ金持ちなんだよ!

 そんなおじさんの心の中の突っ込みは露知らず、ナディライが爽やかに、速やかに俺達を店内に案内してくれる。


 店内に入り、玄関と同じように豪華に装飾された店内を見ながらミザネアが、小声で俺に話しかけてくる。


「すごいお店だね、ラドさん」

「ああ。この店貸し切るって、いくらぐらいするんだろうな?」

「……下世話だよ? ラドさん」


 だって気になるじゃん。ミザネアは気にならないの?

 そんなこそこそと話す俺達を連れてナディライが席へと案内してくれる。俺とミザネア、ツァミは同じ円形テーブルの席だった。 


「すぐに始まりますので、しばらくお待ち下さい」


 同じテーブルに座る人達を見ると、護衛をしていた馬車に乗っていた御者や商会の従業員の人達だった。他のテーブルは知らない人ばかりだからサフィアが配慮してくれたのかな?

 あと俺達のテーブルで空いている席は俺の隣の一席だけ。

 だとしたら来るのは……


「あ、ハルバリ! こっち!」

「ハルちゃん!」


 ミザネアとツァミに呼ばれたハルバリが最後の一席に座った。

 そして俺の顔を見て一言、


「おっちゃん、なんかもう疲れてへんか?」

「……まあね」


 さすがクリスタルランク……一瞬で俺の疲労を見抜いたか。


 他のテーブルも埋まってきて、主催者のサフィアが皆の前に姿を現した。

お読みいただき、ありがとうございます!


これからもよろしくお願いします!

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